『韓国天才少年の数奇な半生 キム・ウンヨンのその後』大橋義輝
子供の頃に神童、天才少年少女と呼ばれた人たちが成長してどんな人になったのか。
気になりますよね。
ただ平穏に暮らしている人の私生活を探るというのは、どうしても後ろめたさがつきまといますが…。
大橋義輝氏によるルポルタージュ、『韓国天才少年の数奇な半生 キム・ウンヨンのその後』です。
30代の私は知らなかったのですが、1960年代に日本のテレビ番組に出演し、話題になった韓国の天才少年がいたのですね。
当時4歳だったキム・ウンヨン君は東大生2人と物理学の問題を解く速度を競い、彼らに先んじて正答を導き出したのです。
また彼は美しくも難解な詩を紡ぐ才能も持っており、大人たちを驚かせました。
ところが、彼はお茶の間をにぎわせた後、次第にメディアに登場しなくなってしまったのです。
現代になって、著者はこのウンヨン君のその後を追った経緯をつづったのが本書の内容です。
私が本書を手に取ったのは日本で話題になった韓国人の存在に、ぼんやりとした興味があったためです。
この本に対して特に何かを期待してのことではありませんでした。
でも著者が、大人になったキム・ウンヨンに会おうと取材を続けるもなかなか会えない過程を読んでいて、面白くなってきました。
一度脚光を浴びた天才少年の消息がわからなくなるというのは謎の匂いがして。
いろいろと勘繰りたくなってしまうのが人の習性です。
そうした習性に従い、あえてそうした人物を追う行為はどうも後ろ暗いものが付きまとってしまうのですが。
しかし本書の著者のヨンウン君への思い入れが強いこともあり、文章の感じは悪くありません。
天才少年はその後、どうなったのか。
人の人生って先には予測がつかないものだな、と思います。
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