洋書を求めて、茶屋町散策。大阪市の旅

先週末、大阪は梅田の街を散策してきました。

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大阪駅から見えているのになかなかたどり着けない…ことで著名なヨドバシウメダ。

…の裏手です。

大きい建物なんですな。

私が今までこの中に入ったのは二回だけです。

そのうち一回は、日雇いアルバイトの仕事だったんですね。

商業施設に、利用客とは違った立場で入るのは、結構新鮮な体験でした。

 

そんな思い出にもふけりながら、歩いて参ります。

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高架沿いにしばらく、北に向かいます。

阪急梅田駅のすぐ北側、茶屋町には「MARUZEN&ジュンク堂」という大書店がありましてね。

そこは洋書コーナーも充実しているので、私は界隈に立ち寄る機会にはその洋書コーナーをのぞくようにしているんです。

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梅田芸術劇場の界隈です。

ヴァレンタインデー向けか、大阪市内ではイルミネーションを施された街路樹が目立ちます。

いい雰囲気であります。

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梅田芸術劇場の道路向かいには、関西のテレビ局、MBSの本社がありますぞ。

私テレビあんまり見ませんけれど、「ちちんぷいぷい」が好きです。

安心して見ていられる番組なんですね。

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梅田ロフトのお隣に、MARUZEN&ジュンク堂ビルの威容が見えて参りましたぞ。

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コンクリート造りの、近代的なビルなのです。

七階建ての建物で、内部の雰囲気も素敵です。

読書好きの人なら、ついつい長期滞在してしまうこと間違いなしです。

ちなみに私、今回はこの本を買いました。 

The Snowball: Warren Buffett and the Business of Life

The Snowball: Warren Buffett and the Business of Life

 

多少なりとも蓄財に関心のある方なら、ご存知ではないでしょうか。

長期投資家のお手本であり億万長者、Warren Buffet。

そんな彼についての伝記本であります、"The Snowball"です。

私も蓄財に関心があるので、買ってしまいました。

読み終わったらまた読書日記を書かせていただきます。

大部なので、読み終わるまでかなり時間がかかりそうですがね。 

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日常から離れ、異国の空気が充満する洋書コーナーで目当ての書籍を物色する。

至福のひとときです。

時々来たくなってしまいますね。

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近所にほっかほっか亭でおなじみ、ハークスレイの研修センターが見えました。

テレビ局に劇場、大書店、研修センターといろいろある界隈ですな。

 

夕食を済ませてから帰りますよ。

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ラーメンを食べて帰る気満々だったのに、ぼんやりしていたらいつの間にか吉野家に吸い込まれていました。

豚丼大盛りと味噌汁、ごぼうサラダのセットです。

豚丼は牛丼に比べると脂分が少なくさっぱりしていますが、これはこれで美味しいんですよね。

JR大阪駅前の店舗なのですが、店内は外国人観光客の方たちでいっぱいでした。

やはり土地柄ですかねえ。

国際的な雰囲気の中で食べる豚丼もなかなかのものでした。

 

ラーメン好きな方のために、先々週に行った近くのラーメン店の画像も貼っておきますね。

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阪急梅田駅の改札を出てすぐのところにあるラーメン店、「博多ラーメンげんこつ」です。

私、学生時代から、梅田で食事場所に困るとついついここに来てしまうんですね。

好きなんです。

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博多ラーメン。

600円前後だったと思います。

大阪人向けに口当たりを整えられた九州ラーメン、という感じでしょうか。

食べやすくて、美味しいんです。

柔らかとろとろのチャーシューがまた絶品です。

思い出すと食べたくなる味なんですね。

次に来たときにはまたここのラーメン食うぞ、と今から楽しみにしています。

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『社会実験進行中』

大通りの路面にひざまずいて、道行く人々に語りかける男性がいる。

「助けてください、もう二、三日の間、酒しか飲んでいないんです」

非常に大きな声だ。

通り過ぎる人たちは、気の毒そうな顔で、ひざまずいた人を見ていく。

「助けてください」

他の人と同じように通り過ぎようとした私と、彼の視線が合った。

路上にひざまずいて、私の顔を見上げてくる。

「助けてください」

非常に大きな声だ。

他の通行人たちは、ひざまずく人のみならず私の方をも見ている。

「助けてください、もう二、三日の間、酒しか飲んでいないんです」

ひざまずくその人は、大声で訴えた。

「あ、そうなんですか」

私は気圧されて、立ち止まってしまった。

それとなく、相手の風体を見た。

前髪が乱れ、頬には何か黒い汚れがこびりついている。

唇の端が、ねじれて上向いている。

怪我でもしたのだろうか。

そしてところどころがくたびれて汚れた、スーツの上下だ。

アイロンをかけたのは、おそらくもう随分前なのだろう。

「本当なんです、先月仕事をクビにされて、もう酒しか飲めないんです」

「あ、そうですか」

私は相手の大声に気圧される。

なるほど、このご時勢でクビにされた人か、と思った。

珍しい話ではない。

昨今の社会情勢を受けて、彼のような職にあぶれた人がその辺にあふれている。

そうなれば酒も飲みたくなるだろうが、酒しか飲めなければ楽しくない。

酒だけでなく、肴も大事だ。

私なんか肴が調達できないばかりに、もう数ヶ月、酒そのものを口にしていない。

肴無しで酒を飲むなど、無理だ。

しかしこの目の前の人は、肴をないがしろにしてでも飲みたかったのであろう。

そう同情をしかけたところで、彼は目の色を変えた。

「でも私、もう酒にも飽きました」

ひざまずく人は訴えた。

私はその勢いに押されて後ずさった。

「安定した生活が欲しい!」

「あっ」

大声でまともなことを言われたので、思わずうなずいてしまった。

「安定した生活が欲しい!」

「はい」

気持ちがわかる。

「そうですね」

「安定した生活。それに先立つ仕事が欲しいのです」

「あっ、そうですね」

相手の気持ちがわかるので、私は小刻みにうなずいている。

かくいうこの私も、もう数ヶ月、仕事らしい仕事にありついていない。

酒も肴も飲めない理由のひとつが、これだ。

先立つ仕事は、必要だ。

酒も肴も、仕事があれば手に入る。

「先立つ仕事、欲しいですよね」

私は相手に相槌を打つ。

「そうです。仕事を世話してください」

相手は私の目を見据えたまま、続けた。

「えっ」

「仕事を世話してください」

相手の表情は、悪びれないものだった。

「ええと…」

私は、たじろぐ。

もう数ヶ月、仕事にありついていない。

酒も肴も手に入らず、貯金を切り崩して生活している。

仕事を世話して欲しいのは、私も同じだ。

他人に斡旋する仕事など、手元にあるはずがない。

「仕事を世話してください」

相手は繰り返した。

「すみません」

私は口の中で小さく言った。

「実は、私も、仕事には困っていて…」

「はっ?」

相手は大きな声で聞き返した。

私たちの傍らを横切る人たちが、興味本位の視線をこちらに向けている。

顔から火が出そうだ。

「ですから、私も仕事には困っていて…」

「はっ?」

大きな声。

こちらの声が聞こえないのだろうか。

「私も仕事にあぶれているんです。あなたのお世話はできません」

これ以上聞かれるのが嫌で、私は大声で言い返した。

恥ずかしいが、仕方がない。

ひざまずいた男性は、目を見開いてこちらを見ている。

ようやく、聞こえたらしい。

「なんだ、そうなんだ。それを先に言ってよ」

「はあ…」

相手は、鼻息を吹き出した。

「おたく、仕事もしてないくせに俺の目の前を肩で風切って行ったり来たり、いいご身分だね」

軽蔑しきった声が下から向かってくる。

なんだこの人は、と私もさすがにむっとした。

人の通り道の脇にひざまずいて声をかけてきたのは、この人の方なのに。

むっとしたまま、私は形ばかりの会釈を残して、その場を後にした。

 

いつものように、私は職業安定所に来ている。

施設内の、無料のコーヒーが飲める喫茶コーナーで暖を取っていると、声をかけられた。

「おい、モッさん」

体格のいい、私よりひとまわり年上の男性だった。

顔見知りである。

仕事仲間の、ゴッさんだ。

彼の口にしたモッさんというのは、仲間内での私の通称である。

「あっゴッさん、おはようございます」

ゴッさんは面倒見のいい男性で、私が仕事選びに困っているときに、仕事探しのコツを教えてくれたこともある人だ。

時には、仕事を世話してくれることもある。

この人がいなければコミュニティが機能しない、というタイプの人柄。

今の時代には稀有な人徳を持っている。

先日会ったあの路上の男性も、私でなくゴッさんに出会えていればよかったのだが。

「モッさんおめえ、ネットのゴシップは好きか?」

「えっ、ネットのゴシップ?」

「おう」

急に切り出されて、私は戸惑った。

「いや、そういうのは詳しくはないんですが…」

「おめえ、こういう記事が出てるんだぞ」

ゴッさんはポケットから携帯情報端末を取り出して、その画面を私に見せる。

インターネットの、何かの記事のようだった。

「これは…」

タイトルが「失踪中、かつ社会実験進行中」とある。

「何ですか、これ…」

「ちょっと読んでみろよ」

端末をゴッさんから受け取り、私は文面を拡大して読んでみた。

そのウェブ記事の書き手は、「社会派ブロガー」を自称する、この土地在住の男性だった。

彼いわく、先日、本業を退職して時間ができた。

時間があり余っている。

その機に、かねてから念願だった社会実験を実行することにしたのだという。

「無職で酒飲みの役立たずを社会はどう扱うか?」。

その事実をあぶり出すために、彼は日がな一日路上にひざまずいて、道行く人に仕事を乞うふりをすることにしたのだそうだ。

あれ、と私は思った。

路上にひざまずいて、通行人に語りかける人物。

先日、私もそんな人に会った。

「ゴッさん、私この人…」

「いや、わかってるからもう少し先まで読んでみなよ」

ゴッさんにうながされて、私は続きを読んだ。

文面には、路上にひざまずいたブロガー男性の体験がつづられている。

 

誰しもうす汚れた私なんかを相手にしないかと思えば、案に相違してこちらの身の上を聞き込もうとするおせっかいな連中も多い。

面白かったのは、通りがかった無職男性。

こちらの身の上に同情するかのような態度で言葉を交わして。

優越感を刺激されたか。

しかしこちらの問いかけにも終始おどおどして、要を得ない回答。

社会経験に欠けるたたずまい、というのを実地に目にした。

ああいう頭の弱そうな連中が仕事もせずに昼間から通りをうろうろ。

社会の害悪でしかない。

 

「何なんですか、これは」

私は顔に血が昇るのを実感した。

「まあまあ」

ゴッさんは私から情報携帯端末を取り戻しながら、笑ってなだめにかかる。

「やっぱりおめえさんだったか、記事の無職男性」

「失礼でしょ」

頭に血が昇り、コーヒーカップを持っていない方の手で、私はゴッさんの襟首をつかみにかかる。

「ふざけやがって、インチキ社会派ブロガー野郎」

「落ち着け、コーヒー飲め」

ゴッさんに片腕をつかみ返されて、コーヒーを飲むようにうながされた。

ゴッさんは握力の数値が100を超える男なので、そうされてはこちらも抗い難い。

空いている片手でコーヒーを口に運ぶ。

砂糖とミルクが混ぜてあり、私の好みの味。

ひと息つけた。

ゴッさんは、私の片腕を放した。

「ネットゴシップって、こんなの迷惑じゃないですか、他人のこと勝手に悪し様に書きなぐって」

改めてゴッさんに訴えた。

「まあまあ…」

なだめるゴッさん。

その表情は、落ち着いている。

「失礼ですよ」

「落ち着け」

「落ち着けません」

「いいか、モッさん。世の中にはな、他人を踏み台にしなきゃ自分を守れない奴もいるんだよ」

諭すような声色だ。

「はあ…」

私は首をかしげた。

そんな決め台詞を吐かれても、私の生の感情は納得しない。

「でも、踏み台にされた人間はどうなるんです…」

コーヒーを全部飲み干して、私は踏み込んだ。

うなずくゴッさん。

「人を踏んで行った奴は、大抵その先で転んでるよ。俺たちはそうならんように気をつけて、今日も生きるんだ」

握力は強い男だが、こういう決め台詞ばかり吐かれては、私も苦笑するほかない。

だがともかくも、私の心は落ち着いた。

「それはそうとゴッさん、仕事ありませんか」

「今日の午後から、一件あるぜ。人を集めろと言われてる。きつい仕事だがおめえさん、来るか」

「やらせてください」

コーヒーのおかわりをいただいて、私とゴッさんは現場に向かった。

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単語カード、まとめ買い。英語以外にも使えます

今まではずっとバラ売りのものを買って使ってきましたが、まとめ買いで感無量です。

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コクヨのCampusの単語カード、別名フラッシュカード。

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Amazonで割引きされていたので、誘惑に耐え切れず購入してしまいました。

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外国語の単語を覚える際に便利な単語カードです。

英語なり他の外国語なり、これを使えば単語暗記の反復学習に便利だと思うのですね。

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85枚で1セットの単語カードが、30個入っています。

単語カード1枚に1単語書くとして、85語単位で反復学習ができるわけですね。

合計で2550単語分書けることになります。

2550単語の暗記、多いと見るか少ないと見るか。

覚える量としては、結構な数ですね。

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私、多読多聴を外国語学習の基本にしながら、ボキャビルで習得語彙数を補強したいと思っているんですね。

日常的に外国語に触れながら、どうしても覚えられない単語については意識的に暗記学習をする。

メモ帳等に気になった単語をメモしていくのと併行して、単語カードに単語と対訳の意味を書く。

そういうやり方がシンプルで、効率もいいと思います。

携帯型端末で単語学習アプリもいろいろ出ているみたいですが、私は単語カードを手に持って、一枚一枚繰る感覚が好きなんですね。

やめられません。

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福島駅から河川敷へ。大阪市の旅

所用があって、そのついでにまた大阪市内を歩いてきました。

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JR大阪環状線の福島駅にやって来ましたよ。

福島駅は大阪駅のお隣で、この福島界隈はオフィスビルと飲食店が多いです。

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駅の近くにある商店街には、占いのお店が集まっていることでも有名です。

売れても占い、福島聖天通商店街。

環状線の高架を挟んだ向こう側にある了徳院というお寺が、歓喜天(聖天さん)を祀っていることにちなんだ名前のようですね。

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売れても占い商店街には、飲食店が目立ちます。

夜間営業の居酒屋店などが主なのか、私が来た日中には閉まっているお店が多かったです。

占いのお店は、商店街の入口辺りでは見かけませんでした。

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福島を南北に通るメインストリート、なにわ筋沿いには、関西将棋会館もあります。

中にはプロ棋士の指導を受けられる将棋教室とか、将棋道場もあって、対戦もできるらしいですよ。

私は将棋が弱くて苦手なのであまり入る気になれませんが、好きな人なら楽しめると思います。

 

界隈を北に向けて歩きます。

北にある、淀川の河川敷を見てみたいな、と思ったのですね。

なにわ筋の西を通っている、あみだ池筋を抜けて行きますよ。

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これお寺さんの建物らしいんですが、最初見たときマンションだと思いました。

本門佛立宗という、日蓮上人の流れを汲む宗派だそうです。

この大きな建物の中に本堂、講堂など各種の施設が入っているんだとか。

都会だと、お寺さんもこう現代的になるんですね。

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八阪神社もありました。

境内に社殿の復興記念碑がありまして。

その碑文によると、この神社の辺りは「王仁(わに)博士」ゆかりの土地なんだそうです。

王仁は古代、朝鮮半島にあった百済国から日本までやって来て、漢字等を伝えた人だという伝承があります。

もともと、その王仁博士を祀っていた祠がここにあったそうで。

ところがその祠が天変地異に遭って、土中に埋もれてしまいました。

数百年後に土地の人が祠の跡を発見して、改めて素戔男尊を合わせてお祀りするようになったのだそうです。

それが八阪神社になった由来なのですね。

江戸時代に社殿が復興されましたが戦災で失われたので、戦後新たに有志の力で再建されたということです。

街中の小さな神社でしたが、いろいろと来歴があるのですね。

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境内には猫ちゃんの姿がちらほら。

 

お参りの後、再び歩きを再開します。

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梅田スカイビルの姿が見えます。

大都会梅田の西にあるこのあみだ池筋沿いは、工場に個人商店などが多くて、若干庶民的な町の雰囲気ですね。

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本格的に工場の多いエリアにやってきました。

ここまで来ると、淀川の河川敷まですぐです。

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工場のレンガ壁に接する公園、なかなかいい雰囲気。

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河川敷に出る鉄橋を発見しました。

渡りましょう。

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静かに渡りましょう。

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風で揺れます。

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土手の向こうが河川敷。

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風景が開けました。

こんな感じなんですね。

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都会と工場街とを抜けた先にこういう広々とした場所があって、何か緊張がほぐれました。

しばらく立ち尽くして、広さを堪能します。

河川敷の公園、いいですね。

 

歩き回っておなかが空いたので、帰る道がてらお昼をとるお店を探すことにします。

と言っても、福島界隈に目星をつけているお店がありましてね。

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心斎橋に本店のあるラーメンチェーン、「ラーメンまこと屋」の福島店です。

お隣には「福島上等カレー」の本店も見えますね。

以前にこの福島店で何度かラーメンを食べていたのですが、いつの間にか道路向かいの場所に移転して新しくなってました。

ここのラーメン、結構好きなのです。

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「とろ~り半熟煮玉子鶏醤ラーメン」を注文しました。

750円でした。

ネギ、白菜等の野菜がたっぷり入った、鶏ガラスープの醤油ラーメンです。

煮玉子とろとろ、チャーシューもとろとろ。

スープには鶏のそぼろ肉も入っています。

麺は細麺で、ゆで加減も選べます。

美味しくいただきました。

今回は鶏ガラの鶏醤ラーメンにしましたが、ラーメンまこと屋では牛骨スープの牛醤ラーメンも美味しいです。

大阪府内のあちこちに支店があるので、大阪にお越しの際に機会があればぜひ入ってみてください。

 

帰り際の一枚。

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JR福島駅ホームからの風景です。

飲食店の多い福島界隈、食べ歩きが楽しそうです。

時々遊びに来たいものですね。

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『蓄財、それは善行から』

折々にテレビ番組を見ると、新しい知見が得られるのである。

私の場合、お金が欲しい。

テレビ番組で、お金儲けについて知りたいのだ。

でも私の頭では、お金を得るための難しい話はわからない。

それなので真面目な経済番組ではなく、もう少し俗なお金儲けの番組を好む。

具体的に番組名を挙げれば、『突撃、隣のお金持ち』。

こういう番組がある。

レポーターの男性タレントが資産家の家に赴き、彼らの蓄財術についてインタビューを通して聞き出すという番組である。

私のお気に入りである。

今夜も自室の畳の上に雑魚寝をしながらテレビを見上げ、録画しておいた同番組を見ている。

今回登場したのは、某有名高級住宅地に住む資産家の男性である。

「立派なお住まいですねえ~」

邸宅の居間に通されたレポーターの男性タレントが、いやらしい愛想笑いをする。

資産家たちに対する彼の露骨な追従ぶりと、それとは裏腹に時折見せる冷淡な態度も、この番組の魅力のひとつだ。

番組の視聴者は、わかっている。

この男性タレントは、資産家連中の隙につけ込んで、うまく彼らから蓄財術を聞きだすためにそうしているのだ。

「ご主人、ここまで稼ぐには悪いことのひとつやふたつ、やってるんでしょ?」

歪んだつくり笑いと共に、指で円を作って「ゼニ」のゼスチャー。

この品のないレポーターがこれで、テレビの前の視聴者たちから絶大な支持を受けている。

皆の味方なのだ。

蓄財術を聞き出してくれるのだ。

今回の資産家男性は、追及に笑顔を向けて返す。

「いやあ、悪いことは一切やってません」

「ほんとですかあ~?資産家の皆さんは嘘がお上手な方ばかりで」

「いや、私に限っては本当に違います。いいことしかやってません」

「うまいことおっしゃる」

「いや、本当に。私は善行だけ積んでお金を貯めたのです」

「善行って、具体的にどういうことですかあ~?」

と変わらぬ調子で言いながら、画面に映るレポーターの目付きが変わっている。

鋭くなった。

「だってその、善行だけで高級住宅地に家を建てるなんて、普通に考えて無理ですよね?」

資産家男性は首を振る。

「逆です。まずこの高級住宅地に家を借りたので、善行が積めるようになったのです」

「はあはあ」

「お金が貯まった後に、土地を買って、家を建て直しました」

「なるほどなるほど」

うなずきながら、レポーターは露骨なまでに胡散臭そうな目を資産家に向ける。

そんな目で見られて、資産家は顔を赤くした。

「本当なんです。説明させてください」

「どういう善行なんですか?」

「私は、パンの耳から始めました」

「えええっ、パンの耳?」

レポーターは大げさに驚いたような、馬鹿にしたような声をあげる。

彼の反応に苛立たない資産家はいない。

「パンの耳が善行?」

「いや、だからですね」

資産家は前のめりになる。

「ここに昔、古い小さな家が建ってましてね。昔自殺者があった家だとか、いわゆる事故物件で」

「ええっ、まさかこのお宅がそうなんですか?」

「ええ、いやですから、その建て直す前の話ですが」

レポーターの大げさな身振りを無視しながら男性は続ける。

「そういう物件だったので、周囲の環境の良さとは裏腹に、安い家賃で借りられたのです」

「はあはあ」

「あばら屋でしたし、亡くなった方の霊も出るって噂でした。ただ私は普段から自分の行いには気をつけていますし、祟られるいわれなどありませんから。むしろここに善良な私が住むことで、亡くなった方の霊を慰めることができればと…」

「パンの耳の話はどうなったんですか?」

「だから、それをこれから話そうとしてたんですよ」

資産家は、声を荒げた。

「いいですか、この近所には、パン屋さんが何件もあるんです。この界隈に住んでる人たちはお金持ちで、洋食かぶれの方が多い土地柄ですから、皆さん決まって朝から食パンを召し上がるわけです」

「はあはあ」

「需要があるものだからパン屋さんたちも食パンをたくさん焼くんですね。そしたらたくさん売れる。でも、食パンをつくる過程で切り落としたパンの耳が大量に余るんですよ」

「はあはあ」

「そういうパンの耳の処理にパン屋さんでは困るので、店頭に置いて無料で配るんです。でもこの界隈にいるのはお金持ちばかりだから、そんなパンの耳なんかには目もくれないわけですよ」

「はあはあ」

レポーターは資産家を見据えがら、素っ気無い相槌を打ち続けた。

「ですからね、パン屋さんたちはもったいないと思いながらも、引き受け手のないパンの耳を処分していた。それで私は、そんなパン屋さんたちからパンの耳を一手に集めることにしたんです」

「なんのために?」

「人助けですよ。善行ですよ」

真っ赤な顔で、資産家男性は言い返した。

レポーターは、馬鹿にした顔で相手を見ている。

しばしの間。

「…人助けでパンの耳を集められたんですか。パン屋さんたちが困ってたから?」

「そうです、そうです」

「パンの耳を食べて、食費を節約ですな」

「いや、そういうことじゃないんですよ。私は人助けと思ってパンの耳を集めて」

「まあそれはそういうことにしておきまして、で、どうやって蓄財されたんですか?」

レポーターは付き合わない。

資産家は、空気を吸った。

「それは、パンの耳を集めていると不思議と食べ物に困りませんし、他の善行からの御利益もありまして」

「他の善行?どういうことですか?」

「実は以前からこの界隈、無認可の廃品回収業者が暗躍してましてね」

「はあはあ、暗躍ね」

レポーターは話を合わせた。

「廃品の収集日にですね。区から委託された正式な業者が収集に来ますよね。でもその直前に、無認可の業者が軽トラックに乗って来て金目の廃品をさらっていくんですよ。この辺り、お金持ちの方が多いですから」

「ああなるほど」

「廃品であっても、お金になりそうなものが多いわけでしてね。で、そういう無認可業者が引取場所を荒らすやり方が酷くて。あと、ああいう連中は廃品を持っていった後にどういう扱いするんだか、わかったもんじゃないですから」

「まあ、そうですわね」

「廃品から個人情報を探られるおそれもあるし、その廃品をどこか郊外の山林にでも不法投棄されたりするなんてこともあるから」

「そうですわね」

「問題になってたわけなんです。この界隈の皆さん、困られてまして。そこで私が、考えたんですよ」

資産家は、心持ち得意げな表情を見せた。

「そんな得体の知れない無認可業者に比べたら、ご近所の私の方が信用があるでしょう、と」

「どういうことですかね?」

レポーターは首をひねった。

そうしながら油断なく、話し手の目を見ている。

「これも善行ですよ。廃品の収集日の朝早くに、引取り場所に行きましてね。ずっと見張ってて、無認可の業者が廃品の横取りをしにくいように。相手が実力行使に出る場合、追っ払ったりもするんです」

「なるほど」

「そうするとお金持ちの方の中には、あなたならご近所で素性が明らかだから、廃品で欲しいものがあれば持ってってください、と。そう言ってくれる人も多いんですよ」

「それはつまり、いわゆる金目のものを無認可業者より先にいただく、ということですね?」

レポーターは率直に言った。

「そういうことじゃないんですよ、あくまでこちらの好意で廃品を引取らせてもらうだけなんです」

「はあはあ、まさに善行ですよねえ」

相槌を打つレポーターの口調には、皮肉めいた響きがある。

「あんたね、ずっと我慢してたけど、いったい何なんですかその態度は」

急に激昂する資産家男性。

彼も我慢していたのだ。

「なるほど、なるほど、お話ありがとうございました」

レポーターの男性タレントは相手に取り合わず、カメラの方に意味ありげな視線を送った。

 

テレビ画面を見上げて、私は首をひねっている。

「高級住宅地で事故物件を探せっての…?」

番組内容に思いを巡らせる。

件の資産家男性がパンの耳によって食費を浮かせることができたのも、金目の廃品を集めることができたのも。

最初に高級住宅地で、事故物件を見つけることができたからだ。

私は、とても真似できそうにない、と思った。

高級住宅地に事故物件なんてそうそうないだろうし、だいたい、私は怖がりなのだ。

亡くなった人の霊が怖いので、たとえ事故物件を見つけたとしても住めない。

なら高級住宅地をあきらめて、今いる土地であの資産家男性と同じことを試してみようか?

しかしパン屋さんは近所には少ないし、廃品回収に出される品目だって、一般の住宅地ではありふれた廃品ばかりだ。

それらでお金を稼ぐのは難しいだろう。

今見たテレビ番組の内容を、どうにかして自分の蓄財に活かすことができないだろうか?

 

後日、私はファミリーレストランで食事をしている。

近くのテーブルに、一組のファミリーがいる。

ミモザちゃん、どうしてピザ食べないの?おなか空いてるでしょう?」

母親が、隣に座った小さい子供の食事具合を見て、声をあげている。

「だってピーマン入ってるじゃない。ピーマン嫌いよ。ピザにピーマンだなんて、聞いたことがない」

子供は甲高い声で訴えた。

「ここのピザにはピーマンが入ってんだよ、それが味のアクセントなんだよ」

父親が子供に諭すように言っている。

だが、子供は聞き分けが悪い。

「ピーマンの味がするピザなんて私は食べたくない、イタリア人だってこんなの食べないよ」

「イタリアにだってピーマンの入ったピザぐらいあるわよ…」

「そんなのは偽者よ、きっと本場のピザを知らないチュニジア人とかクロアチア人がつくってるのよ、この店のピザもチュニジア人かクロアチア人のシェフがつくってるんじゃないの?」

ミモザちゃん、やめなさい。厨房に聞こえたらどうするの」

駄々をこねる子に、母親は狼狽している。

背中にファミリーの会話を聞きながら、なるほど、と私は合点がいった。

あの子は、ピーマンが嫌い。

きっと私が声をかければ、あのピーマン入りのピザを私にくれるだろう。

つまり、善行というのは、今のピーマンのような立場の資源をうまく回収することなのだ。

パンの耳しかり、金目の廃品しかり。

ピーマンしかり。

いらないから持っていって欲しい、という相手から合意のもとに資源を集める。

そういう資源を集めて、お金に換える。

それはお金も貯まるはずだ。

 

私は自分の料理を食べながら、現実味を帯び始めた自分の蓄財について、思いを巡らせる。

ピーマン嫌いの人たちからピーマンを集めて、お金に換えよう。

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『活字中毒のひと』

私が活字中毒、と言うのは言い過ぎだ。

「いや、活字中毒ですよね?」

人の指摘は、厳しい。

「でも私程度で。活字中毒って、言ってしまっていいのかな」

目の前の相手が着ている派手なTシャツには、英文のコピーライティングが印刷されている。

私はその文面を離れたところから、人差し指でなぞるようにして読んでいる。

活字中毒ですよ。普通、人と話してる最中に、相手のTシャツの英文読んだりなんかしませんよ」

相手はすねたような声で言う。

話を聞いて欲しかったらしい。

でも、私は人の話を聞くより、文章を読む方が好き。

「僕の話、聞いてくださいよ」

「聞いてますよ」

と受け流しながら、私は相手のTシャツの英文を読む。

 

I am what I've eaten, I am what I've read, I am what I've sung.

 

そう書いてある。

私は私が食べてきたもの、読んできたもの、歌ってきたもの。

そんな内容だ。

ひねりがない、ありがち。

そう思った。

凡百のTシャツにある文句だ。

少し物足りない。

「満足できませんでした?」

相手は私の顔色をうかがいながら、尋ねた。

「ちょっと後ろ向いてくれませんか」

私は彼の問いに答えず、要求する。

「なんで?」

「いや、ちょっとだけですから、黙って後ろ向いてください」

私は発作的にむずむずしてきたので、性急に言った。

相手は、ため息をついた。

「どうせ背中の方にも何か書いてないか、見るつもりでしょう?」

「それだけわかってるなら早く後ろ向いてください」

私は、声を高める。

相手は仕方なくといった様子で、私に応じてこちらに背を向ける。

男性の背中に、私は視線を注いだ。

思ったとおり、彼の背面にも、英文のコピーライティングが印刷されてある。

 

...and I am who she've loved.

 

そして私は、彼女が愛していた者。

そんな意味。

ああ、オチまでありがちだった。

私は泣きたくなった。

陳腐な文句が胸と背中に書かれたTシャツを着て、この人は恥ずかしくないのだろうか。

私はため息をついた。

「どういう意味だったんですか?」

Tシャツの着用者は、私の反応を見て興味をそそられたらしい。

英文の意味を知らないみたいだ。

デザインに惹かれて、書かれた英文の意味もわからず着ていたんだろう。

これは、正直に教えてあげた方がいいのだろうか。

あのね、こういうTシャツを着てると、過去の恋愛に未練がましい人みたいですよ!

でもそう正直に教えた結果、「そんなネガティブな意味だったんですか、じゃあ脱ぎます!」と上半身を露出でもされたらこちらが困る。

私はもう、脚色してしまうことにする。

「これ、わりと扇情的な内容ですね…」

私は言葉を選びながら言った。

「はあ?せんじょうてき?」

男性は、大きな声をあげる。

店内の客たちが、私たちの方をいっせいに振り返った。

「しっ、大きな声を出さないで」

私は慌てる。

逆効果だった。

事を大げさにしたくなかったのに。

「せんじょうてき、ってどういう意味ですか?」

相手は無邪気な声でなおも言った。

私は、困った。

「扇情的というのは、つまり、sensationalな内容を含んでいるということです」

「ええと、そのsensationalっていうのもよくわからないんですが。意味は?」

相手は、興味をそそられたような顔で追及してくる。

やってしまった。

これだったら、相手にこの場でTシャツを脱がれていた方が、まだましだった。

私は困ってしまい、テーブルの上のグラスを手に取って、中のお酒を飲んだ。

お酒に強くない私でも飲める、アルコール度数の低いお酒だ。

「教えてください、sensationalって?」

テーブルの向かいから身を乗り出すようにして、男性は好奇心に満ちた声をぶつけてくる。

逃げなければ。

私はグラスを置き、代わりにテーブルの上からメニュー表を手に取った。

このお店の創業の経緯、提供する各料理、店の心得。

それらを私は黙読し始めた。

男性が執拗に呼びかけてくる声も、もう耳に入らない。

私は、活字中毒者だから。

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もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ

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『食事作法、美意識の範囲』

食事は、いかに音をたてずに執り行うか。

それが肝要だと私は思っているのだ。

できる限り、静かにものを食べる。

誰しも、食事はそうやってとるべきだ。

そう思っているので、昼時に入った行きつけの食堂で、私は大きな殺意を覚えている。

カウンター席の隣に座った客の食べっぷりが、実に騒々しく、不愉快なのである。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

隣に座った男性が、そんな咀嚼音をたてて騒々しく物を食べている。

かの人物が食事する際の咀嚼音をあえて字で表現すれば、上記のようになる。

見るからに不愉快な字面である。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

私は、舌打ちしたい気分だった。

私が今食べているスープカレーは各種野菜のだしが利いて、とても美味しかった。

だが隣でうるさく咀嚼音をたてられては、せっかくの味もわからなくなる。

心がかき乱されるからだ。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

隣の男性も、スープカレーを食べている。

しかし、なんと気に障る咀嚼音であること。

スープカレーは当然、汁気が多い料理なので、スープを飲む際には気をつけないと音をたててしまう。

食事で音をたてるのが嫌な私は、たしなみよく静かにスプーンでスープをすくい、口に運ぶ。

しかし隣の男性は、スプーンを豪快に振るって、皿からスープを口内にかき込んでいるのだ。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

いい加減にしろよ、と私は言いたい。

隣でそんな音をたてられるだけで、食欲が減退してしまう。

スープを音をたてずに飲めない人間には、美味しいスープカレーを口にする資格などない!

食事にストイックな私は、そこまで考えているのだ。

隣の男性は、スープカレーを食べる資格なんぞない人間なのだ。

不愉快だから、さっさと食べ終わって出て行ってくれないだろうか。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

私は、ため息をつきたい気持ちを押し殺して、音をたてずにスープを飲み続ける。

 

「マスター、おあいそ」

隣の男性客が立ち上がりながら、不機嫌そうに言うのが聞こえた。

私はそれとなく、彼の顔を見上げる。

しかめ面をしながら、男性はカウンターの向こうにいるマスターに、食べたものの代金を支払った。

お釣りを受け取った後、店内をずかずかと乱暴に歩いて進んで行く。

体当たりするような勢いで扉を開けて、外に出て行った。

どこまでも騒々しい客だ。

まったく何様なのだろう。

しかしこれで私はようやく、心置きなくため息をつくことができた。

「あのお客、他の席に座らせた方がよかったかな」

マスターは苦笑いしながら私に語りかけた。

私のため息を見ての言葉なのだ。

気を遣ってくれているらしい。

私は、苦笑いを返す。

「まあ、勘弁してあげてよ」

私の顔を見て、マスターはそう言った。

「勘弁ですか。まあ…」

私は言葉をにごす。

終始、咀嚼音をたてながらの食事ぶりと、出て行く際にも騒々しかった男性客。

彼のことを思い出すと、どこをとっても不愉快だった。

勘弁するのは難しい。

「あの人は、ああいう人でさ」

マスターは、苦笑しながら続けた。

「総入れ歯なのよ」

「はっ?」

マスターの言葉に、私は思わず目を見張ってしまった。

「総入れ歯?」

「うん」

と、マスター。

さっきの男性客のことだろうか。

総入れ歯にするような、そんな年配には見えなかったが。

「事情は知らないけど、若い頃に歯が全部なくなっちゃってさ。今、総入れ歯にしてるんだって」

「はあ…」

私は、生返事を返すぐらいしかできない。

「総入れ歯だと、スープをうまく吸うのも難しいんだってよ。どうしても、すする感じになっちゃうんだね」

「そうだったんですか…」

私は、頭の中が真っ白になった。

「うん、そうらしいの。彼、うちのスープカレーを気にいってくれてるみたいだから、ちょっと気の毒なんだよねえ」

マスターは残念そうに言った。

私は、かろうじてうなずく。

優しいマスターなのだ。

それとなく、私のことをたしなめているのかもしれない。

 

音をたてずにスープを吸うことができない人の隣で、ことさら静かに食事してみせた私だった。

そうしたくてもできない身の上の人にとっては、私の食事ぶりはあてつけのように感じられたとしても不思議ではない。

私が男性客の食事ぶりに殺意を覚えたのと同様に、彼の方でも私に殺意を覚えていたのかもしれない。

店を退出する男性の不機嫌な様は、その一端なのだろう。

「お客さんみんなに、楽しくごはんを食べてもらいたいんだけどね。簡単なようで、難しいよね」

気のいいマスターは、何気なく私に語る。

件の男性客とマスターの心情を思い、私は己を恥じていた。

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