『夜明け前に来る不審なもの』

騒々しい音に惑わされて、目が覚めた。 辺りはまだ暗い。 夜明け前だ。 ぶいいいん、と何かが細かく振動するような音が続いている。 カーテンを閉めた窓の外から聞こえてくる。 よほど大きな音なのだ。 菊江(きくえ)は、窓に近づいた。 カーテンを少しだけ動かして、小さな隙間をつくった。 二階の窓越しに外をうかがう…