『手間のかかる長旅(008) 鼻歌の生まれる才能』

河川敷は苦手だ、と思いながら時子(ときこ)は町子(まちこ)を伴って土手の上を歩いていく。 うつむきがちである。 代わって町子は食事を終えてからこれまで、野良犬の一件を経ても代わらず上機嫌でいる。 よく空を見上げるし、土手下の河川敷にも目配りぬかりない。 時々鼻歌を歌ってさえいた。 時子の知らない曲である…