『手間のかかる長旅(046) 時子は外のベンチで一人食事する』

翌日の昼、時子(ときこ)は一人でいる。

公園のベンチに座っている。

北風が身に冷たい。

彼女の傍らに町子(まちこ)はいなかった。

町子は後ほど、美々子(みみこ)とは別のグループの友人の一人を連れて合流することになっている。

お昼には間に合わないので先に済ませてくれ、と言われていた。

それで、今日も時子は弁当をつくってきたのである。

ランチジャーに詰めてきたのだ。

体の温まるものが食べたかった。

豚の甘辛焼き、煮豆、きんぴらごぼうをつくってきた。

きんぴらごぼうには、唐辛子入りのこんにゃくを使ったので、辛いはずだ。

春雨と白菜を使ったしょうがのスープも容器に詰めている。

しょうがを食べれば体が温まる、と聞いてあやかったのだ。

もうはやく食べちゃおう、とおなかのすいた時子は思った。

ベンチの脇に置いたバッグからランチジャーを取り出した。

容器を横に並べた。

それぞれふたを開ける。

ナプキンを揃えた膝の上に敷いて、容器を取って置いては食べた。

自作の弁当は、なかなかの出来だ。

箸が進む。 時子は、ぱくぱくと食べた。

町子が横にいないので、少し寂しい。

会話がないと、食べることに集中するほかなくなる。

しょうがの利いたスープを飲むと、なんだか体が温まるような気がした。

寒い中でも、時子は落ち着くことが出来た。

午後からどうするかは町子から聞かされていないが、おそらくまたあの喫茶店で会合なのだ。

昨日は美々子と東優児(ひがしゆうじ)を巡る一件で後味の悪い思いをしたので、今日は楽しくできるといいな、と時子は思った。

なんとなく、あの喫茶店のケーキのことを考えている。

昨日彼女は町子からモンブランをひと口もらって食べたが、美味しかったのだ。

あの喫茶店でケーキを手作りしているということは考えられないから、きっと近くに美味しいケーキ屋さんがあって、そこから取り寄せているのだろう。

時子は自分でケーキを買って食べる習慣がないので、美味しいケーキを食べる機会があるとかえって感動することが多いのだった。

今日も弁当は手作りで済ませてお昼の出費は抑えることができた。

それなので、午後にはケーキとコーヒーのセットを注文してみようかな、などと時子は夢想している。

風は冷たくベンチの上の時子に吹きかかってくる。

手作りの弁当の温かみとケーキとコーヒーの夢想にすがって、時子は寒さを乗り切った。

弁当を綺麗にたいらげた。

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