『拳児』松田隆智、藤原芳秀
香港に旅行に行きたいわけなんですよ。
私のこれまでの人生で、各種ゲームとか『深夜特急』のようなエッセイなどで香港について知りまして。
興味を高めてきた経緯があるのですね。
でも最近思い出したんです。
香港だけでなく、中国とか台湾とか中国語圏の世界そのものに興味を持つようになったきっかけがですね。
他にもあるのです。
かつて少年サンデーで連載されていた漫画、『拳児』です。
松田隆智氏は近年亡くなられましたが、中国武術研究家として著名な方でした。
主人公である拳児少年の祖父は、中国で「八極拳」という武術を学んだ達人です。
やがて成長した彼は、八極拳を極めるために台湾、香港を経由して中国の内陸部への長い旅に出ます。
私、学生時代にこの漫画の単行本読んで、ファンでした。
幼少期にはやんちゃ坊主だった拳児が、成長して人格に優れた若者になるわけなのです。
ところが、彼につきまとう凶暴なライバルとの終わりない戦いの中で、優しい拳児も度々理性を失いそうになります。
武術家として強くなることと人として道を踏み誤らないこと、これらを両立するうえで葛藤があるんです。
葛藤する拳児の理性を保つのが、戦いの手段であるはずの、中国武術の中にある教えなのですね。
戦いの手段としてでなく、人がよく生きる方法としての武術の意味が、作中に描かれています。
この漫画、主人公の優しさが際立っていて、読んでいて嫌な気持ちにならない作風なのです。
また、物語の背景に中国文化の存在感もあって、中国への興味を刺激されるんです。
旅要素も強いですね。
武術をテーマにしているので多少暴力描写もありますが、基本的に誰でも安心して読める作品だと思います。
中国武術と中国旅に興味のある方に、おすすめします。
私も、この作品がきっかけのひとつになって、今香港に行きたくなってるのです。
香港に行って、中国武術の現場を見る機会もあれば、嬉しいですね。