連載小説

『手間のかかる長旅(075) 町子のブログを、頑として読まない時子』

三人で、ぼんやりと、古墳の周囲に長居するわけにもいかない。 時子(ときこ)は、町子(まちこ)とヨンミを近くの自宅に連れていった。 どうせ時間をつぶすなら、自宅がいい。 時子はこれまで何度か遊びに来たことがあるし、ヨンミもすでに一泊している。 …

『瞬殺猿姫(20) 一子は生きる。猿姫には負けない』

どうしたらいいだろう、と猿姫(さるひめ)は思案しながら歩いている。 神戸城の本丸御殿である。 背中に棒を担いで、通路を歩いている。 客人が、他家の城内をむやみやたらと歩き回るのは、あまり褒められたことではない。 だが、歩き回って城内の様子を確…

『瞬殺猿姫(19) 猿姫と離れ、茶席の三郎』

織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)は、座っている。 再び、神戸下総守利盛(かんべしもうさのかみとしもり)と対面しているのだ。 三方を土壁に囲まれた、狭くて暗い茶室である。 明かりは、三郎の背面にある障子戸から薄く入ってくるばかりだ。 神戸下…

『瞬殺猿姫(18) 三郎は、猿姫を城主に会わせたくない』

猿姫(さるひめ)に深呼吸をうながし、落ち着かせたところで。 織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)は、ようやく彼女を放した。 「お座りくだされ、猿姫殿」 蜂須賀阿波守(はちすかあわのかみ)が寝そべっている傍らを、手で示した。 「嫌だ」 猿姫はかぶ…

『瞬殺猿姫(17) 阿波守を爪弾きにする猿姫』

北伊勢の神戸城、縁側に猿姫(さるひめ)と織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)はいる。 忍びの一子(かずこ)がその場を立ち去った後も、二人は途方に暮れている。 南近江の大名、六角家と共に。 西の関家が、この城に攻めてくる。 「六角家の力を借りた…

『瞬殺猿姫(16) 一子の知らせを疑う猿姫』

「お二人の逢引を邪魔して、申し訳ございませんでした」 忍び装束の女、一子(かずこ)は、二人に深々と頭を下げた。 この女は何をしに来たのだろう。 そう思い、猿姫(さるひめ)は相手の頭頂部をにらみつける。 言葉通り、本当に「逢引」を邪魔しに来たの…

『瞬殺猿姫(15) 神戸城の縁側で、猿姫と一子』

猿姫(さるひめ)は、縁側の上に立っている。 織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)は、縁側の縁に腰掛けたまま。 振り返って見ている。 一子(かずこ)は、猿姫と向かい合ったまま、顔を三郎の方に向けていた。 彼女は三郎の目を見つめて、笑いかけている…

『瞬殺猿姫(14) 不審の三郎、苦しい猿姫』

北伊勢の神戸城、本丸の御殿。 猿姫(さるひめ)たち一行は客間をあてがわれ、しばらく滞在することになった。 それぞれの刀、鉄砲など、没収されていた武具も返却された。 与えられた部屋に来て荷物を置くなり、さっそく猿姫は、愛用の棒の手入れにかかる。…

『瞬殺猿姫(13) 神戸下総守との交渉に当たる、三郎と猿姫』

「下総守殿っ」 織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)は、上座に向かって前のめりになった。 「まずは見てくだされ。この羽織を」 下品でいやらしい絵柄が描かれた己の羽織を、指先でつまんで強調する。 「拙者、着の身着のままで、逃げてくる他なかったの…

『瞬殺猿姫(12) 猿姫に目をつける、神戸城の若殿』

猿姫(さるひめ)、織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)そして蜂須賀阿波守(はちすかあわのかみ)。 彼ら一行は、神戸城の主の間で座って待機している。 中庭に面した障子戸が開いた。 城主である、神戸下総守利盛(かんべしもうさのかみとしもり)が現れ…

『瞬殺猿姫(11) 神戸城、首の心配する猿姫』

北伊勢の神戸城を本拠とする武家、神戸家。 猿姫(さるひめ)一行は、現当主である下総守利盛(しもうさのかみとしもり)を訪ねてやって来た。 神戸家は、同じく北伊勢の亀山に本拠を置く武家、関家の支流にあたる家柄である。 もっとも、家柄としては関家の…

『瞬殺猿姫(10) お伊勢参りはできない猿姫』

通路の脇で、壁にもたれかかって。 猿姫(さるひめ)は、指先を噛んでいる。 彼女は愛用の棒を傍らに立てかけて、思案しているのだった。 宿の下女が来て、彼女を一瞥して通る。 「お嬢さん、えらい今日はおめかしして、どこへ行くん?お伊勢参り?」 「いや…

『瞬殺猿姫(9) 猿姫と物置部屋の者』

狭くて暗い、物置部屋の中である。 猿姫の首には背後から腕がからみついている。 あごの下にかかるその腕に、猿姫(さるひめ)は指を立てた。 人間の腕に存在する急所の位置を、猿姫は熟知している。 「待て、何もしないから」 猿姫の殺気を気取ったらしく、…

『瞬殺猿姫(8) 身だしなみの猿姫。脅しをかける髭武将』

可愛らしい、さえずる小鳥の声が障子窓のすぐ外から聞こえる。 織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)は、気持ちよく、まどろんでいた。 弟である織田家当主、織田弾正忠(おだだんじょうのじょう)の手によって。 三郎は、故郷、尾張国を追われた。 行きが…

『瞬殺猿姫(7) 髭武将には手荒な猿姫』

男をうつ伏せにさせて、座敷の畳の上に押し付けている。 猿姫は彼の上に覆いかぶさり、男の背中に片膝を押し当てているのだ。 そのまま、うつ伏せの男の両手首と足首とを背中の上できつく縛り上げて。 男を、えび反りの体勢にさせた。 酷い体勢で縛られてい…

『手間のかかる長旅(074) 三人で古墳に来た』

三人で、時子(ときこ)の自宅近くにある鉢形山古墳まで来た。 「だから古墳なんて嫌だって私は言ってるでしょ」 古墳の嫌いな町子(まちこ)は、古墳の前に立ってごねている。 しかしもう現地に来てしまったので、手遅れだった。 「まちこおんに、ちょごる…

『瞬殺猿姫(6) 猿姫と三郎、下克上を提案される』

すでに、日は落ちている。 座敷の隅では、燭台の上のろうそくに火が灯っている。 一行は、ろうそく明かりに照らされた座敷で車座になって、議論している。 猿姫(さるひめ)と織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)。 そして蜂須賀阿波守(はちすかあわのか…

『瞬殺猿姫(5) 白子港で、戸惑う猿姫』

船尾を岸壁に繋いだ後も、船はぐらぐらと揺れている。 「三郎殿、着いたぞ」 船板に腰掛けたまま、すやすやと寝入っている織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)。 猿姫(さるひめ)は彼の体の上に屈みこんで、揺さぶった。 「着いたのでござるか」 三郎は、…

『瞬殺猿姫(4) 二者から歌を強いられる猿姫』

尾張国の農民の生まれである猿姫(さるひめ)。 彼女は棒術の達人である。 猿姫と同じ国の武家の生まれである織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)。 彼は南蛮渡来の武器である鉄砲を使える。 二人とも故郷を追われ、今は行く先も知れない、長い旅の途中に…

『瞬殺猿姫(3) 猿姫が打ち据える、船着場の髭武将』

猿姫(さるひめ)は殺気立っていた。 周囲から、敵意に満ちた多数の視線を受けている。 こういう状況では、猿姫は殺気立たずにはおれないのだ。 彼女の連れの織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)は、心配そうに猿姫の背中を見守っている。 猿姫は、棒術の…

『瞬殺猿姫(2) 堺を熱く語る三郎と猿姫』

こいつのせいで考えがまとまらない、と猿姫(さるひめ)は苦々しく思った。 目の前で、彼女の連れがあぐらをかいている。 織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)である。 三郎は、尾張の国を治める領主、織田家の一族出身の若者である。 この三郎のまとう上…

『手間のかかる長旅(073) 町子は古墳が嫌らしい』

町子(まちこ)は、苦笑する。 「まあ、私はなんだかんだで何でもネタにできるから、何でもいいの。どこに行ってもいいの、時間つぶせるなら」 友人二人に、済ました顔を向けて、言った。 時子(ときこ)とヨンミは町子の顔を見ている。 「面白いネタは常に…

『手間のかかる長旅(072) 小さな候補地選び』

妙な雰囲気になったまま、四人は食事を終えて別れた。 ヨンミの分の支払いは、美々子(みみこ)が払った。 美々子には、午後からも仕事がある。 彼女の仕事が終わって帰宅するまで、ヨンミは時子(ときこ)と町子(まちこ)に同行することになった。 ヨンミ…

『手間のかかる長旅(071) むしろ時子のことが心配』

だいたい自分だって、生活に苦労している。 時子(ときこ)はそう思った。 ここしばらく、両親からのわずかな仕送りのほかには収入がないのだ。 自分だってヨンミと同じくらい状況は切羽つまっている。 先日はアリスにも心配された。 できることなら自分も働…

『手間のかかる長旅(070) 次の仕事を探しているヨンミ』

つらいのはヨンミなのだ。 下手な同情は無責任だ。 時子(ときこ)は慌てて、くしゃみをするふりをして、流れそうになった涙をごまかした。 「だからさあ、店も辞めたいし、しばらく休むってそいつに連絡したのよ。ヨンミは」 なにげなく時子から視線を外し…

『手間のかかる長旅(069) その店で働きたいヨンミ』

食事を終えた町子(まちこ)と美々子(みみこ)はコーヒーを追加注文した。 さらに、女性従業員は時子(ときこ)とヨンミにもコーヒーのおかわりをサービスしてくれた。 四人でコーヒーカップを前に、まったりしている。 「この店、静かだし、まったりできて…

『手間のかかる長旅(068) ハンバーグを食べた三人』

時子(ときこ)とヨンミはまったりコーヒーを飲んでいる。 その間、町子(まちこ)と美々子(みみこ)は配膳されたそれぞれの料理を食べている。 町子はスパゲッティペペロンチーノ、美々子はハンバーグランチだ。 二人とも、食欲旺盛なようだった。 午前中…

『手間のかかる長旅(067) ヨンミの進退』

例の女性従業員がテーブル横に瞬間移動してきた。 時子(ときこ)とヨンミの前に水のコップを置く。 美々子(みみこ)と二人でメニューを見ていたヨンミは、驚いて従業員を見た。 ヨンミに笑いかけて、従業員はカウンターの方に戻って行った。 ヨンミの顔つ…

『手間のかかる長旅(066) ヨンミと美々子の仲』

時子(ときこ)とヨンミ、二人で歩いて例の喫茶店にやってきた。 ヨンミは若干緊張している。 家出してきた訳を、町子(まちこ)と美々子(みみこ)に説明するのだ。 何かにつけ緩い町子はともかく、美々子は厳しいところがある。 当事者のヨンミでなく、時…

『手間のかかる長旅(065) ガムは苦手な時子』

おなかがいっぱいで動くのが辛かったが、そろそろ出かけないといけない。 ヨンミが身の回りのものをまとめて、持参したボストンバッグの中に片付けている。 その仕草を眺めながら、時子(ときこ)は歯磨きした。 先ほど二人で食べたキムチは美味しかったが、…

『手間のかかる長旅(064) おやつにご飯とキムチ』

結局ヨンミは時子の自室まで、購入した米袋総量10キロを運んでくれた。 ヨンミは小柄な女性で、特に力持ちにも見えなかった。 その彼女が自室までの短くはない道のりを、文句のひとつも言わず重い米袋を運ぶ姿に、時子は感銘を受けた。 もしかしたらヨンミな…

『手間のかかる長旅(063) 二人はお米で頭がいっぱい』

二人は朝食にトーストを何枚も食べて出てきたのだ。 だが古墳を見て、かまどとお釜とご飯とを連想した時子(ときこ)とヨンミは、それぞれご飯に心を奪われた。 前夜、夕食の際に十分なご飯を食べられなかったことが、心残りでもあった。 「なんか、ご飯食べ…

『手間のかかる長旅(062) 古墳とご飯』

坂道を登って雑木林を抜け、小さく開けた場所に出た。 時子(ときこ)とヨンミは、盛り上がった古墳の裾に立っていた。 「わりと大きいね」 時子は感心して声をあげた。 古墳は、土を持った円形の小山だった。 数メートルの高さがある。 小山の斜面の上部に…

『手間のかかる長旅(061) 住宅地にそんなものもある』

朝食後、時子(ときこ)はヨンミを案内して自宅の周辺を散歩することになった。 周辺は、何の変哲もない郊外の住宅地である。 特に見るものもないが、昼の待ち合わせまでかなり間があるので、軽く時間をつぶそうと時子は思ったのだ。 二人で部屋にいて、それ…

『手間のかかる長旅(060) 二人の朝食』

翌朝、部屋は冷え冷えとしている。 時子(ときこ)が目覚めたとき、彼女はヨンミと抱き合う格好になっていた。 寒かったので、お互い同じ寝具の中で丸まるうちに、抱き合っていたらしい。 人間二人で抱き合って寒さをしのぐ話を、登山小説か何かで読んだこと…

『手間のかかる長旅(059) 部屋にある寝具』

食事を済ませて、時子(ときこ)とヨンミは交代でシャワーを使った。 時子はパジャマに着替えた。 ヨンミはパジャマを持参しなかったらしく、シャワー前とは別のTシャツとジャージに着替えている。 その後の二人は、言葉が通じない以上特に話すこともなく、…

『手間のかかる長旅(058) 米不足の食卓 』

ヨンミを泊める一件をとりあえずメールで連絡した町子(まちこ)と美々子(みみこ)から、時間差を置いてそれぞれ返信が来た。 勤務先での休憩時間に入ったのだろう。 時子(ときこ)はそれらのメールを読んだ。 二人とも激励の言葉と、明日の昼に例の喫茶店…

『手間のかかる長旅(057) ヨンミがうらやましい時子』

時子(ときこ)は、友人のヨンミを部屋にあげている。 こうなった以上は、なんであれ今晩は彼女を泊めなければ、と時子は思った。 「まあ、とりあえずは今晩は泊めるよ」 畳の上に二人であぐらをかいて向かい合っている間に、時子はヨンミに言い渡した。 「…

『手間のかかる長旅(056) 甘すぎるお茶請けクッキー』

時子(ときこ)とヨンミは肩を並べて、自室の真ん中にあぐらをかいて座っている。 二人して、マグカップで入れたばかりの紅茶を飲んでいた。 目の前に、茶器類が載ったトレーを置いている。 トレーの上には、お茶請けのお菓子の紙箱もあった。 ドラッグスト…

『手間のかかる長旅(055) 思い余って二人で部屋に入る』

ヨンミは切実な目でこちらを見ている。 時子(ときこ)は戸惑った。 ヨンミの足元に落ちているボストンバッグから察するに、おそらく泊めて欲しいと言っているのだ。 どうしよう、と思った。 なにしろ意思疎通ができない。 「泊めて欲しいの?」 「ね」 ヨン…

『手間のかかる長旅(054) お金が欲しいままに自宅に戻る』

食事の後の、つかの間の雑談を終えた。 店を出た時子(ときこ)たち三人は、挨拶を交わしてその場で別れた。 それぞれ、午後からの予定に向かうのだ。 町子はアルバイト先、アリスは広告向けの撮影でスタジオに行くという話だった。 時子には、午後の予定は…

『手間のかかる長旅(053) お金の話はつらい時子』

「ごちそうさま」 食事を終えたアリスが、空になった食器類を前に手を合わせている。 こういう作法も誰か教えた人がいるのに違いない。 時子(ときこ)はぼんやりとアリスを見ている。 カップに残っていたコーヒーを口にした。 町子(まちこ)もアリスの隣で…

『手間のかかる長旅(052) 恐山は日本の聖地』

時子(ときこ)も町子(まちこ)も、戸惑ってアリスを見た。 「恐山って。あの石を積んだ河原があって、霧に包まれてて、イタコさんがいるところでしょ」 「まったくその通りだにゃ」 アリスはくぐもった声で返事しながら見返している。 バターライスをスプ…

『手間のかかる長旅(051) 日本の聖地を推す友』

アリスは料理をおいしそうに食べている。 適度な速度である。 時子(ときこ)も町子(まちこ)も、彼女の食事に付き合って長々待たされずには済みそうだ。 それぞれ自分のケーキを食べ終えて落ち着いたので、二人はアリスが食事する様を眺めている。 アリス…

『手間のかかる長旅(050) アリスの食欲は揺らぐ』

「お前たちは、瞬間移動を見たのに、よくケーキをぺろぺろ食えるね」 アリスは呆れた声をあげる。 ケーキを食べていた時子(ときこ)と町子(まちこ)は、二人とも同時に吹き出してしまい、とっさに口元を押さえていた。 「ぺろぺろって何よ、ぺろぺろって」…

『手間のかかる長旅(049) 肝心な瞬間は見えない』

カウンターの内側に戻る女性従業員を、時子(ときこ)は上半身をひねり、振り返って見ている。 件の従業員は、まるで瞬間移動するように、近づく気配を気取らせずに注文を取りに来る。 そう薄々思っていたところだった。 「瞬間移動の瞬間を見たの?」 上体…

『手間のかかる長旅(048) 勘に優れる友人の所見』

アリスは目を細めてカウンターの方に視線を送っている。 「怪しいと思ったが幽霊なら仕方ないにゃ」 口元でつぶやいた。 彼女がこの店を嫌ったらどうしよう、と時子(ときこ)は心配になる。 この店を知ってからまだ四日目だが、時子は居心地がいいのだ。 友…

『手間のかかる長旅(047) 寒がりの友人を連れて喫茶店へ』

しょうがを使った手作り弁当を食べたおかげで、体が温かくなってきた。 元気が出る。 時子(ときこ)は気分が良かった。 これから町子(まちこ)ともう一人の友人に会うことになっている。 今日は何にも心配することはない、と気楽にかまえた。 「寒いところ…

『手間のかかる長旅(046) 時子は外のベンチで一人食事する』

翌日の昼、時子(ときこ)は一人でいる。 公園のベンチに座っている。 北風が身に冷たい。 彼女の傍らに町子(まちこ)はいなかった。 町子は後ほど、美々子(みみこ)とは別のグループの友人の一人を連れて合流することになっている。 お昼には間に合わない…

『瞬殺猿姫(1) 猿姫うつけ殺し』

領主が本拠を北方の清洲の城に移してからというもの、那古野の城下は寂れる一方だ。 その那古野の、長屋が並ぶ裏路地である。 小柄な若い女が、まじめくさった顔をして歩いていく。 顔が小さくて額の広い彼女が眉をひそめている様は、どこか思慮深い猿を連想…