黒門市場で手羽先唐揚げ、道頓堀で天丼、大正区でにんにくラーメン。大阪市の旅

週末、いいお天気でした。

となると、出かけずにはいられません。

そういうわけで、出かけて参りました。

 

南海電鉄とJR環状線が交差する、新今宮駅

大阪府南部からやってきて大阪市内を散策するには、交通の便利がいい場所です。

私の日帰り旅がいつもここからスタートするのは、そういう理由があるのですね。

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通天閣を横目に見ながら、堺筋日本橋方面に向けて、北へ歩きます。

今回の日帰り旅、天気がいいからって、特に目的もなく出てきてしまったのですね。

歩きながら目的地を考えよう、ぐらいの緩い歩き旅であります。

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日本橋に来ました。

東の秋葉原と同じく、電器店街として聞こえる街なんですね。

電化製品、パソコン関連機器、そしてテレビゲーム・アニメ関連の諸々がそろう、夢の街であります。

まあ、私はパソコンもアニメも詳しくないので、テレビゲーム関連のものを見て歩くぐらいですね。

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大通りから小さな通りに入りますと、昔ながらの工具店等が軒を連ねる界隈もあります。

隣接するパソコン、アニメ、テレビゲームを扱う界隈とは若干違った空気が流れていますね。

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そんな界隈にある大阪名物、五階ビル。

三階建てなのに五階とはこれいかに?と私も今まで思っていたのですが。

ウィキペディア等の記述によりますと、「五階」というのはこの地域一帯の通称であって、この建物を指すものではないようです。

「五階」エリアに建っている建物だから五階ビル、ということなんですね。

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五階ビルの近くには、主に呉服を扱うお店が集まる「日本橋商店会」があります。

 

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各店舗が密集しています。

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消防車が入れない通路の狭い場所だからか、消火器の備えも万全ですね。

…落書きされまくってますが。

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その日本橋商店会の一角に、全国の即席麺を扱うお店があったんですね。

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インスタントラーメン専門店、「やかん亭さくら」さんです。

大阪のローカル番組等でも時折紹介されていました。

しかし、お店、移転したのですね。

従来よりも南で今は営業されているみたいです。

日本各地のご当地即席麺が買えて、その場で調理してもらって食事もできるお店なんですね。

 

日本橋の電器店界隈をしばらく歩いていきます。

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路上で客引きをするメイドさんたちの数は減りましたが、それでもコスプレ衣装で呼び込みをする人たちがいて、独特の雰囲気がある通りです。

ラーメン店等、飲食店も結構多いです。

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高島屋の東別館ですな。

ここに来ると、鹿児島市内で見た百貨店、山形屋のある市街地界隈を思い出します。

旅の記憶は、折々にデジャヴ的感覚をともなって蘇って参ります。

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外国からの観光客でにぎわう黒門市場、今回もやって来ました。

ここに来るといろんな外国語が聞けますので、外国語好きの私にとっては結構嬉しい場所なんですね。

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この入口を入ってすぐのところに鶏肉専門の精肉店がありまして、鶏肉の唐揚げも売ってました。

買い食いする海外の観光客を真似するように、お腹の減っていた私も唐揚げを買い食いしてみることにします。

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鶏の手羽先の唐揚げです。

ひとつ税抜き40円、二つ注文してみたら外税込みで86円でした。

ぷりぷりのお肉がさくさくの衣で包まれ、美味しいです。

散策のお供にはちょうどいいおやつですな。

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今日も混み混み黒門市場

英語、中国語、韓国語にタイ語が飛び交う空間でありました。

シーフードを始め、食べ歩き向けの美味しそうな食べ物もいろいろお手頃価格で売られていますので、日本人観光客の方にもお勧めのスポットであります。

 

黒門市場を出た後も、日本橋周辺をしばらくうろうろします。

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関西ではローカルTVCM等を通しておなじみ、味園ビルであります。

各種飲食店等のテナントが入っています。

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テナントにはアイルランドの方が経営されているアイリッシュパブなんかもあって、私も一度だけ中に入ったことがあります。

味園ビルです。

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壁面から出ている触手みたいな装飾が、意味不明でした。

これらのふにゃふにゃにも、何らかの意味があるのでしょう。

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いつの間にか、一階に「ふくろうカフェ」が入っていました。

一時間、ワンドリンク付きで料金1500円からだそうです。

ふくろうと戯れたい方には、いいかもしれませんな。

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味園ビルの脇をすり抜けて、道頓堀にまで来ました。

この界隈も、相変わらずかなりの人であります。

立ち止まってぼやぼやしてはいられません。

しかし、時刻はお昼どき。

私のお腹も空きました。

道頓堀界隈はいつ来ても混んでいるので、私はこの辺りではあまり食事をしないのですが…。

どこか、空いているお店はないでしょうか?

ラーメンが食べたいですね。

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ラーメン食べる気満々だったのですが、こういうお店に目を引かれまして。

天丼の専門店、一味禅なのですがね。

なぜこのお店が気になったかと言いますと…。

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店頭に飾られていた、このポスター!

韓国のテレビ番組のものでした。

取材に来てるらしいですな。

サイン付きですね。

私、この人たちの顔と番組名に見覚えがあったんです。

実は私、以前にYouTubeでこの番組の動画を見ていたんです。

動画に出ているのはこの一味禅というお店の、日本橋の方にある支店ですな。

韓国にも전(ジョン)と言って野菜を揚げる天ぷらのような料理はあるのですが、日本のものとは若干趣きが違うのですね。

韓国の方々にとって、海産物を揚げた日本のさくさく天ぷらは、新鮮な経験になるようです。

ラーメン食べる気満々だった私も、道頓堀で韓国テレビ番組のポスターを目にしまして、見逃せない気持ちになってしまいました。

一味禅の中に、入っていきます。

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韓国だけでなく、大阪の各ローカル番組にも取り上げられていますよ。

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日本語のメニューに加えて、この韓国語のメニューも備わっています。

私はお値段も手頃な새우텐동(セウテンドン、海老天丼)を注文しました。

680円であります。

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天ぷらの油とだしから来る香りが、美味しそうです。

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お味噌汁がついて680円、いいですな。

ご飯に乗っている天ぷらのタネは海老、ちくわ、ししとう、エリンギ、紫蘇、とうもろこしでした。

長い間海老天ぷらを食べておらず、美味しくいただきました。

野菜の天ぷらも、どれも美味しいですね。

お店で天丼を食べることはこれまであまり無かったですが、さくさくして美味しくて、なかなかいいものですな。

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道を通る韓国人観光客らしき人たちがポスターを指差して反応していました。

わりとアピール度はあるのではないでしょうか。

これからも、大阪の天丼の美味しさを韓国他、内外の観光客の方々に伝えていって欲しいですな。

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お昼が済んだところで、歩きながらこれからの行き先を考えます。

しかし行き先は思いつきません。

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また御堂筋を歩いています。

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心斎橋にやってきました。

西から東に、長堀通りが通っています。

ここで思ったのですね。

このまま西に折れて、四ツ橋方面に向かってみようかと。

四ツ橋というのは、昔、川が埋め立てられる前、南北に四つの橋がかかっていた場所です。

今は交差点になっているのです。

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心斎橋から西に進み、四ツ橋の交差点まで来ました。

今は埋め立てられて面影もありませんが、かつてはここに、四本の橋が掛かっていたのですね。

四ツ橋の名の由来です。

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かつての四ツ橋を記念して、車道と車道の間の中洲に記念碑が立っています。

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この中洲の空間に、かつての四ツ橋を模した橋の欄干があるのですが…なぜか、そこにお布団が干されていました。

…いい天気でしたからねえ。

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かつての橋の名残りに、新しい生活の痕跡。

住人の姿こそ見えなかったものの、何かうなずけるものがありました。

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四ツ橋から、このまま西に向かって進んでいきましょう。

西方に、大阪市立中央図書館があるのです。

蔵書量が多く、洋書も豊富にある大きな図書館なので、のぞいて行こうと思いました。

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大阪市を西から東に走る長堀通り、かつてはここに長堀川が流れていたのです。

大きな運河で、大坂の物流を担っていたのですね。

今は埋め立てられていますが、運河の名残りはあります。

道路の中洲に、こうした公園が設けられていまして。

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江戸時代末期に富田屋橋のたもとにあった裕福な質店の子息、間長涯(はざまちょうがい)は麻田剛立から天文学を学び、実家の傍らの橋の上で天体観測を続けたのだそうです。

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天文学ってロマンがありますよね。

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これは富田屋橋のあった場所よりさらに西の、問屋橋の跡です。

これも橋の名残りですね。

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さらに西には、大阪木材市場発祥の地があります。

なんでも、この一帯含む長堀川沿いの広範囲は土佐藩蔵屋敷を持っていた界隈だそうです。

件の木材市場も当初、土佐(現在の高知県)から運ばれてきた木材を流通する場所でした。

それが次第に日本各地の木材を扱うようになって、規模が拡大したそうなんですね。

しばらく先には土佐藩と縁の深い「土佐稲荷神社」がありますので、お参りしてみましょう。

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白髪橋の交差点に、気になるものがあります。

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大阪のタクシー発祥地…らしい。

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大正6年創業の会社なんですって。

昔のタクシーって、お洒落ですね。

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さらに行くと、長堀通り沿いに渋いレトロ建築を見つけました。

「細野ビルヂング」といって、なんでも兵庫県島嶼部発祥の建築会社、細野組が建てたビルだそうです。

明治期に創業して規模を拡大し、各地に販路を広げたのですと。

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趣きがありますな。

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中洲公園を通ったりしながら。

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ようやく土佐稲荷神社にたどり着いたようです。

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広い敷地を誇る、土佐稲荷神社であります。

安土桃山時代大阪城築城のための石垣として運搬されていた石の中に、「畏れ多い」ものがあり、その石をご神体としてここに祀ったのが始まりなのだそうです。

後に土佐藩によって京都の伏見稲荷から稲荷大神が勧請され、主祭神となりました。

もともと、近隣の長堀川一帯の土地は広く土佐藩が所有して、蔵屋敷等を持っていたんですね。

また明治時代になって、土佐出身の実業家で三菱財閥創始者である岩崎弥太郎が神社周辺の土地を買い受け、邸宅を建てたのだそうです。

以来この土佐稲荷神社、三菱財閥との結びつきが強い場所であるようです。

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境内は広々としていまして、解放的です。

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「境内飲酒宴会禁止」。

これだけ開放感があると、桜の季節になって酒を持ち込む人なんかも出てくるんでしょうね。

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社紋というんでしょうか、三菱になってますな。

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境内を出ますが、隣接する集合住宅の敷地内に、大きな楠が生えています。

この木、岩崎弥太郎の邸宅があった頃からこの場所にあるんだそうです。

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ここに新しい集合住宅を建てる際も、歴史的経緯のある木なので、大阪市の保存樹として伐採を免れたのですね。

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境内に、岩崎弥太郎邸宅跡を示す碑もあります。

神社の周辺を囲む玉垣にも、寄贈者として三菱系企業の名がずらりと並んでいます。

この土地と土佐藩、そして三菱財閥との結びつきを感じさせる場所でありました。

 

土佐稲荷神社に隣接する大阪市立中央図書館に立ち寄り、しばらく書架を眺めて過ごしました。

これからさらに南下して、JR大正駅で電車に乗り、帰ろうと思います。

大阪市立中央図書館から地下鉄千日前線西長堀橋駅に隣接していて、すぐ電車に乗れるのですけれど、大正駅まで歩いてみたかったのですね。

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途中、南海電鉄の駅名の由来にもなっている汐見橋を渡ります。

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汐見橋の上から、西の方角に京セラドーム大阪の姿が見られました。

汐見橋を渡った後、さらに歩き、今度は大正橋を渡ります。

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と思ったら、大正橋のたもとにこんな場所が。

石碑があります。

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石碑には『大地震両川口津波記』とあります。

嘉永七年(1854年)に起こった安政南海地震津波による、被害を記すものでした。

地震の被害の後、さらに安治川、木津川の河口から津波が襲い、一帯の土地の人、また地震を避けて船で川の上に非難していた多くの人たちが犠牲になったのだそうです。

かつて大地震津波が自分に身近な場所にも大きな被害をもたらしていたことを知り、気持ちが沈みました。

安政南海地震が起こる100年ほど前の宝永年間にも、同じく大坂に大地震津波とが襲っているのだそうです。

こうして慰霊碑、石碑などが土地に残っていると、かつてそこで起こった出来事を現代の私たちも実感することができるのですね。

碑に向かって手を合わせました。

またいつ大阪に大地震が来るか、わかりません。

私もそれなりに備えをしておこう、と思いました。

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渡った先の西側から見た大正橋です。

ここからJR大正駅まではすぐです。

もうすぐ帰れそうなのですが、その前に。

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大正橋の西側のたもとにこのお店を見つけてしまったのです。

にんにくラーメン天洋です。

これまでお店の名前を聞いたことはあったのですが、入ったことはなかったのです。

私はにんにく系のラーメンが好きなので、天洋も気になるお店だったんですね。

お昼に天丼を食べたばかりでお腹はまだそれほど空いていませんが、この機会に入ってしまおうと思います。

 

基本のラーメンを注文しました。

注文の際、ニンニクを入れるかどうか店員さんに聞かれます。

ここは、入れてもらいましょう。

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ラーメン税込み、730円です。

チャーシューが見た目にもごつい。

ネギ、もやしもたっぷり。

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この大きなチャーシューが素晴らしいのです。

脂がとろける食感がたまりません。

スープはニンニクの風味が溶け込んだ豚骨ラーメン、わりと口当たりがすっきりして自然に飲めてしまう美味しさでした。

つるつるしたコシのある麺も個性が強いです。

美味しくいただきました。

スープ、チャーシュー、野菜、麺とどれも好みで、やみつきになりそうです。

天洋は大正駅からも近い同じくJR環状線九条駅野田駅近くにもそれぞれ支店があるみたいですよ。

各店、行ってみたいですね。

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帰り道、大正駅の至近に沖縄料理店の並ぶ通りを見つけました。

大正区は、沖縄から移住した人たちが多く住む地域です。

今回はにんにくラーメンだけいただいて帰りますが、次は沖縄料理も食べにまた大正に来よう、と思います。

さ迷った大阪市の旅でした。

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『瞬殺猿姫(42) 食いつめる猿姫たち』

織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)は、平気な顔で立っている。

猿姫は、おそるおそる彼の顔を見上げた。

「三郎殿」

「なんでござる」

三郎は何気なく振り返った。

彼に伝えるのが心苦しい。

猿姫は、唾液を飲み込む。

「実は…」

「なんでござる」

「あの…」

言葉に詰まる。

三郎は、首をかしげた。

「なんぞ支障でも?」

その表情は、猿姫を信頼しきっている。

それで、なおのこと、猿姫は苦しいのだ。

「実は…」

「ええ」

うなずく三郎。

猿姫は、勢いをつけて言葉を吐いた。

「路銀が、もう底を尽きそうだ」

「なんと」

三郎の表情が曇った。

当然であろう。

路銀が、もうない。

三郎はここのところ、手持ちの金銀を全て、猿姫の管理に任せていたのだ。

大名の子息である三郎である。

国を負われた身ではあっても、彼はそれなりの金子を懐にして旅に出ていた。

その金を、猿姫は預かった。

その預かった路銀の額の増減について、猿姫はいちいち三郎に知らせることはしていない。

しかし猿姫も、できる限りのことはやったのだ。

尾張で、織田弾正忠信勝(おだだんじょうのじょうのぶかつ)が差し向けた刺客を倒してから数日、この間に猿姫と三郎は北伊勢まで逃げてきた。

木曽川のほとりで捕まえた人質、蜂須賀阿波守(はちすかあわのかみ)も一行にいる。

その後、立ち寄った神戸城の城主、神戸下総守利盛(かんべしもうさのかみとしもり)も一行に加わった。

都合、四人での旅路である。

しばらく南に進んで来たが、路銀はかさむ。

これから南伊勢の北畠中納言具教(きたばたけちゅうなごんとももり)の居館を訪ねることになっている。

まだまだ、道筋は長い。

「困りましたな」

狼狽した気配で、三郎は泳ぎがちな視線をかろうじて猿姫に向けた。

猿姫は、片手で口元を押さえながら、三郎にうなずき返す。

路銀を預かっていたのは、猿姫だ。

その額の不足は、彼女の落ち度であると言えた。

世間慣れしていない三郎、神戸下総守、そして人質の蜂須賀阿波守と違い、猿姫にはそれなりの責任があったのだ。

安全な旅を続けるために、路銀の残りの額の多寡には気をつけていなければならなかった。

「できるだけ、余計な支出は控えてきたつもりなのだが…」

猿姫は、独り言のように苦しげな言葉をひねり吐いた。

彼女には、言い訳のつもりは、なかった。

ただ、それが正直な気持ちだった。

三郎は彼女の顔を見た。

苦悶にさいなまれる娘の顔。

「猿姫殿は、よく路銀の維持に努められました」

一も二もなく、三郎は猿姫をねぎらった。

三郎、神戸下総守の二人は貴人であるので、彼らの旅の途上では食事に宿泊費など、各種の費用は膨らみがちになる。

それを極力押さえてきたのが、猿姫の才覚であった。

それであってもなお、当初三郎が持ち出した金額が少なかった。

猿姫の責にするのは酷なのである。

「猿姫殿の骨折りは、拙者がよく知っております」

事情を踏まえて、三郎ははっきりした言葉で言った。

猿姫、息をついた。

安堵の息だ。

「三郎殿。ありがとう」

「こちらこそ」

安心した猿姫と、三郎は視線を交わし合った。

そのやりとりに、余人にはうかがい知れない意味合いが込められている。

二人の脇で、神戸下総守と蜂須賀阿波守とが横目で見ていた。

「おい、貴様ら」

阿波守が声を高めた。

「路銀の不足はどうするつもりだ」

現実に引き戻す言葉である。

彼の声に、みつめ合っていた三郎と猿姫は、眉間に皺を寄せながら振り返った。

「なんだ、不躾に」

猿姫は阿波守をにらんだ。

「路銀の不足については、貴殿らのお知恵も拝借したく存じます」

阿波守の視線に応えて、三郎はしっかりと言葉を返した。

「何と、我らの知恵を拝借するとな」

一笑に付す阿波守。

うなずく三郎。

しかし猿姫は、いっそう阿波守をにらむ。

「笑うな」

「笑わずにおられるか」

阿波守は、猿姫の言葉にも嘲笑で返す。

「路銀が、もう無いのだろう?道半ばにして。その額は努力次第で増えるものでもあるまい」

まっとうな意見であった。

三郎と猿姫はそれぞれ無意識に胸を押さえた。

路銀が無い。

どう言い繕っても、それは言い逃れようのない事実であった。

「知った風な口を叩いて…」

毒づく猿姫。

しかしその語尾は、力なく空気中に溶けていく。

阿波守は、猿姫を横目で見返した。

「何を言っても無駄だ。路銀がなければ、旅のできようはずがない」

猿姫は言い返せなかった。

「ここで終わりだ」

宣告する阿波守。

猿姫と三郎は、唇を噛んだ。

旅の終わり。

もう先には進めない。

白子の港に戻って、再び渡し舟を漕いで尾張に戻るでもするほかない。

木曽川の河口から白子まで一人船を漕いできた猿姫は、同じ思いをすることを思うと背筋に寒気が走るのを覚えた。

人並みはずれて体の強い猿姫とは言え、長い距離を渡し舟を漕いで航行するためには、かなりの消耗を強いられる。

出来ることなら、もう二度と同じ道筋は辿りたくなかった。

そして帰り着いたところで、その先の尾張は、三郎と猿姫にとっての宿敵、織田弾正忠信勝が支配する土地である。

猿姫は、うつむいた。

猿姫は、彼女自身、わずかな金子しか携帯していない、

もともと、金には縁が薄い。

脇に立って様子を見ている、神戸下総守の方を見た。

「下総守殿、いい案は、ないか?」

苦し紛れの問いかけである。

猿姫に見据えられて、神戸下総守は、視線を返した。

その視線が、わずかに揺らいだ。

口を開く下総守。

「ここは私が、何とかしよう」

猿姫と三郎とが、一番聞きたかった言葉だった。

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『千鳥足のブタ』

行くあてもない。

それで心細く路上を歩いていると、向こうから人が歩いてくる。

千鳥足というやつだ。

ふらふら、ふらふら。

そんな足取りで、向こうから人が歩いてくる。

しばらくの時をかけて、私とかの人との距離は縮まった。

中年の男性だった。

右手に日本酒の一升瓶をつかみ、飲み口を時折口にあてがい、瓶の底を持ち上げて中の酒を喉の奥に流し込む。

そうしながら、歩いてくるのである。

もう長らく酒にありついていない私は、心底うらやましかった。

男性とすれ違う。

私は横目で、男性の持った一升瓶に、物欲しそうな視線を送った。

酒の入った男性は、赤い顔で私の方を見た。

「なんだにいちゃん、しげしげ見てるな」

確かに、しげしげ見ていた。

私は。

彼の手にした一升瓶を。

「はい、すみません」

私は素直に謝っておく。

「しげしげ見るんじゃねえよ」

男性は私を一喝する。

「失礼だろ」

「すみません」

確かに、昼間から酒を飲みつつ歩いている人のことを、私はぶしつけにしげしげ見すぎた。

「しげしげ見てしまい、すみませんでした」

頭を下げながら、それでもなお、私の脳裏には男性の提げている一升瓶の姿がこびりついている。

「謝るぐらいなら、最初から人様の一升瓶をしげしげ見たりするんじゃねえ」

頭を下げる私をなおも怒鳴りつけて、男性は千鳥足でその場を去った。

 

一方的に怒鳴られて、私も気持ちが良くない。

むしゃくしゃしながら、それでも行くあてもなく、路上をさまよった。

「くそっ、少しばかりしげしげ見たぐらいで、あんなに怒鳴りつけやがって」

一升瓶を手にして千鳥足でやってきた男性の姿を思い浮かべながら、私は反感を覚えている。

あのようにして、アルコール分に飢えた私に一升瓶を見せつけ、彼は最初から私への嫌がらせを意図していたのではないか?

そんな疑念すら湧いてくる。

「あの野郎…」

アルコール分欲しさによる嫉妬と反感とがあいまって、私は唇を噛んだ。

内心のどろどろした感情を、抑え切れない。

「昼間から他人の前で酒飲む奴なんて、ろくなもんじゃねえ」

思わず、私は吐き捨てるような言葉を吐いていた。

緊張した複数の視線が、私に注がれた。

私ははっとして、顔を上げた。

路上の脇に、テラス席がある。

沿道で営まれている、イタリアンレストランのテラス席だった。

時間はお昼時。

着飾った男女がテラス席に腰掛け、スパゲッティなどのお洒落料理と共に、ワインを楽しんでいたのだ。

彼らは気分よくワインを楽しんでいる折に、私の罵声を耳にしたのだった。

彼らへの中傷と受け取れるような私の言葉であった。

心を傷つけられて、着飾った人々が、悲しげな視線を私に向ける。

私は、焦った。

「いや、違うんです、あなたたちのことを揶揄したのではなくて」

しどろもどろに言う私の言葉は、彼らには届いていないらしい。

同じ色合いの視線を受け続ける。

私は、焦った。

「すみません」

言葉につまり、私はテラス席の人々に、とにかく頭を下げた。

 

逃げるようにテラス席のある界隈から離れた。

羞恥心と自己嫌悪とで、私はもう気が狂いそうになっている。

何もかも、あの一升瓶を提げた中年男性のせいだ。

あいつがやって来なければ、こんな目には遭わずにすんだ。

「畜生…」

私は唇を噛んだ。

いつも、私ばかりが、酷い目に遭わされるのだ。

不公平だ。

この不公平に、いつも私は煮え湯をのまされている。

「畜生!」

誰も周囲にいないのを確かめてから、私は大声をあげた。

 

私は歩いている。

手には酒の一升瓶を手にしている。

どこでその一升瓶を手に入れたか、その経緯については記憶にない。

ともかく私は酒を口にして、いい気持ちで歩いていた。

端から見れば、千鳥足というやつだろう。

しかし、そんな幸せも長くは続かない。

いい気持ちで歩いている私を、道の端から、冷ややかな目で見ている人物がいる。

熱い頭を振りながら、私は視線の流れてくる方を見た。

若い女性が、道の端に立っている。

私はこちらを見る彼女の双眸に、視線を据えた。

「何見てるんだい」

おぼつかない舌で、私は相手を脅しにかかった。

「見てません」

女性は冷ややかな声で返した。

「見てたじゃん」

「いや、見てません」

「見せもんじゃないぞ」

「見てないって言ってるだろ、ブタ」

口の悪い女性だ。

私は、驚いた。

「人をしげしげ見たうえ、ブタよばわりかね」

「お前みたいにいやらしく絡んでくる男たちは、みんなブタだよ」

女性は、吐き捨てるような調子で返した。

しかしその調子に、若干の甘えがある。

私は、考えた。

彼女も、つらい過去を抱えているのかもしれない。

そんな他人の古傷をえぐるような真似は、私は避けたかった。

なぜって、私も古傷を持つ身であるので。

何か、彼女に親しみを覚える。

彼女を刺激しないでいたかった。

「では、ブタは去ることにしよう」

私はかろうじて、そう口にした。

「うるせえ、わかってるなら黙ってあっちに行けよ」

女性は低い声で返してくる。

めぐり合わせの不運を呪いながら、ブタと呼ばれた私は彼女の脇を抜けて、道の向こうへ。

もう飲むしかない。

手にした一升瓶の中身を時折口に運びながら、私は道を進んだ。

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東京のラーメンを食べ、レトロ建築を見て歩く。大阪市の旅

大阪市内には、明治大正時代に建てられた、洋風の建築物が結構残っているのです。

レトロ建築。

いいですよね。

そんなわけで先週末、休日に大阪市内に出かけてきました。 

レトロ建築を拝みに。

きっかけは、この本でして。

ぼくらの近代建築デラックス! (文春文庫)
 

『ぼくらの近代建築デラックス!』。

作家である万城目学と門井慶喜の両氏が二人で大阪、京都を初め各地のレトロ建築を訪れる探訪紀であります。

まだ軽く目を通しただけで、熟読はしていないんですがね。

とりあえず今回の私の旅、主にこの本に載っている大阪市内のレトロ建築を実地に巡ってみようというつもりで来ました。

私もレトロ建築を鑑賞するのが好きなのですよ。

 

まずは地下鉄中央線の堺筋本町駅で降りましたよ。

堺筋本町駅から北に向かって、街中にレトロ建築が点在しているのです。

しかし家を出るのが遅かったので、すでにお昼時。

まず昼食を済ませよう、ということで近くにあった「麺匠桂邸」というラーメン店に入りました。

北風の冷たい、寒い日でした。

寒い日に食べたいのは、やはりラーメンです。

この麺匠桂邸というお店、どうも東京にあるラーメン店の姉妹店にあたるようですな。

東京からやってきたラーメンなのですね。

店内に入ってすぐ、入口脇の券売機で食券を買いましょう。

私は「濃厚鶏白湯スープ」のラーメンが750円だったので、これを注文しました。

あと、鶏ユッケご飯と鶏から揚げのセットが300円の追加でついてくるというので、こちらも注文しましたぞ。

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鶏ユッケご飯、とろとろ卵黄が乗って、美味しそう。

テーブル備え付けの醤油、味噌などをかけたうえ、ピビンバのごとく混ぜ混ぜしていただきます。

さっぱり味ながら鶏肉の控えめな塩気と柔らか食感に好感が持てます。

こってりラーメンによく合いますね。

それにしても寒い屋外と暖房の効いた店内の寒暖差のせいなのか、カメラのレンズが曇って仕方ありませんでした。

そういうわけで、写真の曇りについてはどうぞご容赦ください。

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こちらが、濃厚鶏白湯スープのラーメンです。

非常に濃厚な、スープと言うよりもうソースのような、煮詰められた白湯スープです。

トッピングには鶏胸肉を使ったチャーシュー、刻みタマネギ、味の染み込んだ特大シナチクなど。

麺もつるつるで美味しくて。

何を味わっても何かしらの工夫がそこにあって美味しく、衝撃でした。

大阪で食べる一般的なラーメンとは、何か存在感が違います。

こういうラーメンもあるのか、と新鮮な気持ちでした。

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鶏の唐揚げも、味付けと揚げ具合が絶妙で…。

なんだか凄いお店でした。

東京のラーメン、さすがですな。

何となくふらっと入ったお店でこんな体験ができるのも、私の実力ですよ。

運も実力のうちなんですよ。

そんなわけで、目的のレトロ建築をひとつも見ないうちから、いい気持ちになってお店から出てきました。

 

運自慢はほどほどにして、一件目のレトロ建築物件を見て参りましょう。

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何気なく立っている、こちらのビル。

綿業会館です。

由来はよく知りませんが、近隣の船場界隈には昔から服飾関係の問屋さんが多かったようなので、その関係の綿業かな?

と思います。

素人の私は、由来も知らずビルの外観を見て歩くのみです。

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なかなか渋いビルですな。

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味わいのあるたたずまい。

mengyo-club.jp

 

お洒落なテナントが多数入っているのですね。

このビル以外でも近隣にある一連のレトロ建築には、カフェなどのお洒落テナントが入っているところが多いです。

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ビル街を、次のレトロ建築を目指して。

三休橋筋を歩きます。

レトロ建築ではなく新しいビルも、様々な外見のものが立ち並んでいて目を引きますね。

今自分は大都会を歩いている、そんな気分を満喫しました。

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やってきました。

こちらも風情のあるレトロ建築。

芝川ビルです。

いいですなあ。

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なんでもニッカウヰスキーの前身にあたる大日本果汁株式会社の設立総会が、このビル内で催されたんだそうです。

芝川ビルが、ニッカウヰスキー発祥の地と言えるわけですな。

今でも中に、一杯飲めるお店があるみたいですよ…。

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続いてのレトロ建築。

その名もオペラ・ドメーヌ高麗橋

operadomaine.com

 

東京駅を手がけたことで著名な、辰野金吾の建築なんですね。

目の覚めるような赤いレンガ造り、なんとなく雰囲気にうなずけるところがありますね。

現在、中は結婚式場になっています。

お隣にこれもレトロな教会が立っていて、いい雰囲気の界隈でした。

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続いてのこちらは大江ビルです。

ビルの屋根近くに「グンヂルビ江大」と書いてありますな。

してみると大江ビルヂングというのが正式名称なんですな。

現在は特にカフェなど飲食関係のテナントは入っていないようですが、私が写真を撮っている間にも人の出入りはあったので、もしかしたらアパート等に転用されているのかもしれません。

大きくて、なかなか渋い物件です。

 

北に歩いてきて、「大阪のシテ島」こと中之島にやって参りました。

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大阪市のレトロ建築と言えば、中之島大阪市中央公会堂は欠かせません。

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こちらも、辰野金吾の手による建築なんです。

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ある種、大阪の顔です。

osaka-chuokokaido.jp

 

内部では集会室、会議室などのスペースを貸出しています。

各種洋食がいただけるレストランもあります。

展示室には、今回私が見てきた近隣の各レトロ建築についての展示と解説文が設けられていました。

中央公会堂の竣工式には日本を代表する実業家、渋沢栄一も出席したそうです。

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私、これまで気付かなかったのですが、公会堂の入口の屋根上に、二体の銅像が乗っているんですね。

高いところにいるので、目をこらさないとよくわかりませんけれども。

左側に座っているのがローマ神話の商業の神メルクリウス。

右側が芸術の女神、ミネルヴァですと。

商人の町大阪の芸術を担う中央公会堂、この二柱の神が守ってくれているんですね。

 

中之島の北にある、堂島の地に足を伸ばします。

先に挙げた書籍『ぼくらの近代建築デラックス!』の中に、堂島にある面白い建築についての記述がありましてね。

商業ビル堂島アバンザの足元に、その建物はあります。

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それがこちらです。

ビルの下に、不思議な球状の近未来的建築物を見つけました。

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堂島薬師堂、つまりお薬師さんを祀ったお堂なんです。

この球状の建築物自体は1999年に建てられたものですが、奈良時代からここにはお堂があって、そのお堂が「堂島」の地名の由来になったんだそうです。

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とても由緒のあるお堂が、今やこんな近未来的建築に生まれ変わっているわけです。

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中から未来人か異星人でも出てきそうな外観ながら、中はしっかりお堂。

私もお薬師様に、お参りしておきました。

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薬師堂の浮かぶ池には、弁天様のお姿もあります。

もう私もいい年ですが、これから芸術の才能に恵まれるように、お祈りしておきました。

この後、堂島アバンザ内のジュンク堂書店でまた洋書を物色してから帰りましたよ。

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洋書を求めて、茶屋町散策。大阪市の旅

先週末、大阪は梅田の街を散策してきました。

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大阪駅から見えているのになかなかたどり着けない…ことで著名なヨドバシウメダ。

…の裏手です。

大きい建物なんですな。

私が今までこの中に入ったのは二回だけです。

そのうち一回は、日雇いアルバイトの仕事だったんですね。

商業施設に、利用客とは違った立場で入るのは、結構新鮮な体験でした。

 

そんな思い出にもふけりながら、歩いて参ります。

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高架沿いにしばらく、北に向かいます。

阪急梅田駅のすぐ北側、茶屋町には「MARUZEN&ジュンク堂」という大書店がありましてね。

そこは洋書コーナーも充実しているので、私は界隈に立ち寄る機会にはその洋書コーナーをのぞくようにしているんです。

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梅田芸術劇場の界隈です。

ヴァレンタインデー向けか、大阪市内ではイルミネーションを施された街路樹が目立ちます。

いい雰囲気であります。

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梅田芸術劇場の道路向かいには、関西のテレビ局、MBSの本社がありますぞ。

私テレビあんまり見ませんけれど、「ちちんぷいぷい」が好きです。

安心して見ていられる番組なんですね。

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梅田ロフトのお隣に、MARUZEN&ジュンク堂ビルの威容が見えて参りましたぞ。

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コンクリート造りの、近代的なビルなのです。

七階建ての建物で、内部の雰囲気も素敵です。

読書好きの人なら、ついつい長期滞在してしまうこと間違いなしです。

ちなみに私、今回はこの本を買いました。 

The Snowball: Warren Buffett and the Business of Life

The Snowball: Warren Buffett and the Business of Life

 

多少なりとも蓄財に関心のある方なら、ご存知ではないでしょうか。

長期投資家のお手本であり億万長者、Warren Buffet。

そんな彼についての伝記本であります、"The Snowball"です。

私も蓄財に関心があるので、買ってしまいました。

読み終わったらまた読書日記を書かせていただきます。

大部なので、読み終わるまでかなり時間がかかりそうですがね。 

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日常から離れ、異国の空気が充満する洋書コーナーで目当ての書籍を物色する。

至福のひとときです。

時々来たくなってしまいますね。

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近所にほっかほっか亭でおなじみ、ハークスレイの研修センターが見えました。

テレビ局に劇場、大書店、研修センターといろいろある界隈ですな。

 

夕食を済ませてから帰りますよ。

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ラーメンを食べて帰る気満々だったのに、ぼんやりしていたらいつの間にか吉野家に吸い込まれていました。

豚丼大盛りと味噌汁、ごぼうサラダのセットです。

豚丼は牛丼に比べると脂分が少なくさっぱりしていますが、これはこれで美味しいんですよね。

JR大阪駅前の店舗なのですが、店内は外国人観光客の方たちでいっぱいでした。

やはり土地柄ですかねえ。

国際的な雰囲気の中で食べる豚丼もなかなかのものでした。

 

ラーメン好きな方のために、先々週に行った近くのラーメン店の画像も貼っておきますね。

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阪急梅田駅の改札を出てすぐのところにあるラーメン店、「博多ラーメンげんこつ」です。

私、学生時代から、梅田で食事場所に困るとついついここに来てしまうんですね。

好きなんです。

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博多ラーメン。

600円前後だったと思います。

大阪人向けに口当たりを整えられた九州ラーメン、という感じでしょうか。

食べやすくて、美味しいんです。

柔らかとろとろのチャーシューがまた絶品です。

思い出すと食べたくなる味なんですね。

次に来たときにはまたここのラーメン食うぞ、と今から楽しみにしています。

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『社会実験進行中』

大通りの路面にひざまずいて、道行く人々に語りかける男性がいる。

「助けてください、もう二、三日の間、酒しか飲んでいないんです」

非常に大きな声だ。

通り過ぎる人たちは、気の毒そうな顔で、ひざまずいた人を見ていく。

「助けてください」

他の人と同じように通り過ぎようとした私と、彼の視線が合った。

路上にひざまずいて、私の顔を見上げてくる。

「助けてください」

非常に大きな声だ。

他の通行人たちは、ひざまずく人のみならず私の方をも見ている。

「助けてください、もう二、三日の間、酒しか飲んでいないんです」

ひざまずくその人は、大声で訴えた。

「あ、そうなんですか」

私は気圧されて、立ち止まってしまった。

それとなく、相手の風体を見た。

前髪が乱れ、頬には何か黒い汚れがこびりついている。

唇の端が、ねじれて上向いている。

怪我でもしたのだろうか。

そしてところどころがくたびれて汚れた、スーツの上下だ。

アイロンをかけたのは、おそらくもう随分前なのだろう。

「本当なんです、先月仕事をクビにされて、もう酒しか飲めないんです」

「あ、そうですか」

私は相手の大声に気圧される。

なるほど、このご時勢でクビにされた人か、と思った。

珍しい話ではない。

昨今の社会情勢を受けて、彼のような職にあぶれた人がその辺にあふれている。

そうなれば酒も飲みたくなるだろうが、酒しか飲めなければ楽しくない。

酒だけでなく、肴も大事だ。

私なんか肴が調達できないばかりに、もう数ヶ月、酒そのものを口にしていない。

肴無しで酒を飲むなど、無理だ。

しかしこの目の前の人は、肴をないがしろにしてでも飲みたかったのであろう。

そう同情をしかけたところで、彼は目の色を変えた。

「でも私、もう酒にも飽きました」

ひざまずく人は訴えた。

私はその勢いに押されて後ずさった。

「安定した生活が欲しい!」

「あっ」

大声でまともなことを言われたので、思わずうなずいてしまった。

「安定した生活が欲しい!」

「はい」

気持ちがわかる。

「そうですね」

「安定した生活。それに先立つ仕事が欲しいのです」

「あっ、そうですね」

相手の気持ちがわかるので、私は小刻みにうなずいている。

かくいうこの私も、もう数ヶ月、仕事らしい仕事にありついていない。

酒も肴も飲めない理由のひとつが、これだ。

先立つ仕事は、必要だ。

酒も肴も、仕事があれば手に入る。

「先立つ仕事、欲しいですよね」

私は相手に相槌を打つ。

「そうです。仕事を世話してください」

相手は私の目を見据えたまま、続けた。

「えっ」

「仕事を世話してください」

相手の表情は、悪びれないものだった。

「ええと…」

私は、たじろぐ。

もう数ヶ月、仕事にありついていない。

酒も肴も手に入らず、貯金を切り崩して生活している。

仕事を世話して欲しいのは、私も同じだ。

他人に斡旋する仕事など、手元にあるはずがない。

「仕事を世話してください」

相手は繰り返した。

「すみません」

私は口の中で小さく言った。

「実は、私も、仕事には困っていて…」

「はっ?」

相手は大きな声で聞き返した。

私たちの傍らを横切る人たちが、興味本位の視線をこちらに向けている。

顔から火が出そうだ。

「ですから、私も仕事には困っていて…」

「はっ?」

大きな声。

こちらの声が聞こえないのだろうか。

「私も仕事にあぶれているんです。あなたのお世話はできません」

これ以上聞かれるのが嫌で、私は大声で言い返した。

恥ずかしいが、仕方がない。

ひざまずいた男性は、目を見開いてこちらを見ている。

ようやく、聞こえたらしい。

「なんだ、そうなんだ。それを先に言ってよ」

「はあ…」

相手は、鼻息を吹き出した。

「おたく、仕事もしてないくせに俺の目の前を肩で風切って行ったり来たり、いいご身分だね」

軽蔑しきった声が下から向かってくる。

なんだこの人は、と私もさすがにむっとした。

人の通り道の脇にひざまずいて声をかけてきたのは、この人の方なのに。

むっとしたまま、私は形ばかりの会釈を残して、その場を後にした。

 

いつものように、私は職業安定所に来ている。

施設内の、無料のコーヒーが飲める喫茶コーナーで暖を取っていると、声をかけられた。

「おい、モッさん」

体格のいい、私よりひとまわり年上の男性だった。

顔見知りである。

仕事仲間の、ゴッさんだ。

彼の口にしたモッさんというのは、仲間内での私の通称である。

「あっゴッさん、おはようございます」

ゴッさんは面倒見のいい男性で、私が仕事選びに困っているときに、仕事探しのコツを教えてくれたこともある人だ。

時には、仕事を世話してくれることもある。

この人がいなければコミュニティが機能しない、というタイプの人柄。

今の時代には稀有な人徳を持っている。

先日会ったあの路上の男性も、私でなくゴッさんに出会えていればよかったのだが。

「モッさんおめえ、ネットのゴシップは好きか?」

「えっ、ネットのゴシップ?」

「おう」

急に切り出されて、私は戸惑った。

「いや、そういうのは詳しくはないんですが…」

「おめえ、こういう記事が出てるんだぞ」

ゴッさんはポケットから携帯情報端末を取り出して、その画面を私に見せる。

インターネットの、何かの記事のようだった。

「これは…」

タイトルが「失踪中、かつ社会実験進行中」とある。

「何ですか、これ…」

「ちょっと読んでみろよ」

端末をゴッさんから受け取り、私は文面を拡大して読んでみた。

そのウェブ記事の書き手は、「社会派ブロガー」を自称する、この土地在住の男性だった。

彼いわく、先日、本業を退職して時間ができた。

時間があり余っている。

その機に、かねてから念願だった社会実験を実行することにしたのだという。

「無職で酒飲みの役立たずを社会はどう扱うか?」。

その事実をあぶり出すために、彼は日がな一日路上にひざまずいて、道行く人に仕事を乞うふりをすることにしたのだそうだ。

あれ、と私は思った。

路上にひざまずいて、通行人に語りかける人物。

先日、私もそんな人に会った。

「ゴッさん、私この人…」

「いや、わかってるからもう少し先まで読んでみなよ」

ゴッさんにうながされて、私は続きを読んだ。

文面には、路上にひざまずいたブロガー男性の体験がつづられている。

 

誰しもうす汚れた私なんかを相手にしないかと思えば、案に相違してこちらの身の上を聞き込もうとするおせっかいな連中も多い。

面白かったのは、通りがかった無職男性。

こちらの身の上に同情するかのような態度で言葉を交わして。

優越感を刺激されたか。

しかしこちらの問いかけにも終始おどおどして、要を得ない回答。

社会経験に欠けるたたずまい、というのを実地に目にした。

ああいう頭の弱そうな連中が仕事もせずに昼間から通りをうろうろ。

社会の害悪でしかない。

 

「何なんですか、これは」

私は顔に血が昇るのを実感した。

「まあまあ」

ゴッさんは私から情報携帯端末を取り戻しながら、笑ってなだめにかかる。

「やっぱりおめえさんだったか、記事の無職男性」

「失礼でしょ」

頭に血が昇り、コーヒーカップを持っていない方の手で、私はゴッさんの襟首をつかみにかかる。

「ふざけやがって、インチキ社会派ブロガー野郎」

「落ち着け、コーヒー飲め」

ゴッさんに片腕をつかみ返されて、コーヒーを飲むようにうながされた。

ゴッさんは握力の数値が100を超える男なので、そうされてはこちらも抗い難い。

空いている片手でコーヒーを口に運ぶ。

砂糖とミルクが混ぜてあり、私の好みの味。

ひと息つけた。

ゴッさんは、私の片腕を放した。

「ネットゴシップって、こんなの迷惑じゃないですか、他人のこと勝手に悪し様に書きなぐって」

改めてゴッさんに訴えた。

「まあまあ…」

なだめるゴッさん。

その表情は、落ち着いている。

「失礼ですよ」

「落ち着け」

「落ち着けません」

「いいか、モッさん。世の中にはな、他人を踏み台にしなきゃ自分を守れない奴もいるんだよ」

諭すような声色だ。

「はあ…」

私は首をかしげた。

そんな決め台詞を吐かれても、私の生の感情は納得しない。

「でも、踏み台にされた人間はどうなるんです…」

コーヒーを全部飲み干して、私は踏み込んだ。

うなずくゴッさん。

「人を踏んで行った奴は、大抵その先で転んでるよ。俺たちはそうならんように気をつけて、今日も生きるんだ」

握力は強い男だが、こういう決め台詞ばかり吐かれては、私も苦笑するほかない。

だがともかくも、私の心は落ち着いた。

「それはそうとゴッさん、仕事ありませんか」

「今日の午後から、一件あるぜ。人を集めろと言われてる。きつい仕事だがおめえさん、来るか」

「やらせてください」

コーヒーのおかわりをいただいて、私とゴッさんは現場に向かった。

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単語カード、まとめ買い。英語以外にも使えます

今まではずっとバラ売りのものを買って使ってきましたが、まとめ買いで感無量です。

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コクヨのCampusの単語カード、別名フラッシュカード。

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Amazonで割引きされていたので、誘惑に耐え切れず購入してしまいました。

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外国語の単語を覚える際に便利な単語カードです。

英語なり他の外国語なり、これを使えば単語暗記の反復学習に便利だと思うのですね。

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85枚で1セットの単語カードが、30個入っています。

単語カード1枚に1単語書くとして、85語単位で反復学習ができるわけですね。

合計で2550単語分書けることになります。

2550単語の暗記、多いと見るか少ないと見るか。

覚える量としては、結構な数ですね。

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私、多読多聴を外国語学習の基本にしながら、ボキャビルで習得語彙数を補強したいと思っているんですね。

日常的に外国語に触れながら、どうしても覚えられない単語については意識的に暗記学習をする。

メモ帳等に気になった単語をメモしていくのと併行して、単語カードに単語と対訳の意味を書く。

そういうやり方がシンプルで、効率もいいと思います。

携帯型端末で単語学習アプリもいろいろ出ているみたいですが、私は単語カードを手に持って、一枚一枚繰る感覚が好きなんですね。

やめられません。

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