『手間のかかる長旅(015) 土手の斜面でがんばる』

時子(ときこ)がいくら叫び、にらんでも、土手の上から見下ろす警官は動じない。 時子は絶望的な気持ちになった。 「いったい私にどうしろって言うんですか」 低い声で問うた。 警官が舌なめずりした、ように時子からは見えた。 「一緒に来てもらう」 「どこに…」 「どこでもいい。こっちに上がってきなさい」 警官は高圧…