『イタリア「ケルト」紀行 キサルピナを歩く』武部好伸
どの国にも、古代の異民族の記憶が残っているものです。
『イタリア「ケルト」紀行 キサルピナを歩く』、武部好伸氏の著作です。
ケルト人の痕跡を求めてヨーロッパを巡っておられる著者が、北イタリアを旅したエッセイです。
私の印象でケルト人というと、森の中に住んでいて、鉄の武器を持っていて、ドルイド僧がいて、アイルランドあたりに今でも文化が残っていて…という具合で。
そのケルト人がイタリアにも痕跡を残しているというので、興味深く読みました。
実際はケルトの遺跡が残っているのはイタリア北部ぐらいで、またその数も非常に少なく、著者もケルト探索に苦労されたようです。
何しろイタリアというのは古代ローマ人の遺跡が今でも圧倒的な存在感を誇っているわけで、一時期イタリアにいた程度のケルト人の足跡を見つけるのは大変なのですね。
ケルト人たちはローマ建国初期に北部から攻め込み、一時はローマの都を荒廃させたこともある程、勢いがあったのだそうです。
ところが力を蓄えたローマ人に次第に押され、最終的にイタリア北部のケルト人たちはローマ人に同化されました。
現代では数少ない遺跡にケルト人のつくった装飾品など、わずかにその記憶が残っています。
そうした希少なケルト人の足跡を巡って、北イタリアの景勝地を旅した著者の紀行文です。
イタリア語が話せない著者が苦労しながら現地でケルト情報を探ったり、土地の人たちと触れ合ったりするくだり、面白く読めました。
言葉ができればできるに越したことはないですけれど、そうでなくても調査の旅はできるし、また人との出会いも味わえるのですね。
ケルト人に思いを馳せる旅をしに、私も北イタリアに行ってみたくなりました。
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