領主が本拠を北方の清洲の城に移してからというもの、那古野の城下は寂れる一方だ。 その那古野の、長屋が並ぶ裏路地である。 小柄な若い女が、まじめくさった顔をして歩いていく。 顔が小さくて額の広い彼女が眉をひそめている様は、どこか思慮深い猿を連想…
コーヒーをおかわりして、時子(ときこ)は落ち着いた。 町子(まちこ)もコーヒーをおかわりして飲んでいた。 食べ終わったモンブランの皿は、すでに片付けられている。 先ほど店の女性従業員が、二人が座るテーブル席に来たのだ。 彼女は空いた皿を下げな…
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