東京旅行二日目(7)。世田谷八幡宮と太子堂八幡神社。河内源氏、源義家の足跡
豪徳寺へのお参りの後、近くにある東急世田谷線の宮の坂駅から電車に乗って、再び三軒茶屋方面に戻ることにします。
八幡宮というと、武家の河内源氏の氏神である八幡神を祀っています。
同じく河内源氏の流れを汲む足利氏に縁のある土地にも、よく八幡宮のお宮がありますね。
世田谷界隈はかつて足利氏の支流の世田谷吉良氏が治める土地だったので、それでここにも八幡宮が創建されたのだろう、と私は思ったのですね。
しかし世田谷八幡宮の敷地内にあった案内板を読むと、予想とは少し違いました。
創建は世田谷吉良氏が当地に来るよりももっと遙か以前の平安時代後期のことで、「後三年の役」で奥州の清原氏を攻めた河内源氏の源義家(みなもとのよしいえ)が奥州からの帰途、この地に勧請したものだということでした。
源義家は通称が「八幡太郎義家」と言われ、京都の石清水八幡宮で元服した経緯があり、氏神である八幡神への崇敬が篤かったのですね。
世田谷の地に八幡宮を勧請したのも、奥州で武運に恵まれたことを八幡神に感謝してのことだったようです。
後の室町時代、当地を治めることになった世田谷吉良氏によって、世田谷八幡宮の社殿は修復されて整えられたということです。
奥州で熾烈な戦を勝ち抜いた八幡太郎義家と、その義家の後裔であり奥州管領として奥州を治めていたこともある世田谷吉良氏の一族の足跡が、世田谷八幡宮で重なります。
深い因縁を感じました。
私も自分の武運を祈願しました。
私の足跡も河内源氏と重なりました。
次はあなたの番です。
宮の坂駅の駅舎に隣接して、かつて使われていた車両が展示されています。
中に入ることもできました。
この車両は世田谷線を走った後、江ノ島電鉄で「江ノ電」として走ってきた歴史があるのですって。
江ノ電になって、鶴岡八幡宮がある武家の古都、鎌倉の海側を走った後にまた世田谷八幡宮の前に帰ってきたのですね。
八幡宮に縁の深い車両ですね。
そういえば世田谷八幡宮は源義家が奥州からの帰途に世田谷に滞在している間に創建したということですから、義家が鎌倉に戻った後に創建した鶴岡八幡宮よりも少しばかり歴史が古い…と言えそうです。
世田谷八幡宮側の由緒を重んじるならそう解釈できる、ということですね。
宮の坂駅でしばらく待って、やってきた三軒茶屋駅行きの電車に乗り込みました。
ところで私、三軒茶屋付近にある「太子堂」という地名が気になっていまして。
地名で太子と言うと聖徳太子に縁のある場所を指すことが多いですから、近辺に太子堂という聖徳太子を祀ったお堂があるんじゃないか、とそう思ったのです。
私は聖徳太子に身近な南大阪から来ていまして、東京で聖徳太子に関わりのある場所があるなら見ておきたかったんですね。
手持ちの地図には「太子堂八幡神社」なる場所が載っていて、もしかしたらそこに太子堂があるやもしれぬ、と。
そう思い、その最寄りの西太子堂駅で途中下車しました。
三軒茶屋駅のすぐお隣の駅です。
このあたりの住宅街も味わいがありますねえ。
境内を探しましたが、太子堂なるお堂は見つからずでした。
私の早とちりでした。
そこは残念ですが、せっかくなのでお参りしていきます。
太子堂八幡神社には、源義家が「前九年の役」で奥州に向かう途中に当地にあった神社で休憩したという伝承が残っているそうです。
もともとは土地の神様を祀る神社だったようですが、源義家が関わる由緒によって、八幡神を祀るようになったのですね。
「前九年の役」は「後三年の役」よりも以前に源義家が奥州で戦った戦ですから、世田谷八幡宮よりもさらに由緒の古いお社ということになりますか。
太子堂八幡神社と世田谷八幡宮の伝承から想像するに、おそらく世田谷という土地は関東から奥州に向かう途上にあり、鎌倉と奥州とを行き来する河内源氏にとっては古くから馴染みの深い場所だったのでしょう。
そのように思いました。
室町時代に世田谷は河内源氏の後裔にあたる世田谷吉良氏の統治するところとなって八幡神を祀るお社が整備され、後世に残ったのですね。
河内源氏の歴史と結びついた、世田谷という土地の個性を感じます。
西太子堂界隈から三軒茶屋まで一駅なので、散策がてら歩いて戻ります。
背の高いビルが少なく、住宅地の広がる近隣で、三軒茶屋のキャロットタワーってよく目立つランドマークになっているんですね。
自分の中で、キャロットタワーに対しての親しみが増しているのを感じます。
ちなみに太子堂の由来になった場所ですが、後で知ったところによると、三軒茶屋から茶沢通りをずっと北に進んだ先に円泉寺という寺院があって、その境内に太子堂というお堂があるんだそうです。
ここが地名の太子堂の由来で、おそらくは、聖徳太子に縁のあるお寺なのでしょうね。
今回の旅ではお参りできなかったですが、次に三軒茶屋に来たら円泉寺にも足を運んでみたいと思います。
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