『パギやんの大阪案内ぐるっと一周「環状線」の旅』趙博

大阪人にとってはありがたいことに、「大阪に遊びに行きたい!」と言ってくださる他府県の方々が多いんですよね。

他府県の書店をのぞいても、大阪観光のガイド本等、結構充実してたりして。

ただそんな一般のガイド本に物足りなさを感じられる向きには、この本を読んで欲しいんですよね。

パギヤンの大阪案内 ぐるっと一周〔環状線〕の旅

日本人ではない、しかし生粋の大阪人。

パギやんこと趙博氏が書いた『パギやんの大阪案内ぐるっと一周「環状線」の旅』です。

大阪を知り尽くしたパギやんが、大阪市内を走るJR環状線の一駅ごとに、周辺の「名所」を案内してくれます。

でもその「名所」は一筋縄ではいきません。

例を挙げると、軍事地下壕、トンネル横丁、太鼓の名産地、アパッチ部落跡。

どうです、面白そうでしょう?

中には、韓国のシャーマンである巫堂(ムーダン)の祈祷所が、かつて大阪都心の川沿いにあった…。

そんなびっくりするような逸話も出てきます。

大阪の埋もれた歴史の断面が、パギやんの軽妙な語り口で明るみにされていくのです。

「あんた、なんでそない、いろいろ知ってはるねんな…」とため息が出るような博識ぶり。

さらにパギやんは、相次いで市内に建てられる巨大ビル、商業施設など、大阪の歴史の文脈を無視した昨今の開発に怒りを隠しません。

官民問わず、長年の庶民の血と汗と涙を忘れようとしている現代の大阪人への、パギやんの怒り。

文章のそこかしこから読み取れます。

大阪の負の遺産も容赦なく紹介されますし、大阪人としては多少後ろめたい!ところも。

しかしそれがかえって、読んでいて痛快な気持ちになれる理由なのかもしれません。

私も発見がたくさんあって、「大阪にそんな場所があったのか…」とめまいすら覚えたんですよね。

他府県の人のみならず、大阪府内に住んでいる人間にとっても大阪の観光と言えば「USJ、道頓堀、千日前、お笑い、たこ焼きお好み焼き」です。

読めばそんなステロタイプが崩れていく、ある種、気持ちのいい本なのですよ。

各章末ごとに紹介される「本当は教えたくないこのお店」のコラムも魅力的です。

パギやん馴染みの、知る人ぞ知る面白そうな名店がたくさん出てきます。

軽妙かつ辛辣なパギやんの観光案内のあと、グルメ読者にはたまらないこのコラムがあって。

ちょうどバランスが取れているのですね。

娯楽一方の遊び場ばかり紹介する本ではありませんが…。

大阪の真の姿に迫りたい人には、格好の読書になることでしょう。

この本を携えての大阪散策も楽しいと思います。

私がおすすめしますよ。

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