『手間のかかる長旅(004) とても素早いウェイトレス』

他に客のいない喫茶店で、時子(ときこ)も町子(まちこ)も待ちくたびれている。 一人だけいる従業員らしき男性はカウンター席に座り込んで、注文を取りに来ない。 水も出ない。 何分も待たされたので、時子はもう男性にこちらから声をかけてしまおう、と息を吸い込んだ。 「すみません、お待たせしました」 慌しくテーブ…