『ちいさな王子』サン=テグジュペリ
本格的にフランス文学に親しむ前に。
有名な作品を読んでみようと思ったのです。
サン=テグジュペリの『ちいさな王子』。
翻訳は野崎歓氏の手によるものです。
原著は日本でも度々翻訳され、従来『星の王子さま』の邦題で著名でした。
この訳本では、野崎氏の信念で、より原題に近い『ちいさな王子』としたそうです。
不時着した飛行士である主人公が、砂漠の真ん中でちいさな王子と出会いました。
飛行機を修理する間、王子が体験してきた旅について、対話を重ねる二人です。
王子が出会った、自分の視点にとらわれて、真実が見えなくなっている大人たち。
彼らを残念に思い、自らの思いを主人公に語る王子。
主人公は友人として王子を愛しますが、別れがやってきます。
ユーモラスで、示唆に富んだ寓話が続くので、夢中で読めるのですね。
しかし読んでいる最中に、私は切ない気持ちになってきました。
大人たちと違い、物事の真実のあり方を感じ取れる王子なのです。
そんな彼も、幸せな旅をしているわけではありません。
聡明であるはずの彼が、誤解をしたまま別れてしまった、大事な人。
王子はずっと、そんな人がいる、帰りたい故郷のことを思いながら旅している。
旅の話を語る最中、そんな寂しさを、王子は漂わせているのですね。
そして故郷に帰る旅の前には、新たな別れもあります。
主人公と王子。
二人が別れに向かう流れは、読者の心を強い悲しみでいっぱいにしてくれます。
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