『手間のかかる長旅(012) 言を違える友と野良犬』

背中で引きずられる感覚と、自分の悲鳴。 時子(ときこ)は全身でもがいた。 もがきながら目を覚ました。 体が下にずるずると引きずられていく。 「やっ」 視界のいまだはっきりしない目を足元に向けた。 足元に何かいる。 犬だ。 野良犬が時子の下手に体を潜ませている。 傾斜に四肢を踏ん張り、そのうえで時子の右の靴先…