An excerpt from 『Farewell, My Lovely』
私の好きな作家 Raymond Chandler が書いた名作 『Farewell, My Lovely』 にこんな一節があります。
"She drove me all the way home, tight-lipped, angry.
She drove like a fury.
When I got out in front of my apartment house she said good-night in a frosty voice and swirled the little car in the middle of the street and was gone before I could get my keys out of my pocket."
(彼女は家までの道すがらずっと唇を固く結び、怒りながら私を送り届けた。
彼女は狂乱のように走った。
私が自分のアパートの前に降り立ったとき彼女はささくれた声でおやすみなさいを言い、私が鍵をポケットから出すよりも速く、路上の真ん中で小さな車を翻して去った。)
敵に捕まって薬を打たれ監禁されていた私立探偵 Philip Marlowe が、監禁場所からの脱出に成功した後。
顔見知りの若い女性記者 Anne Riordan のアパートに転がり込んで一時の休息を取ります。
彼に好意を寄せている Miss Riordan はそのまま泊まっていくように勧めます。
が、Marlowe はそれを断ったうえに余計なことを言って、相手を怒らせてしまいます。
その直後、自尊心を傷つけられた Miss Riordan が Marlowe を彼のアパートまで送っていく…。
そんなシーンを描写したのが先の一節です。
何度読んでも、じんわりきてしまいます。
「男のファンタジー」と言ってしまえばそれまでなんですが…。
これ、1940年に書かれた小説なんです。
作者のChandler は現代にも通用する「ヒロイン萌え」要素をよく理解していたんだな、と思います。
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