『手間のかかる長旅(064) おやつにご飯とキムチ』

結局ヨンミは時子の自室まで、購入した米袋総量10キロを運んでくれた。

ヨンミは小柄な女性で、特に力持ちにも見えなかった。

その彼女が自室までの短くはない道のりを、文句のひとつも言わず重い米袋を運ぶ姿に、時子は感銘を受けた。

もしかしたらヨンミなりに、時子が昨晩泊めたことに対しての感謝を示したかったのかもしれない。

時子は嬉しくなった。

 

「お米、美味しいね」

「ね。ちんちゃましっそよ」

今は時子(ときこ)とヨンミは、部屋で座り込んで、ご飯を食べている。

数時間前にトーストとハムエッグの朝食を食べたのに、また食べているのだ。

時子は帰るなり米袋をひとつ開封して、空の米びつを満たした。

そして、米袋に余った分でご飯を炊いたのだ。

米と一緒に買ったキムチも開封して、炊き上がったご飯のお供にして食べている。

「私、キムチ初めて」

白菜を箸先につまんで、時子はぱくぱくと食べた。

キムチは予想したよりも辛かった。

ただ、味にコクがあって食べやすい。

偏食がちな時子だが、そのキムチの味は嫌いではなかった。

「お、ちんちゃ?ましっそよ?」

ヨンミは味のことを尋ねているようだ。

「うん。美味しいよ。結構好きかも」

「ちんちゃ?きっぽよ!」

時子の反応に、ヨンミは手を叩いて喜んだ。

「うん。これはご飯が進んでしまうわ」

「ね」

二人はご飯をおかわりした。

「朝食と昼食の間だからおやつ?」

「ね」

ご飯とキムチは順調に減っていった。

炊いた分のご飯とキムチを全てたいらげて、時子とヨンミはしばし部屋でまったりした。

緑茶をいれて飲んだ。

おなかが膨れている。

「体が重い…」

「ね」

昼食はいらないぐらいだ、と時子は思った。

トーストを二枚食べて、なおおやつにご飯を二杯たいらげた。

朝から食べすぎだろうと反省した。

頭の働きが鈍って、座り込んだまま動けなかった。

ヨンミも、ぼんやりしている。

「あと5分だけ休んだら、もう出かけましょうね」

「ね。あるげっすむにだ」

二人してうなずき合うのだが、いっこうに体は動かない。

町子(まちこ)と美々子(みみこ)と、例の喫茶店で会う約束がある。

皆で、今後のヨンミの進退を話し合うのだ。

時子ではヨンミの詳細な事情を聞いてあげられないが、美々子はヨンミの言葉がわかる。

具体的な相談ができるはずだ。

きっと悪いようにはならないはず、と時子は思う。

思いながら、時子はヨンミと一緒にぼんやりし続けた。

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