2016-01-01から1年間の記事一覧
竹薮の中で猿姫(さるひめ)は、忍びの女である一子(かずこ)と対峙している。 一子は猿姫の心を迷わせる言葉をかけてきた。 織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)たちと同道することが、いかに猿姫のためにならないか。 語りかけて、彼女に忍びになるよう…
時子(ときこ)は座ったまま不安な面持ちで、横に座るアリスを眺めている。 アリスは上の空で、目の前の本尊に視線を向けていた。 彼女は少し前に、この本堂に泊まりたいと漏らした。 時子には寝耳に水の話だ。 面接の帰りに、時子はちょっとした寄り道のつ…
無人島での生活。 乗っていた客船が難破して、流れ着いた。 それ以来、この島で助けを待ちながら暮らしている。 それも、もう長い。 数年に渡っている。 いつでも、生活用品など、物に不自由している。 生きていくのがやっとで、季節の移り変わりには無頓着…
棒の切っ先を、いつでも相手の喉元に突き立てられるように。 猿姫(さるひめ)は、棒を構えて腰に引きつけている。 目の前に立つのは、忍びの女、一子(かずこ)。 月明かりの下に、素顔を晒している。 「貴様と取引することなどない」 答えながら、ひと息に…
絨毯の敷かれた床の上に、時子(ときこ)とアリスは座り込んだ。 目の前には本尊の威容がある。 二人で、この本尊を眺めている。 如意輪寺の本堂の中は、天井にランプ照明が灯っているばかりで薄暗く、静かだった。 外では境内を吹く風の音がしている。 しば…
如意輪寺の境内にいる、時子(ときこ)とアリス。 夕暮れどきの寒さの中で、二人はお寺の建物に入ることにした。 たとえ寒くても、もうさっさと帰ろう、という気は二人にはなかった。 先ほど、食品工場での面接で即日採用を告げられたばかりで、気持ちが高ぶ…
一行の主である、織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)。 彼は、しきりにうなずいていた。 「下総守殿が仰せられる通り。国の強さとは、民の強さ。我ら武家は、あくまで民を陰ながら主導する者であるべきでござる」 先の、神戸下総守利盛(かんべしもうさの…
面接を終えた後の、リクルートスーツ姿のまま。 時子(ときこ)とアリスの二人は、その寺の山門の前に立った。 森の中の広い敷地を、土塀が囲んでいる。 その土塀の最中に、古くて大きな山門があった。 年季が入った木造の建築である。 その山門には「如意輪…
念のため、工場最寄りのバス停で時刻表を確認したが、帰りのバスは遅くまである。 もう夕暮れ時だが、例の寺に行ってしまおう。 時子(ときこ)とアリスは、そう語り合った。 例の寺。 それは以前、アリスがテレビ番組の仕事でロケをした寺である。 今二人が…
私は怒鳴り声をあげている。 「おい、酒だ!酒がないぞ!どうして買っておかねえんだ!」 目を吊り上げて、怒鳴る。 しかしこれで私も、俺はどうしようもないのんだくれおやじだ、と自分でもわかっている。 「おい、聞いてるのかよ。酒だよ!」 返事をしてく…
先週末、大阪市内を散策してきたのです。 私、大河ドラマの『真田丸』見てましてね。 今週の日曜日、その『真田丸』も最終回を迎えます。 それに先駆けて、『真田丸』と「真田幸村」ゆかりの史跡を見て、真田丸の空気を体感しようと思ったのですね。 南海電…
時子(ときこ)とアリスは、二人でバス停に立っている。 面接を終えて、時子は放心状態だった。 「大丈夫?」 アリスが気遣ってくれる。 だが、当の時子はうなずくのがやっとだ。 余裕で面接を潜り抜けたアリスには、わからない気持ちだろう。 本当に、辛か…
炊飯器の中に、トマトを浮かべました。 なんでも、「トマトごはん」が美味しい、という噂を聞きまして。 通常通り、研いで水にひたしたお米の上から、塩胡椒、オリーブオイル、そしてトマトを加えます。 この状態で、ご飯を炊くんですね。 そうするとトマト…
食品工場内のオフィスにある、応接室である。 突然入口の扉が開いて、辛抱強く待つ時子(ときこ)とアリスを驚かせた。 ソファから腰を上げるアリス。 彼女に習い、時子も半ば反射的に立ち上がった。 応接室の中に、三人の人物が入ってきた。 いずれも、男性…
午睡を取る。 ぐうぐうぐう。 昼日中から。 午睡を取っている。 世間体を気にする神経があれば、できない芸当だ。 「見てお母さん、あのおじさん寝てるよ」 「しっ、起こしちゃうでしょ」 私は眠りが浅いので、道行く人々の後ろ指さす声も聞こえてしまう。 …
時子(ときこ)は不安な気持ちでいる。 工場の建物に入り、玄関口で履物を脱いだ。 スリッパに履き替えて、アリスと二人、階段を登る。 面接会場である事務所は、建物二階にあるようなのだ。 二階に来た。 事務所入口前に、「入室前にアルコール消毒してくだ…
いつの頃からか、時間の感覚がなくなっている。 異次元に住む宿命である。 それなので、どのタイミングで仕込みを始めればいいのか、見切りが難しい。 それでも客が来る予感さえあれば、彼は仕事を始めるのだ。 各種のタネを衣にからめる。 鍋の中の熱した油…
職業安定所で見つけた食品工場の求人に即日応募して、その翌日。 時子(ときこ)とアリスは、バスの車内で座っている。 二人とも、普段着慣れないスーツ姿で身を固めていた。 バスは郊外に向かっていた。 郊外には工場地帯があって、そこに件の食品工場もあ…
猿姫(さるひめ)たち一行は、神戸城本丸の御殿から脱出した。 城主である神戸下総守利盛(かんべしもうさのかみとしもり)を連れている。 彼を守るように、先頭に猿姫と織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)。 殿に蜂須賀阿波守(はちすかあわのかみ)が立…
昼時、職業安定所から出て、時子(ときこ)はアリスと連れ立って歩いた。 結局、応募したいと思える求人には出会えなかった。 「明日も来ようね」 落ち込んでいる時子に、アリスは横から静かに言った。 彼女も、これと言った求人は見つからなかったらしい。 …
以前より、自分自身をミーハーだミーハーだって再三言ってますが。 流行りものに飛びついてしまうことに、照れもあるんですね。 でも新しいものって、やっぱり面白いですから。 自分の心に忠実になれば、おのずとミーハーになってしまうのですな。 そうやっ…
目から鱗、なんてよく言いますよね。 戦国時代関連の新刊本を読むと、そういう発見をする機会が多いです。 戦国の陣形 (講談社現代新書) 作者: 乃至政彦 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/01/20 メディア: 新書 この商品を含むブログ (7件) を見る 読み…
今日は何もいいことがなかった。 うどんでもすすって、早めに寝よう。 そう思って家の冷蔵庫をのぞいたのだが、うどんがなかった。 今朝までは、確かにうどんが三玉、そこにあったのだ。 そんな馬鹿な、と思った。 私が買って入れておいたのである。 私が食…
回転寿司の、「無添くら寿司」で食事する機会に恵まれたんですね。 それでもう、お寿司食べる気満々だったのです。 しかしお店に入って席につくと、妙なものがありまして。 回転寿司店なのに、新メニューで牛丼を出しているんです。 なんとも場違いな取り合…
世間では「盛る」、と言って。 ある出来事について、実際よりも大きくふくらまして話す人がいるらしい。 私はファーストフード店の店内にいる。 テーブル席にいる。 脂っこいハンバーガーとフライドポテトに飢えてここに来た。 ポテトをちまちま一本づつ紙容…
駄目だ。 水を飲んでも飲んでも。 酔うことはできない。 水道水にはアルコール分が入っていないのだから、当然だ。 酔いたい気分の私の手元に酒がない。 どこかに、アルコール分の入った水が出てくる蛇口はないものか。 そう思い私は、アルコール分欲しさで…
昼食をとろうと思ったのに、変な店ばかりだ。 外出先、とある街の駅前。 駅前のロータリーを取り囲むように、飲食店が何軒か並んで立っている。 しかしここが、変な店ばかりなのだ。 「タイ式精進料理店」だの「ダイエット食品レストラン」だの「野草粥専門…
私、大河ドラマで毎週欠かさず見てるのって、今の『真田丸』が初めてなんですよね。 戦国時代、安土桃山時代の人物には詳しいつもりだったのですが。 改めて大河ドラマを通しで見ると、「この人のこと、よく知らない」という人物にも出会うわけなのです。 そ…
朝から、えらい目に遭いまして。 というのも、出たんです。 あれが。 Gが。 夏場によく家の中に出るあの昆虫が今朝、もうすぐ冬にならんとするこの季節に。 私の枕元に出没したわけなんですね。 早朝、目覚めた私です。 ベッドの中で、うつ伏せになっていま…
お天気はよくなかったのですけれど、出かけたかったので出かけたのです。 今日は南海電鉄の難波駅駅前にやってきました。 どこへ行くというあてもないのですが。 何となく、都会を歩きたかったのですね。 御堂筋沿いにしばらく北へ歩いてみようと思います。 …