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『「はい」と言わない大阪人』わかぎゑふ

大阪に生まれ育っておりますが、大阪というのは、まあ面白い土地ですよ。

こんにちは、金比羅系です。

ま、私の地元は郊外の住宅地でして、地付きの人よりも他府県から移住してきた人々が多いのです。

大阪味は若干薄い土地柄でしてね。

それなので、私の場合は「濃い大阪人」「コテコテの大阪人」というのが、感覚的にはいまいち飲み込めていないむきもあります。

大阪市内など大阪の伝統が強い地域に出向くと、戸惑うこともあるのですよ。

それなので、大阪人気質について、私もどこか他府県の人のような感覚で好奇心を持っています。

 

「はい」と言わない大阪人

「はい」と言わない大阪人

 

 

そうした好奇心から、この本を読みました。

わかぎゑふ氏の『「はい」と言わない大阪人』です。

わかぎゑふ氏は大阪出身の演劇人、テレビにもよく出演されていて、大阪関連本を多数書いておられるのですね。

 

著者によると、関東など他府県では人からの呼びかけに、「はい」と返事をするといいます。

「はい、わかりました」。

「はい、そうですね」。

そういう返事が一般的なのですと。

しかし著者はそうした返事は会話を途切れさせるものだと批判しています。

 

 例えば大阪弁で「このお菓子食べる?」と聞くとする。すると東京の人は「はい、ありがとうございます」と返事する。いいことなのだが、後が続かない。そういう意味ではさすが標準語、整理整頓された言葉だなと感心するが。

(本書14ページ3行目より引用)

 

しかし大阪人は、会話を「はい」で終わらせない!

 

 関西人に同じことを言うと「このお菓子めっちゃ好きやねん」とか「食べる、食べる。何これ?」という返事が返ってくる。だからその後も「あ、そんなに好きなん?」とか、「腹減ってたんかい!」などと会話は自然に続くものだ。

(本書14ページ6行目より引用)

 

どうですか?

もしあなたが関西の外の方なら、上記の文章を読んで、「大阪人うっとうしい!」と感じるかもしれません。

私の場合は、楽しいような、うっとうしいような、半々というところです。

往々にして大阪の年配の方は、初対面の人間にも親しく話しかけることが多いです。

そうするとその場限りの間柄なのに、楽しいひとときを過ごせるんですね。

年配の方だけでなく、他人の懐に飛び込むのがうまく、なおかつ他人を尊重できる大阪人というのは結構いるんです。

そういう人たちに出会うと、大阪って土地は素晴らしいな、と思えると思います。

ただ一方、大阪的な会話スタイルには、馴れ馴れしく他人の領分に土足で踏み込んでいく…そういう側面もあって。

知らない大阪人から個人的なことを根堀り歯堀り聞かれたり、いらぬお説教をいただいたりする。

これは、他府県の人が馴れ馴れしい大阪人を嫌う理由かも…と思います。

 

本書では概ね大阪の雑談スタイル、会話スタイルを「人間関係を豊かにする」良いものとして評価しているんですね。

著者は大阪人であることに、強い誇りを持っておられるようです。

ですが私は大阪人の会話の魅力を認めながらも、「どんな人にもオープンであることを強いる」、強迫性をもその人間関係に見ています。

相手に会話の持続を求めるということは、関係の強要だと思うんですね。

大阪以外の「はい、ありがとうございます」で会話を終わらせるスタイルも、他人との距離を適切に保つうえでの、ひとつの知恵です。

例えば東京のような大都会では、他人一人一人と濃密な人間関係を築いていては、心が持たないでしょう。

放っておいて欲しいときもあります。

自分だけの世界を大事にしたい人もいるでしょう。

ですから本書で礼賛される大阪人同士の距離感は、絶対視するべきではないだろうな、と思うのです。

 

ただ私たちが人恋しくなったときに、大阪人の他人との繋がりの有様というのは心の支えになるかもしれないな、という気はしています。

他人を放っておかない、おせっかい気質。

寂しそうな人、孤独に押しつぶされそうになっている人を見かけたら、生粋の大阪人は放っておきません。

「ちょっとあんた、辛気臭い顔してどないしたんや。こっち来て、私と一緒にお茶のみ」。

そういう優しさもまた、大阪人の一面であります。

本書の後半にはわかぎゑふ氏の手によるラジオドラマの脚本が収録されています。

その内容がまさに、他人を放っておかない大阪人の優しさを描いたもの。

読めば心を打たれること、間違い無しです。

大阪人と、大阪に興味のある皆様の、参考になる一冊として。

お勧めしますよ。

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「はい」と言わない大阪人

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