『動画の海。外国で根強い趣味』

パソコンに向かい、動画サイトで面白そうな動画を物色していたら、外国の大食い動画を見つけた。

画面に映っているのは、若い男性だ。

テーブルの上に、各種の料理が盛られたいくつもの皿が並んでいる。

その向こうから体の正面をこちらに向け、男性はカメラ目線で説明している。

外国人なので、何を言っているのかはわからない。

彼は料理を食べ始めた。

咀嚼しながら、うなずき、味わっている。

それ以上の派手なリアクションもなく、うなずき、咀嚼し、時々は何かしらカメラに向かって喋る。

料理を評論しているようだ。

男性の評論と咀嚼音とを彼の口元のマイクが拾い、ヘッドホンを装備して動画を見ている私の耳元に届けてくる。

テーブル上の数々の料理が盛られた器は、全て同じプラスチック製のもの。

配達で注文して手に入れた品々なのだろうか?

配達された大量の料理をカメラの前で食べて感想を言う、という趣旨の動画のようだ。

そうか、と私は思った。

 

件の動画を見終えて、私は他の動画を探しにかかった。

私へのおすすめ動画として大量の大食い動画が表示される。

どれも、先ほど見た動画の投稿者と同じ国の人たちが投稿した動画ばかりだ。

試しに、そのうちのいくつかを視聴してみた。

どれも先の動画と内容に大差はなかった。

ただ、ラジオのDJのように話術巧みな人、食べ方の美しい人など、個性がある。

 

ぼんやりとそれらの動画を見ながら、私はなんとも言えない気持ちになった。

同じような大食い動画が、動画サイトには大量に存在する。

なぜか?

見る人が大量に存在するせいだ。

各々の動画の視聴回数は、けっこうな値に達している。

大食い動画を見る一定の層が、世の中には存在するのだ。

私には、他人が食事をしているのを鑑賞して喜ぶ趣味はない。

ところが、世界のどこかの国には、そのような大食い動画を鑑賞する愛好者があふれているのだ。

以前の私には想像もつかないことだった。

外国の文化には、驚かされることばかりだ。

このまま動画を物色していれば、いずれどんな動画を探り当てないとも限らない。

あまりに自分の世界観から逸脱する動画を見てしまうと、私の世界を図る尺度が狂う。

動画の物色もほどほどにしなければ、と私は思った。

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