『The Interpreter』Suki Kim
私、海外のコリアンタウンですとか韓国人コミュニティについて関心がありまして。
それでそれらに関しての本を探してるのですが、なかなかそれだけを扱った作品というのは手に入りにくいのですよね。
ところで、ノンフィクション本ではなく小説なのですけれども、在米韓国人社会を題材にした洋書があったので読みました。
韓国系アメリカ人作家Suki Kimの書いた『The Interpreter』です。
主人公の韓国系アメリカ人女性Suzy Parkは、韓国語の法廷通訳として生活しています。
彼女は、英語の話せない韓国系移民が法廷に立って発言する際の通訳をするのです。
アメリカには、英語が話せないまま生活の安定を求めて移民してきた韓国人がコミュニティをつくっているのですね。
彼らが訴訟に巻き込まれた際には、Suzyのような通訳が必要になるのです。
Suzyの両親も英語が話せない移民でした。
その両親はSuzyが幼い頃に、経営する食品店内で何者かに射殺され、犯人もわかっていません。
以来、Suzyは両親の死という現実を受け入れることができないまま。
自分を責めさいなむ記憶から追われるように生きてきました。
しかしある日通訳にあたった法廷での一件がきっかけで、両親の死の謎を探る手がかりがSuzyの前に現れます。
フラッシュバックする家族の記憶、韓国人社会で成功したはずの亡き両親の秘密、疎遠になった実の姉の影。
内省的な主人公が自らの身の上に関わる謎を追う作風は、往年のハードボイルド小説を思い起こさせるところがありました。
文章も美しく、魅力的でリーダブルな作品と言っていいかと思います。
しかし作中で明らかになる、「自由の国」に憧れて渡ってきた韓国系の人々を待ち受ける過酷な現実に、胸が締め付けられます。
韓国系移民の社会を通して描かれる、アメリカという国の現実。
また、アメリカに渡って来てもなお韓国人たちを縛る厳しい家族の掟。
娯楽として楽しめる作品の中にそれらが描き出されていました。
Suzyが直面する結末も含めて重いものですが、とても読み応えがある作品です。
新品価格 |