『手間のかかる長旅(016) 時子と警官、暗闘』

時子(ときこ)はじっと相手を見た。 警官は顔色を変えてこちらを見下ろしている。 彼は感情的になったのだ。 今いる場所から動こうとしない時子に、感情を動かされたらしい。 「さっさと上がってくる」 警官の怒声が降り注いだ。 普段の時子であれば、恐れおののいて、威圧する相手の命令に容易に従っていたかもしれない…