転生もの

『転生したら堕天使だった、私にはお似合い(中編)』

白美(しろみ)は、女性の語りを聞き終えた。 ところどころ事情の理解の難しい点はあったが、要約すれば、女性は自分が許せなくなった。 そういうことだ。 失敗を重ねたり、人を傷つけたりして、自分が嫌になった。 それだけなのだ。 莫大な借金を抱えている…

『転生したら堕天使だった、私にはお似合い(後編)』

雑居ビルの玄関は、両開きのガラス扉だった。 色の濃い分厚いガラス戸で、建物の内側はうっすらとしか見えない。 白美(しろみ)がおそるおそる中の様子をうかがっていると、脇から人の気配が近づいた。 「あんた、うちに何の用や」 見ると、大柄な男だ。 表…

『転生したら堕天使だった、私にはお似合い(前編)』

毎朝乗る通学電車の中。 白美(しろみ)はロングシートの端に座っている。 座席は全て乗客で埋まり、通路と入り口付近に立つ人も多かった。 白美の自宅から最寄りの駅はこの路線の始発駅にあたるので、彼女は毎朝座席に着くことができた。 始発駅近辺の新興…

『転生したら森の中、反省』

研二(けんじ)は、こっちが青だろが、と抗議のつもりでドライバーの顔を見た。 だが相手が悪かった。 フロントガラス越しに見えた。 人相の悪い中年の男。 眉間と口元を歪めて、邪魔だ、と威嚇している。 ひき逃げ上等の価値観なのだ。 研二は、目を見開い…