『小説の読み書き』佐藤正午
私は、小説を人一倍読んでいるつもりです。
そんな私にしても、作家が小説の中で何を語っているのか、その真意を読み取るのは簡単ではないのです。
『小説の読み書き』、作家の佐藤正午氏の著作です。
佐藤氏は各章ごとに一冊、川端康成、森鴎外、夏目漱石といった有名な作家たちの作品を読みます。
そして、その小説を通して作家がどういうことを伝えようとしたのか。
もしくは、あえてわかりやすく伝えずに、何をほのめかしているのか。
漠然と小説を読むだけでは気付かないような作家たちの作意について迫っていきます。
本職の作家である佐藤氏のように、小説を書く過程を経験していると、読み方も鋭くなるのでしょうね。
ただ一方、本作で佐藤氏は「小説を読むとは書き直すということ」と語っています。
つまり「なぜここでこの作家はこう書いたんだろう?私ならこう書くのに」と。
いぶかしみながら、秘められた作家の真意を探る。
そうやって、作家ではない読者であっても、小説を書き手としての視点から読むことはできるのです。
小説を読むこと自体が、小説を書くことに極めて近い経験になるのですね。
私のように、作家が何を言いたいかわからない…という読み方では、書く側の意識をたどれていないのだな、と。
そう思います。
せめて「このセリフはこういうつもりで言わせているんだな」とか、想像ぐらいはできるようになりたいものです。
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