『インスタントラーメンが海を渡った日 日韓・麺に賭けた男たちの挑戦』村山俊夫

私も一好事家としまして、当然韓国即席麺の歴史には関心を持っていたのです。

以前に即席麺記事で紹介しました三養食品の製品が、韓国即席麺の先駆けなわけであります。

その誕生の経緯につきまして、こういう本が出ています。

インスタントラーメンが海を渡った日: 日韓・麺に賭けた男たちの挑戦

村山俊夫氏の著作、『インスタントラーメンが海を渡った日 日韓・麺に賭けた男たちの挑戦』です。

日韓の二人の主人公の視点で、本書は語られます。

一方に、大阪で安藤百福が即席麺を発明して後、関東の地でも自分たちの即席麺をつくろうとする日本の明星食品の社長、奥井清澄。

もう一方、人々がその日の食料にも事欠いている朝鮮戦争後の韓国で、世の中のために即席麺づくりを志向する事業家、全仲潤(後の三養食品創業者)。

即席麺の開発も開発後に商品が社会的認知されるまでの販促活動も、とても困難な事業でした。

海を隔てながら、両者が似た困難な状況の中で試行錯誤するわけなのですね。

  

商品開発に行き詰った全が日本の各即席麺メーカーに技術提供を要請するのですが、軒並み断られます。

資金の限られている全は「韓国の人々の食料不足を改善する」社会的使命を訴えて低価格での技術提供を求めるのです。

しかし己の利益を追求する日本の企業からすれば彼の要請には応じられません。

当時は日本国内ですら、即席麺メーカー同士が製造技術を巡って競争している状況だったのです。

ところが明星食品の奥井は、それまで朝鮮戦争等による韓国の市民の窮状に心を痛めており、全の要請に共鳴します。

全に会う以前、奥井は、製麺事業の一環でスパゲッティ製法を学びにイタリアに出向いていました。

その際、現地の製造者が気前よく麺作りを教えてくれたことに感銘を受けていたのですね。

その経験があって、奥井は全に対して、何と無償での技術提供に応じます。

 

韓国初の即席麺、三養食品の製品はそうして生まれました。

日頃私が好きで食べている韓国即席麺の誕生秘話だったのですが、「人の善意」がそこにあったからこその結果なのですね。

明星食品の奥井社長と三養食品の全社長、この二人が意気投合しなければ、今ある韓国の即席麺はいずれも存在しなかったかもしれない…。

そう思うと、これまで以上に韓国即席麺が美味しく感じられてしまいそうです。

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インスタントラーメンが海を渡った日: 日韓・麺に賭けた男たちの挑戦

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