2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

旅人に御利益の聖域、方違神社

皆様こんにちは。 お元気ですか? ここしばらく小説ばかり書いていました、金比羅系です。 今日は、お正月を前にして神社にお参りに行ってきましたよ。 目的地は、大阪府は堺市にあります、「方違神社(ほうちがいじんじゃ)」です。 「方災除け」といいまし…

『自室でゾンビ化、とがめる人もなく』

とうとう俺もゾンビになってみよう、と隼人(はやと)は思った。 と言うのもつい最近、彼はゾンビの街に行く機会があったのだ。 彼は宅配ピザの配達の仕事をしている。 依頼があって、ピザを届けにゾンビの街に出向いた。 そこで彼は、屋外にあふれて、ゾン…

『子供たちがトマトを無駄にする』

川向こうからトマトが飛んでくる。 熟した柔らかいトマトだ。 それはジュゼッペの足元近くに落ち、景気よく路面に四散した。 赤い痕跡を残す。 ジュゼッペが履いているジーンズにも破片が及び、トマト汚れができる。 「やめろ」 彼は川向こうに怒鳴った。 さ…

『住宅地で味わう、坂転がり体験の娯楽』

長さおよそ1キロにわたる、長大で、かつ傾斜のきつい坂が眼下に延びている。 その傾斜の角度はほぼ90度である。 見下ろしていると、ひとりでに体が前のめりになり、坂を転がり落ちてしまいそうな錯覚に陥る。 こんな急な坂が一般の住宅地内にあっていいのか…

『手間のかかる長旅(048) 勘に優れる友人の所見』

アリスは目を細めてカウンターの方に視線を送っている。 「怪しいと思ったが幽霊なら仕方ないにゃ」 口元でつぶやいた。 彼女がこの店を嫌ったらどうしよう、と時子(ときこ)は心配になる。 この店を知ってからまだ四日目だが、時子は居心地がいいのだ。 友…

『濡れ衣で絡まれる』

繁華街で、通りがかりの男とすれ違いざま、義雄(よしお)は襟首をつかまれた。 「やっぱりお前じゃないか、この野郎」 人の喉元を締め上げながら、目を剥いてにらみつけてくる。 年齢は不明である。 頭をつるつるに剃り上げていて、若いのだかそれなりの年…

『手間のかかる長旅(047) 寒がりの友人を連れて喫茶店へ』

しょうがを使った手作り弁当を食べたおかげで、体が温かくなってきた。 元気が出る。 時子(ときこ)は気分が良かった。 これから町子(まちこ)ともう一人の友人に会うことになっている。 今日は何にも心配することはない、と気楽にかまえた。 「寒いところ…

『夕暮れ時に迷う路地』

知らない街をやみくもに歩いていたら、いつの間にか迷子になっていた。 当然、土地勘はない。 この土地には、見たことのない風景を見ようと思って日帰りの旅に来た。 道に迷って今、見ている風景は、確かにこれまで見たことのないものだ。 だが、それを楽し…

『夕食のための徒労』

買い物に行って買うべきものを買わないまま、買わなくていいものばかり大量に買って帰ってきた。 「ああ…」 店で買い物をしながら、真理(まり)は自分でも何かが足りないと思っていたのだ。 それで思いつくままに、目的のものではないかと思われるものを次…

『空の上でも人間は一緒』

こんな辛い思いをするのなら、搭乗前にやたらに飲み物を飲まなければよかった、と思っている。 「知識があるのとないのとでは大違いですよね」 隣の席で、私と肩を並べるよしやんが上機嫌で喋っている。 よしやんは私の後輩だ。 私より5歳若い女性だ。 私た…

『楽しいゾンビの人の街』

薄暗い夜の街が、人の影であふれ返っている。 青白い人々の顔が、わずかな街灯の明かりに照らされて闇の中に浮き上がっていた。 誰もが目を閉じたまま、両手を前に突き出している。 開けた口から唾液を滴らせながら、歩き回っている。 徘徊している、と言っ…

『手間のかかる長旅(046) 時子は外のベンチで一人食事する』

翌日の昼、時子(ときこ)は一人でいる。 公園のベンチに座っている。 北風が身に冷たい。 彼女の傍らに町子(まちこ)はいなかった。 町子は後ほど、美々子(みみこ)とは別のグループの友人の一人を連れて合流することになっている。 お昼には間に合わない…

『脈絡を断ってうろうろする日』

脈絡は無いがうろうろしよう、と今日子(きょうこ)は思った。 今までうろうろするのに脈絡を求めすぎた。 そうやって何かにすがるような気持ちでうろうろするから、うろうろの生の味がわからなくなるのだ。 そう思って土曜日の朝。 あまり使ったことのない…

『瞬殺猿姫(1) 猿姫うつけ殺し』

領主が本拠を北方の清洲の城に移してからというもの、那古野の城下は寂れる一方だ。 その那古野の、長屋が並ぶ裏路地である。 小柄な若い女が、まじめくさった顔をして歩いていく。 顔が小さくて額の広い彼女が眉をひそめている様は、どこか思慮深い猿を連想…

『手間のかかる長旅(045) コーヒーのおかわりは気持ちを落ち着ける』

コーヒーをおかわりして、時子(ときこ)は落ち着いた。 町子(まちこ)もコーヒーをおかわりして飲んでいた。 食べ終わったモンブランの皿は、すでに片付けられている。 先ほど店の女性従業員が、二人が座るテーブル席に来たのだ。 彼女は空いた皿を下げな…

『雨の日の重い傘』

急に傘の上に、重い雨の塊が降り注いできた。 尋常ではなく重い。 今日子(きょうこ)は、傘の軸を、慌てて両手で抱えた。 彼女の顔に陰が差している。 先ほどまでは、そんなに暗くなかった。 まだ昼下がりなのだ。 見上げると、傘の上に、何か日光を遮るも…

『ハンバーガーを食べさせない』

たまにはハンバーガーを食べよう、と思って義雄(よしお)はハンバーガー店に来た。 店舗の近くに来ると、人だかりができている。 集まった人たちが、店舗入口に殺到していた。 なんでさっさと店内に入らないのだ、とあやしく思いながら義雄は群集に近づいた…

『日常の悪徳、開き直る悪党』

丸顔を険しくしかめて皺だらけにした中年女性が、前かごのついた自転車に乗って向こうから来る。 私のそばまで来て、突然何事か早口な怒鳴り声をあげた。 ブルドッグが吠える声さながらだ。 自分が怒鳴られたか、と思ったがそうではない。 彼女を追うように…

『手間のかかる長旅(044) 企み後の、良心の呵責』

町子(まちこ)は上目遣いに東優児(ひがしゆうじ)を見ている。 先ほどまでは、悪徳警官ばりの尋問ぶりだったのだ。 物を頼むときだけそういう態度かと内心、時子(ときこ)は町子に憤慨した。 だが時子も町子にそうした目で見られて頼られたときには嫌とは…

『酔って深夜の大立ち回り』

人が酒に酔っているのに、後ろから妙な音を出す乗り物に乗って追いかけてくる。 「歩け歩け」 飲み会帰り、こちらは深夜の住宅地をほろ酔い加減で歩いていたのだ。 自宅まであとわずか、という場所だった。 時間も時間で、私のほかには歩いている人は見当た…

『林道を集落まで歩く』

ぼやぼや歩いている間に、山奥に来てしまった。 林の間を縫って、半ば獣道のような、草木にあふれた林道が通っている。 道の幅は、あってないような程度の幅だ。 車も通れない。 長太(ちょうた)はそんな道を、狐に化かされたような気持ちで歩いている。 歩…

『手間のかかる長旅(043) 美々子の弱みを聞き出しにかかる』

美々子(みみこ)の交際相手は、東優児(ひがしゆうじ)だった。 それを優児から聞き出したはいいが、彼は泣き出していて、それ以上の追求は難しい。 美々子の弱みを聞き出す状況ではなさそうだ。 と、時子(ときこ)は思った。 「まさか、東さんが相手だっ…

『いてはいけない異国の虫』

庭先で、フンコロガシが野生動物の糞を転がしている。 今日子(きょうこ)はしゃがみ込んで、じっとその様子を見守っている。 コガネムシに似た、丸くて小さな外見の甲虫である。 逆立ちし、前足を地面に張って体を支え、後ろ足で自分よりも大きな糞の塊を転…

『遅刻しそうなガラス片の上』

歩道の上に、ガラスの破片が大量に散らばっている。 誰が散らかしたんだ、と真理(まり)はいらだった。 学校に遅刻しそうになっている。 朝から家で母と喧嘩して、出てくるのが遅れたのだ。 走って学校へ向かう途中なのに、路上がガラス片だらけである。 危…

『手間のかかる長旅(042) 世の中には意外なことが多い』

時子(ときこ)が優児(ゆうじ)の顔に視線を戻すと、彼は時子に目を合わせて困ったような笑みを顔に浮かべている。 恥ずかしくなって、時子は手を優児の手の上からのけた。 深い意味はなかった。 ただ、状況に飲まれたのだ。 優児にうがった見方をされたら…

『鉄橋を渡らせまいとする若い女性』

ふいのことだった。 「そこを渡るのはいけません」 後ろで小さな声がする。 小さいが、自分が言われているらしい。 義雄(よしお)は踏みおろしかけた右足を、空中で止めた。 田園地帯から、隣接する住宅地内に入るため、小川にかかる鉄橋に足を踏み入れると…

『手間のかかる長旅(041) 耐える優児と、大胆になる時子』

町子(まちこ)は居住まいを正して、怖い顔になった。 「東さん、率直に言いますね」 向かい側の席の東優児(ひがしゆうじ)を見据えた。 「私、あなたにいろいろ聞かれてもブログに載せてる以上のことを答える気はありません。呼び出しておいて悪いですけど…

『チャジャン麺をたいらげる大食いの子供』

近所に大食いの子供が住んでいるらしいと聞いて、パク・ジョンスは見に行くことにした。 なんでもその子供は、テレビ番組で紹介されたのだそうだ。 子供は、カメラの前でチャジャン麺を大人三人分たいらげたという話だ。 ジョンスはいわゆる「びっくり人間」…

『夜明け前に来る不審なもの』

騒々しい音に惑わされて、目が覚めた。 辺りはまだ暗い。 夜明け前だ。 ぶいいいん、と何かが細かく振動するような音が続いている。 カーテンを閉めた窓の外から聞こえてくる。 よほど大きな音なのだ。 菊江(きくえ)は、窓に近づいた。 カーテンを少しだけ…

『熊殺しと異常な五人』

どこかで見たような奴が前のめりになって、覚束ない足取りで歩いている。 大きな男で、頭から血を流していた。 学生だ。 学生服の黒い上着が、ぼろぼろである。 前がはだけて、白いシャツと胸板がのぞいている。 歩き方も頼りない。 意識朦朧としているのか…