『韓国クール・ワンダーランド』奥原選
広く人に勧めてまわりたいような、自分だけで独占していたいような。
そういうお気に入りのお店みたいな本ってありますよね。
私にとってそういう本です。
『韓国クール・ワンダーランド』。
著者は奥原選(おくはらすぐる)氏です。
PHP研究所から2002年に出版された紀行本です。
たまたま父親に連れられて韓国釜山に旅行に来た若き福岡男児すーちゃん。
日本と似て非なる韓国の街と人々に衝撃を受け、一気に魅了されてしまいました。
もともとは韓国に偏見すら持っていたすーちゃんなのに、多くの韓国人と出会い、次第に韓国にのめり込んでいきます。
「気がつくと、また韓国にいた」という具合に、気がつくと渡韓しているすーちゃん。
地元福岡の、韓国惣菜店の従業員に飛び込みで韓国語の教授を頼みこみ、仲良くなってしまうすーちゃん。
全編通してなのですが、すーちゃんはこうと思えば一途に行動し、初対面の人ともすぐ仲良くなれます。
韓国に友人たちは増えていきます。
そして「韓国のことをもっと知りたい」その一心で韓国との関わりを深め、ついにすーちゃんは「韓国には日本からはすでに失われてしまった東洋の魂が残っている」と確信するに至るのです。
文体は一貫してハイテンションで熱いです。
もともとすーちゃん、奥原選氏が運営しているウェブサイト上の日記を書籍化したものなのだそうです。
すーちゃん直筆の味のあるイラストも随所に掲載され、韓国のクール・ワンダーランドぶりが伝わってきます。
紀行本ではありますが、韓国のことをよく知らなかった若者すーちゃんが筋金入りの韓国通に成長していく、ビルディングスロマン的な楽しみ方もできます。
私は韓国旅行に行く数年前にこの本を読んだのですが…そのときの感動が、私が韓国への関心を強める一因になったのですね。
今でも時おり読んでは密かに楽しんでいます。
広く人に勧めてまわりたいような、自分だけで独占していたいような…。
ただ残念ながら、今では絶版になったのか、ネット書店を探してもこの本は古書でしか流通していないようです。
人に勧めようにもこの本自体が貴重なので、非常にもどかしいです。
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