『書生の処世』萩原魚雷
一人で悩んでいると、自分の悩みとか不安の原因というのは、自分だけに起こっているもののように思えます。
ところが世の中を探せば、私たちと同じ問題を抱えている人たちが、実はいるのですね。
そうすると、誰かがその問題に対処するための書籍を書いていてくれたりもするのです。
読書によって私たちの悩みが解決したり、不安を和らげたりできるんですね。
でも、読書し過ぎるせいで行きづらい人生を送ってしまう人は、どうしたらいいのでしょう?
萩原魚雷氏の『書生の処世』を読みました。
著者は古書店巡りの好きな、文筆家です。
現在まで定職につかず、文筆業とアルバイトとで生計を立てながら。
好きな読書と古書店巡りの時間を優先してきた、萩原氏。
そんな彼が、若い頃の自分への後悔も少し、にじませるように。
読書が好きすぎる故に社会に適応できない若い「書生」たちに、処世のヒントになる本を紹介してくれます。
読書にのめりこみすぎて、「読書時間が確保できないような仕事はしたくない!」という人。
読書家の中には、わりといるようなのですね。
昔なら、夏目漱石の家にいたお弟子さんたちのように、経済力のある年輩者にパトロンになってもらって読書に励む。
そんな「書生」という立場がありました。
しかし今の時代、読書偏重の書生的生き方は、実現が難しいです。
本ばかり読んでいると、得るものは大きい一方で、現実への適応能力を失っていきます。
すると、自立が難しいのですね。
そうなりがちな、若い読者たちに向けて。
書生的な生き方をしながら生き抜いてきた著者が、現実で生きる力につながる本たちを紹介してくれます。
読書偏重気味のところがある私も、感じ入るものがありました。
読書を控え、社会に適応する生き方の方が、幸せになれるのかもしれない。
でも読書好きにとって、それは非常に難しい。
そのことを自身でよく知る著者が、読書をしながら生きていく術を模索し、読者に見せてくれている。
そんな感じがしました。
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