『Economics:The User's Guide』Ha-Joon Chang

お金が欲しい。

日々そんな思いでいるのですが、どこかにお金が落ちてないものですかね。

Economics: The User's Guide

お金のことが頭から離れなくなったので、こんな洋書を読みました。

ケンブリッジ大学で経済学を教えている先生、Ha-Joon Changの著書です。

経済学の入門書であります。

資本主義の歴史に始まり、経済学の各学派について。

さらには、いかにして今の世界での生き方に経済学を活かすか、など。

平易な文章でつづられています。

 

本文中に経済学、貿易分野等の専門用語は多少使われています。

でも経済学の参考書で使われるような数式は一切出てきません。

特定の状況を表現するのに、有名映画の場面等エンターテイメントを例えに使ったりと。

真面目な本ですが、堅苦しくはなく、面白くて読みやすいです。

 

著者は出身地の韓国、それから日本、欧州、アフリカ、南北アメリカ等々。

世界中で起こった事象を話題として取り上げます。

経済学の研究対象を求めると、世界の隅々にまで視野が広がっていくのですね。

「経済学とはこの世の全てを扱う学問」という文中の言葉が、印象的でした。

お金だけを追い求める学問ではないのですよ、経済学は。

人がよりよく生きることを目指すための学問なのですね。

この本を読むことが、そんな経済学的視野を得るきっかけになると思います。

お金はそうそう落ちていないかもしれませんが。

他の価値ある何かが、そこらじゅうに落ちているかもしれません。

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Economics: The User's Guide

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『Stargirl』Jerry Spinelli

今日、こんな本を読みました。

再読でして、今までにも二回ほど読んでいます。

Stargirl

 

Jerry Spinelliさんの著書、"Star Girl"です。

アメリカ児童文学の名作です。

洋書多読のファンの間では、わりと知られた本だと思います。

 

アリゾナ州の田舎町、ミカに暮らす男子高校生、Leoが主人公なんですね。

彼が通うミカ高校にある日、転校生がやってきます。

その名も、"Stargirl(本名はSusan、でも彼女はStargirlを自称し、家族もそう呼ぶ)"!。

ペットのネズミCinnamonを肩に乗せて、ウクレレを弾きながら学校に現れるStargirl。

天真爛漫で破天荒、そして底なしのパワーと優しさとを持った女子生徒です。

奇抜な振る舞いが多く学校には馴染めませんが、彼女は気にしません。

マイペースに、めいっぱい自分らしく生きるStargirl。

Leoは次第に彼女に惹かれていきます。

しかし、生徒たちを縛る「学校のルール」から自由にはなれないLeo。

そのルールから逸脱したStargirlと一緒に過ごすことには、大きな苦しみが伴うのでした。

 

近年は日本でも「スクールカースト」なんて言葉が浸透するようになってきました。

学校のクラスの中に、暗黙の上下関係の規定を含めた、ルールが存在するのですね。

この"Stargirl"も、アメリカの学校の、生徒たち同士の厳しいルールを背景にした作品です。

「学校ではこう振舞うべき」という、暗黙のルール。

それを全く守らない、魅力的な転校生が現れたとき、学校はどうなるのか。

共同体のルールから自由になれない主人公と、自由なStargirl。

お互い惹かれ合いながらも、学校で爪弾きにされることが怖いLeo。

Stargirlは魅力的だけれど、彼女と付き合うことに葛藤があるのですね。

 

この二人の友情の行方を描いた、悲喜劇であります。

終盤の展開に、涙もろい人は、泣いてしまうと思います。

私は泣いてしまいました。

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Stargirl

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『Dave Barry Does Japan』Dave Barry

日本は外国人からどう見られているのか?

気にする人は多いみたいです。

ただどう見られているのかを知ったところで、その結果を活かすも殺すも日本人次第ですよね。

Dave Barry Does Japan

コラムニスト、Dave Barryによる日本滞在記、『Dave Barry Does Japan』です。

取材として家族と共に3週間、日本に滞在して見聞きしたことを若干辛口のユーモアと共に記しています。

 

日本関連の洋書としては、結構有名な本のようです。

文章のところどころでジョークを仕掛けてくるスタイルで、笑いを誘います。

辛口ですし、また笑いの対象にされているのが日本と日本人の諸々なので、日本人が読むと微妙な気持ちになりそうなところですが、そうはなりません。

どれだけ辛口ではあっても、笑いの対象を貶めるようなことは言っていないのです。

日本と著者の母国アメリカとを比較して「こういうところはうちが勝ってる!」みたいな記述も多少はあるのですが、日本と母国のどちらが優れているか、などという結論も出しません。

日本の奇妙な実態を笑いのネタにしながらも、尊重しているのですね。

電車の中で成人向けポルノ漫画を堂々と読むビジネスマン、広島平和記念式典の諸々についてなど、日本人として耳が痛かったり感情的になってしまう話題についても言及されているのです。

式典の日に広島を訪ねた章ではアメリカ人である著者も若干感情的になったものと見えて、ふざけまくっている他の章のスタイルからすると異質な文章になっています。

ではあっても、彼が日本という国に対して礼を失しないように努めているのが読み取れました。

 

ふざけまくった文章で人を笑わせるスタイルながら、物事をよく観察し、本質をとらえようとする著者の姿勢です。

彼に対して、尊敬の念が湧きます。

おそらく日本滞在中に不愉快な思いもしたと思うのですが、それを愚痴るようなこともありません。

日本の優れたところは賞賛しながら、奇妙だと思ったところは下品にならない程度に辛口な笑いを持って描写する。

優れた書き手だと思いました。

日本が外国人からどう見られているかの参考になります。

また私たちが海外の様々な国に、いかに礼をもってなおかつ面白がりながら接するか、その手本にもなります。

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『The Interpreter』Suki Kim

私、海外のコリアンタウンですとか韓国人コミュニティについて関心がありまして。

それでそれらに関しての本を探してるのですが、なかなかそれだけを扱った作品というのは手に入りにくいのですよね。

ところで、ノンフィクション本ではなく小説なのですけれども、在米韓国人社会を題材にした洋書があったので読みました。

The Interpreter

韓国系アメリカ人作家Suki Kimの書いた『The Interpreter』です。

主人公の韓国系アメリカ人女性Suzy Parkは、韓国語の法廷通訳として生活しています。

彼女は、英語の話せない韓国系移民が法廷に立って発言する際の通訳をするのです。

アメリカには、英語が話せないまま生活の安定を求めて移民してきた韓国人がコミュニティをつくっているのですね。

彼らが訴訟に巻き込まれた際には、Suzyのような通訳が必要になるのです。

 

Suzyの両親も英語が話せない移民でした。

その両親はSuzyが幼い頃に、経営する食品店内で何者かに射殺され、犯人もわかっていません。

以来、Suzyは両親の死という現実を受け入れることができないまま。

自分を責めさいなむ記憶から追われるように生きてきました。

 

しかしある日通訳にあたった法廷での一件がきっかけで、両親の死の謎を探る手がかりがSuzyの前に現れます。

フラッシュバックする家族の記憶、韓国人社会で成功したはずの亡き両親の秘密、疎遠になった実の姉の影。

 

内省的な主人公が自らの身の上に関わる謎を追う作風は、往年のハードボイルド小説を思い起こさせるところがありました。

文章も美しく、魅力的でリーダブルな作品と言っていいかと思います。

しかし作中で明らかになる、「自由の国」に憧れて渡ってきた韓国系の人々を待ち受ける過酷な現実に、胸が締め付けられます。

韓国系移民の社会を通して描かれる、アメリカという国の現実。

また、アメリカに渡って来てもなお韓国人たちを縛る厳しい家族の掟。

娯楽として楽しめる作品の中にそれらが描き出されていました。

Suzyが直面する結末も含めて重いものですが、とても読み応えがある作品です。 

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An excerpt from 『Farewell, My Lovely』

私の好きな作家 Raymond Chandler が書いた名作 『Farewell, My Lovely』 にこんな一節があります。

 

 "She drove me all the way home, tight-lipped, angry.

She drove like a fury.

When I got out in front of my apartment house she said good-night in a frosty voice and swirled the little car in the middle of the street and was gone before I could get my keys out of my pocket."

(彼女は家までの道すがらずっと唇を固く結び、怒りながら私を送り届けた。

彼女は狂乱のように走った。

私が自分のアパートの前に降り立ったとき彼女はささくれた声でおやすみなさいを言い、私が鍵をポケットから出すよりも速く、路上の真ん中で小さな車を翻して去った。)

 

敵に捕まって薬を打たれ監禁されていた私立探偵 Philip Marlowe が、監禁場所からの脱出に成功した後。

顔見知りの若い女性記者 Anne Riordan のアパートに転がり込んで一時の休息を取ります。

彼に好意を寄せている Miss Riordan はそのまま泊まっていくように勧めます。

が、Marlowe はそれを断ったうえに余計なことを言って、相手を怒らせてしまいます。

その直後、自尊心を傷つけられた Miss Riordan が Marlowe を彼のアパートまで送っていく…。

そんなシーンを描写したのが先の一節です。

何度読んでも、じんわりきてしまいます。

「男のファンタジー」と言ってしまえばそれまでなんですが…。

これ、1940年に書かれた小説なんです。

作者のChandler は現代にも通用する「ヒロイン萌え」要素をよく理解していたんだな、と思います。

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