『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』チェ・ゲバラ
旅することを「現実逃避」とするむきが世の中にはあるようですね。
旅好きの私としては、反論したいところなんですね。
ただ残念ながら、私は旅した結果として厳しい現実と向き合う強さを得た経験とか。
そういうのがありません。
でも、世の中の旅人たちには、旅して強くなっていった人たちも多いと思うのですね。
こういう本があります。
『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』。
フィデル・カストロと共にキューバ革命を成功させた英雄、チェ・ゲバラ。
彼が革命の闘士となる以前の医学生時代、友人と二人で南米の故郷アルゼンチンから北米まで。
おんぼろのオートバイ、ポデローサ号を頼りに南米大陸を縦断したのです。
これは、その際にゲバラがつづった日記を集めた一冊です。
キューバ市民のために命をかけ、後年には自らの理想のために同志たちからも孤立して、一人死んでいったゲバラ。
そんな彼も、若い頃は無邪気で破天荒な旅をしていたのですね。
文学の素養を感じさせるユーモアのある筆致で、その過程が語られていきます。
ゲバラたちは南米の各国を、無茶をしながら楽しく旅していきました。
しかし各国で、彼は現地の軍事独裁政権に弾圧される貧しい市民たちの姿を見ることになります。
弾圧。
搾取。
貧困。
美しいラテンアメリカを知ろうと旅立ったはずのゲバラ青年が、その鋭い視線によって世の真実を見てしまったのです。
次第にゲバラは、義憤に駆られて行きます。
ゲバラは現実から目を逸らせることができない人だったのでしょう。
旅が人を変える。
それは旅が、人がもともと心の奥底に抱えていた何かの素質を、呼び覚ますのかもしれません。
私は、旅しても旅してもあまり変わっていない…ところを見ると、素質がないのでしょうか。
そうではなく、旅したことで自分でも気付かないぐらい少しずつ、深みのある人間に生まれ変わっている。
そう信じたいです。
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