『戦国関東の覇権戦争 北条氏VS関東管領・上杉氏55年の戦い』黒田基樹
最近私の中で、関東の戦国大名、北条氏への関心が深まっておりまして。
北条氏、渋いですよね。
で、そう言えば北条氏関連の新書を持ってたな~と思って本棚を整理してみたんですね。
黒田基樹氏の著作『戦国関東の覇権戦争 北条氏VS関東管領・上杉氏55年の戦い』です。
本書では北条氏を主役に、彼らに対立する関東管領上杉氏、関東各地の「国衆」など各勢力の動向を時系列で追っています。
一般に戦国時代と言いますと、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の「三英傑」の印象が強いですね。
ところが著者は「戦国時代の始まりも終わりも、実は関東の動向が基準になっていた」と語ります。
関東には足利氏の支流である関東公方と、その関東公方の補佐の名目で実質は関東を支配していた上杉氏が、中心的な権力として存在していました。
室町幕府を中心とする秩序で治められていた畿内とは、また違なる政治の構造があったのです。
その関東に畿内から北条早雲(伊勢宗瑞)が進出し、北条氏は上杉氏に代わる新たな支配者となります。
さらには、上杉氏から関東管領の名を継いだ越後国の長尾景虎が介入し、関東の争乱が激化していきます。
支配の名目を持った既存の支配者を新参の挑戦者たちが倒して成り代わる、いわゆる「下克上」は畿内ではなく関東で先んじて行われていたのですね。
この関東の争乱をなぞるように、畿内でも室町幕府の秩序を揺るがせる下克上の戦いが頻発していったのです。
久しぶりの再読だったのですが、北条氏上杉氏らの大名の他にも数多くの武将の名が登場し、少し混乱しました。
例えば、江戸城を築城したことで有名な太田道灌の子孫として、太田氏がいます。
彼らは岩付太田氏と江戸太田氏、という風に分かれてまして、本拠地が別なんですね。
武田信玄を苦戦させたことで著名な長野業正の箕輪長野氏の場合も、他に厩橋長野氏という別家があったり。
この人たちがそれぞれ、一方は北条氏の傘下につき、一方は上杉氏の傘下につき、という具合でややこしいんです。
そもそも上杉氏自体が、北関東にいて関東管領だった山内上杉氏と、南関東にいた扇谷上杉氏、という風に別の勢力なのですね。
こうした各勢力の思い思いの動向を追っていますので、慣れない人が読むと戸惑うかもです。
関東の戦国大名と諸勢力に多少知識のある人ですと、「へえ、そんな武将がいたんだ」という発見があって、かなり楽しめると思います。
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