東京旅行三日目(3)。じっくり散策、新宿御苑。菊花壇に擬木、プラタナス並木から大温室まで
ラクウショウは名残惜しいですが、次行きましょう。
新宿御苑は広いのです、ぼやぼやしていられません。
木々が並ぶ向こうには街が広がっているのですが、都会の喧騒は伝わってきません。
新宿御苑はもともと、徳川家康(とくがわいえやす)が江戸に移った際、譜代家臣だった内藤清成(ないとうきよなり)にこの一帯の広大な土地を授けたのが始まりでした。
江戸時代には内藤氏の下屋敷の敷地となり、敷地内の屋敷跡に宿場町である「内藤新宿」も開かれます。
明治5年には各種農産物等の改良研究を扱う「内藤新宿試験場」が開設されました。
この試験場は後に皇室に献上され宮内庁の管理となり、さらに長い準備期間を経て明治35年には試験場から庭園として生まれ変わりました。
「新宿御苑」の誕生はこの皇室の庭園となった時なのですね。
いい庭園ですなあ。
もともとは皇室庭園として皇室の方々が憩いの時間を過ごされる場所であると共に、敷地内で試験場時代からの設備を使って装飾用の花々、飲食に供される野菜、果物等も栽培する場所だったのですね。
現在のように一般公開されるようになったのは、戦後になってからのことだそうです。
現在でも新宿御苑の敷地内には鑑賞用の菊の研究栽培施設があって、そこで育てられた菊がこうして菊花壇で見られるのですよ。
高層ビル群が見える場所に来ると、都会にいたことを思い出します。
新宿御苑が皇室庭園だった頃、昭和天皇の御成婚記念として台湾在住邦人たちから贈られた、旧御涼亭です。
平成に入って改修工事が施され、現在に蘇っています。
本格的な中国式建築として、当時の日本では珍しいものだったそうですよ。
日本人が異国に進出して接した多用な文化の諸々が、皇室の方々に献上されて、その生活に取り入れられていったのかもしれないですね。
ここは一般公開はされていませんが、菊の試験場ですな。
閉まった門の外から覗き見る私です。
これが皇室庭園の頃なら、外から覗き見るだけでもえらい怒られていたことでしょう。
外から見る限り、かなり広い区画が試験場として割かれているようでした。
かつての内藤新宿試験場の名残りを感じます。
ところでここ、日本の造園史の中で結構重要なスポットらしいですよ。
というのも、これ。
擬木(ぎぼく)って言って、石やコンクリートを使って木を模した造形なんですね。
公園なんかで時々見かけますよね。
実は、新宿御苑にあるこの擬木の橋が、日本で最初につくられた擬木なんだそうです。
明治38年にフランスから購入したもので、現地からわざわざフランス人が三人ついて来て取り付けたとか。
数メートルばかりの短い擬木橋ですけれど、取り付けるのに手間がかかっているんですね。
案内板の説明を読んで、目の前の擬木橋がとてもありがたく見えてきました。
これからは世の中の公園にある擬木を見る度に「私は日本で最初の擬木を見た」と自慢ができるので、嬉しいです。
そんな自慢を聞かされる人の方ではあまり嬉しくないでしょうね。
でも我慢してください。
プラタナス並木に圧倒される思いです。
空間をのびのびと使っていますね。
フランス式整形庭園のバラ花壇が素敵です。
ビスタライン(見通し線)と言って、バラ花壇のあるフランス式整形庭園の前に立つと
芝生広場のあるイギリス風景式庭園の遙か向こうまで、見通せるように空間を開いて造園されているのです。
あの地平線の向こうに私が入ってきた新宿門があるのですよ。
新宿御苑の端から端まで歩いたので、ひと休みです。
売店で売っていました、内藤とうがらしクレープを頼みました。
江戸東京の伝統野菜である内藤とうがらし、昔からこの新宿御苑の近辺で栽培されてきた野菜なのです。
その内藤とうがらしを使ったクレープなんですね。
270円ですから、軽いおやつにしてはいいお値段です。
凍ったホイップクリームの中に、内藤とうがらしをつかった餡が入っています。
冷たい甘さの中にほんのりと辛味が効いて、味覚を刺激します。
11月にしては日差しが強く気候も暖かい折で、美味しくいただきました。
最後に大温室を見ていきましょう。
遠くから見るだけでわかる、大規模な温室です。
大温室の外には、戦前にあった温室の遺構が保存公開されております。
現在の大温室に入ってみましょう。
いきなりバナナっぽい葉を発見。
これはあれです、バショウ科ってやつです。
しかしその実の方は、何といいますか、ちょっと食欲わかない感じの見た目。
呪いの儀式に使われそうなバナナ?ですね。
これから熟れて美味しそうな見た目になっていく…のならいいのですが。
おそらく国内有数の規模なのでしょう、広々として植物を見て歩くのが楽しい大温室です。
温かいので冬場には特にいいです。
私の好物、ドラゴンフルーツも育成されていますね。
ドラゴンフルーツってサボテン科だったんですね。
確かにサボテンかアロエっぽい外見です。
惜しいことに実は成っていません。
成っていたところで、私が食べるわけにはいかないので、成っていなくてよかったかもですね。
岩壁等をつたって上に伸びて行く性質があるんですね。
たくましいですね。
美味しい実をつけてください。
温かい土地では木々もにぎやかな進化を遂げるようです。
カカオの木に実が成っていますね。
なんだか美味しそうな色をしています。
でもあの実を食べてもたぶん苦いですよ。
またバナナ系の木を発見。
バナナですバナナです。
サンジャクバナナって言うそうです。
こっちの実はまだ青いですが、熟れてきたら食べられそうですね。
ただ小ぶりなバナナですね。
三尺ってどこからどこまでが三尺なのかよくわからんですね。
これはヘリコニア・マリアエという、これもバショウ科の植物の実なんですね。
こちらも見る分には面白いですけれど、ちょっと食欲わかない系です。
バショウ科といっても実の形はわりといろいろですね。
大温室では次から次へと面白い植物が現れて、気持ちが鎮まりません。
蓮の葉を眺めて落ち着きます。
通路が閉鎖されている箇所があります。
先の台風18号の影響で頭上の天窓ガラスが破損しているため危険なんですと。
あれですな。
えらい上の方で、天窓ガラスが破損していました。
台風で石か木の枝か何か飛んできて当たったのでしょうか。
応急処置は施されているようですけれど、あの高さにある天窓をどうやって修繕するのか、高所の苦手な私は想像しただけで冷や汗が出てきます。
三面ガラス張りの大温室、植物たちの育成も施設の維持も含め、大変な苦労をもって運営されているわけですね。
ありがたいと思います。
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