『河原ノ者・非人・秀吉』服部英雄
骨太な読書になりました。
|
服部英雄氏の著作、 『河原ノ者・非人・秀吉』です。
室町から安土・桃山時代にかけて、社会を支える一翼を担っていた被差別階級の人々。
さらには、その被差別階級に一時的に属しながらも、日本の支配者に上り詰めた権力者、豊臣秀吉。
中世の社会の一端を描く、大部であります。
最近私、戦国時代を舞台にした小説を書いているんですね。
それで、関連の書籍を諸々あたっているわけなんです。
戦国時代と言えば、俗に言う三英傑。
時代を代表する偉人として、この三人が筆頭に来ますよね。
なかでも豊臣秀吉という人物は、「低い身分から出て天下人となった出世頭」として。
庶民からの人気の強い人物です。
この秀吉、私たちが想像する以上に貧しい、苦しい境遇から身を立てていたのですね。
本書で、その辺りの彼の境遇が明らかにされます。
江戸時代には人の身分には、士農工商と定められていて。
なおかつ、その下に置かれた被差別階級がありました。
ところが江戸期以前の戦国時代には、その身分の縛りは流動的なものだったのですね。
もともと尾張国の土豪の生まれで、かろうじて下級の武士だった豊臣秀吉。
本書によると、彼は家庭的に不幸な境遇のせいで、生きるため一時的に。
「非人」の立場に属することになったらしいのです。
しかし彼はその後、織田信長の配下武将として出世し、天下人にまでなりました。
戦で勝つことが、武士の命運を分けた時代です。
皮革産業など、武具の生産に関わる人々が、とても重要な役割を占めたのですね。
秀吉のように、そうした被差別階級の人々と関わりを持つ人物に、出世のチャンスがあった時代でした。
天下人に上り詰めた秀吉ですが、その天下も彼の一代で終わりを告げます。
由緒ある家柄の大名たちは、度々に渡り、天下人秀吉の出生の境遇を問題にしました。
「江戸時代よりも自由だった戦国時代」の気風の下でも、人の意識を覆すことは難しかったのです。
価格:3,080円 |