『ぼくとフリオと校庭で』諸星大二郎

TPOなんて言葉がありますが、時と場合と気分によって読む本の選択も熟慮すべきなんですよね。

ぼくとフリオと校庭で (双葉文庫―名作シリーズ (も-09-01))

諸星大二郎先生の短編漫画集、『ぼくとフリオと校庭で』。

これを読みました。

最近の私のブログ記事を読んでくださっている方はご存知かもしれませんが。

私最近、あんまり精神的にといいますか、気分的に具合がよくないんですね。

その状況で読むにはある意味こたえる一冊でありました。

 

表題作であります『ぼくとフリオと校庭で』を始め、10の短編が収録されています。

ここでそれぞれのあらすじを紹介することは避けます。

それぞれが非常に緻密で、素晴らしい作品ばかりです。

ただ、それぞれの作品が、閉塞感に満ちているのですね。

日々の生活に疲れ、行き場のない主人公たち。

終わりのない、苦しい日常。

そんな毎日を生きる主人公たちが、たまたま見つけた異常な世界への入口をくぐってしまうのです。

しかしその先の異次元には、楽園など存在しません。

異次元とは、人の意思を無視して存在する得体の知れない世界でしかないのですね。

そんな世界に、人が安住できる余地などないのです。

 

日常に疲れた人たちが、日常から抜け出すために、異常な世界に入り込んでしまう。

時には、各人が自覚を持ちながら、やむを得ず異次元に飛び込んでしまう場合もあります。

居場所を求めて放浪する人の苦しみ、どこにも救いのない苦しみ。

それらを緻密な絵で描いた、重々しくも娯楽性に満ちた短編集です。

読むことで、ある種の異次元旅行ができるのですね。

私は読むのに少し精神力を要しましたが、人によっては、本書によって癒される場合もあるのかもしれません。

主人公たちの旅を見て、自分の生き方を振り返るということができますからね。

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