『Doctor Sleep』Stephen King

前作"The Shining"を読んで間を空けず、本作を読みました。

Doctor Sleep

Doctor Sleep

 

続編です。

Stephen Kingの作品、"Doctor Sleep"です。

Kingの代表作のひとつであり、1970年代の終わりに書かれた名作"The Shining"。

この続編が、前作の刊行から30年以上を経た2013年に発表されていたのですね。

 

前作の主人公であった少年、Danny。

作品世界でも時は進み、彼は40代の大人の男性になっています。

前作の舞台であった"The Overlook"での体験に責めさいなまれ、亡き父の生き方をなぞるような自身の現状にも向き合わなければならないDanny。

転落し、追い詰められながら、ホスピスでの職をかろうじて得たのでした。

入院患者の最期を次々と看取る彼は、畏怖を持って"Doctor Sleep"と呼ばれるようになります。

束の間の平穏の中、彼は自分と同じく"The Shining"を持つ少女、Abraの存在に気付きます。

その彼女は、幼い頃のDannyを凌ぐほどの、強大な能力の持ち主でした。

能力者同士の出会いは、皮肉にも、"The Shining"を狙う邪悪な者たちとの戦いに導かれたものでした。

Abraを守るため、Dannyは命を賭けた戦いに身を投じます。

 

ゴシックホラーの趣きが強かった前作からは作風を転じて、本作は超能力者と異形の存在との戦いを描いた活劇作品になっています。

DannyとAbra、そして彼らを取り巻く人たちが力を合わせて生き抜く中で、Dannyが家族との絆、血の繋がりを再確認する物語は、胸にくるものがありました。

"The Shining"が、まったく作風の違うこの続編を生んだことは驚きですが、それぞれの根底にあるテーマ、家族愛は通じています。

前作を読んでいないとわからない話が出てくるので、本作を読む前に前作を読んでおくことは前提です。

そしてもし前作を読んでいるのなら、本作を読まないのはもったいない、とも思います。

私は大変面白く読みました。

 

ところで私はどうもKingの手頃な作品ばかり読んでしまって、まだ大部の"IT"に手がつかない現状です。

小説を楽しみながら読める速度が、もう少し速くなると嬉しいのですが。

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Doctor Sleep

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『Hearts In Atlantis』Stephen King

新しい映画版作品が話題の"IT"に先駆けて、この本を読み終えました。

Hearts in Atlantis

Hearts in Atlantis

 

Stephen Kingの"Hearts In Atlantis"です。

1960年代、ベトナム戦争派兵中のアメリカで子供時代と青春時代とを送った世代を主人公にした、連作長編小説なのですね。

1960年、1966年、1983年、1999年と異なった人物の視点から、それぞれの時代での物語が5つの章で描かれます。

しかし全ての時代に繋がる記憶の源は、1960年。

この時代に生きる少年Bobbyを主人公に、物語は始まります。

 

独特の世界観を持った厳しい母と二人、経済的に苦しい暮らしを送る、Bobby。

彼の住むアパートの上階に、謎の老人が転居してきます。

風変わりなこの老人Tedと、Bobbyは交流を始めました。

お互いの信頼関係が築かれた頃、アルバイトを探すBobbyに、Tedは不思議な仕事を依頼します。

それは「黄色いコートの連中に気付いたら、知らせて欲しい」というものでした。

謎の集団に追われているTedが、同時に不思議な力を持っているらしいことに、Bobbyは気付きます。

やがてTedを脅かすように、「黄色いコートの連中」の痕跡が街のそこかしこに現れ始めるのでした。

 

Tedとの交流による不思議な体験を軸にして、Bobbyが生きる1960年の少年時代が描かれます。

この頃にBobbyと関わった友人たちが後の各章では成長し、主人公または重要な役割を担って再登場します。

アメリカのベトナムへの介入が本格化した時代を生き抜く中で、またベトナム戦争終結後長らく経っても心身が傷ついたままで、登場人物たちは1960年の少年時代の記憶を胸に生き抜くのですね。

ベトナム戦争を巡る戦場体験、アメリカ国内での市民同士の対立など。

当時のつらい状況は出てくるのですが、他のKing作品のような恐怖描写は無く、穏やかな気持ちで読み進められる作品です。

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『The Shining』Stephen King

言わずと知れたアメリカの人気作家、Stephen Kingの"IT"が再び映画化されると聞きまして。

YouTubeで映画の紹介動画を見ました。

怖くて面白そうで、ぞくぞくしますね。

以前に映像化された作品を見たことがありますが、やはり面白かったのです。

今回の映画化も楽しみですね。

 

ところで私、"IT"の原作小説をまだ読んだことがなかったのです。

この機会に読んでみようと思い、アマゾンで原書を注文しました。

ですが自分の中でKing気分が盛り上がり、"IT"が届くまで我慢できず、手持ちのこの本を読み始めてしまいました。

The Shining

The Shining

 

Stephen Kingのこれも人気作品、"The Shining"です。

Stanley Kubrick監督、Jack Nicholson主演で映画化された作品を見たことがある方も多いかもしれませんね。

 

こんな内容です。

自らの不祥事により、教員の職を失ったJack Torrance。

彼は友人の紹介によりかろうじて、山岳地帯にある歴史あるホテル"The Overlook"の冬季管理人の職を得ました。

幼い息子Dannyと妻Wendyと共に始まったOverlookでの生活。

しかし、次第にいわくのあるホテルの過去が明らかになります。

三人を襲う悪意。

Jackは不運なきっかけでのすれ違いから、妻子との関係を悪化させます。

深い雪に閉ざされた空間で、一度壊れたものを直すのは不可能でした。

幼い子Dannyは、"The Shinning"を最後の頼りに、助けを求めます。

 

失ったものへの後悔、失いつつあるものへの執着と絶望。

それらの感情に押しつぶされて正気を失う人も、踏みとどまって理性を保つ人もいます。

そんな人たちの心理を丹念に描写するKingの筆致に、読者は「自分はどちら側なのか?いつまで留まっていられるのか?」と自問自答することになります。

人によっては、この作品を読みながら過去の苦い記憶に襲われるかもしれません。

著者はおそらく自身の過去をモデルにしたのであろう登場人物たちを描きながら、「我々がどちら側にも成り得た」ことを思い出させようとしているようです。

読んでいて、狂気にとらわれた作中人物のことまでも愛おしく思われてくるのは、そのためなんですね。

他人のことが、自分から切り離された他人ではなく身近に思えてくる小説です。

優れた娯楽作品として最後まで読みきってしまいますが、読後は作中人物たちの思いを追体験したことで、必ず涙を誘われます。

この稀有な読書体験。

何度となく再読してしまう魅力があります。

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『In Order to Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom』 Yeonmi Park

ずいぶん前に購入して、ただしばらくは読む気になれなかったのです。

最近、思い立って冒頭のページを試し読みしてみて、その流れのまま数日かけて最後まで読んでしまいました。

In Order To Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom

In Order To Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom

 

 

Yeonmi Park著、"In Order to Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom"です。

DPRK(Democratic People's Republic of Korea、朝鮮民主主義人民共和国)を脱出した「脱北者」である著者の体験記でした。

DPRKでは上流の家柄で裕福な家庭に、両親、姉と暮らしていた著者、Yeonmi。

しかし国有物の窃盗を行っていた父親の逮捕をきっかけに生活状況が悪化し、あるとき彼女は隣国の中国に脱出することになります。

 

ところで私は以前にも彼女と似た立場の方が書いた伝記本を読んでいます。

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Hyonseo Leeさんの"The Girl With Seven Names"でした。

この本の中では、度重なる危機を主人公である著者が危ういところで切り抜ける展開が続き、冒険譚のように読めてしまうことができました。

まるである種の娯楽作品であるかのように読んでしまえる面があったのです。

でも今回読んだYeonmi Parkさんの本では、著者を含めた脱北者の人々が、危機から逃れることができずに酷い運命に晒されます。

脱北ブローカーの手引きを経て中国の国境付近に潜伏、韓国への移住を計る中、脱北者たちは人間扱いをされません。

中国当局への密告をされると捕まってDPRKに送還されてしまう弱い立場なので、密告をされないためにはどんな目に遭っても耐え忍ぶ他ないのです。

そうした過酷な環境と非道な仕打ちにも、生き延びるために順応しないといけない脱北者たちの姿が描かれ、胸が締め付けられるような思いがしました。

 

間一髪のところで危機を避け続けることができる脱北者など、少ないのですね。 

ただ、生きてさえいれば、希望を持ち続けることはできます。

深い傷を負い、それでも明日を信じて生きて行く人たちの姿に、本を読んでいる自分も勇気づけられます。

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生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った

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『The Girl With Seven Names: Escape from North Korea』Hyonseo Lee

洋書のペーパーバック小説への褒め言葉として、「Page-turner」なる言葉があるんですね。

つまり、先にが気になってついついページをめくる手が止まらない。

今回読んだ本も、page-turnerでした。

The Girl With Seven Names: Escape from North Korea

The Girl With Seven Names: Escape from North Korea

 

Hyonseo Lee著、"The Girl With Seven Names: Escape from North Korea"です。

朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)に生まれ育った著者。

彼女は17歳の頃に脱北しました。

その後、中国での長年に渡る潜伏生活を経て、韓国に難民として移り住むに至ります。

幼少期の祖国での暮らしから現在に至るまで、彼女が脱北の経緯を中心に語った自伝です。

 

タイトルにもなっている通り、著者は七つの名前を持っています。

中国での潜伏生活を通して、脱北者として追われる身であった彼女。

身分を偽り名前を変え、偽造IDを手に入れて生活していました。

密告を恐れ、北朝鮮からの脱北者であることが知られると、住む場所を変えなくてはならなくなる日々。

居場所を変える度、新たな名前を手に入れて、新しい人生を生きるのです。

しかし彼女は、どこまで行っても自分が脱北者である事実と、故郷に置いてきた家族の記憶からは逃れられないのです。

 

脱北者であり、何の後ろ盾もなく中国の最下層で生きる、潜伏者。

作中、そんな著者は何度も危機に陥ります。

その都度、彼女は機転によって危ういところで難を逃れるわけなのです。

冒険がいきいきと描かれているのですね。

扱われている内容は非常に重いものではありますが、優れた冒険小説を読むように、先の展開が気になって。

読むのを止められませんでした。

また著者は私と同世代で、私が中学生時代にニュースで見ていた北朝鮮の混乱、その同時期のかの地の内情が描かれているのはとても興味深かったです。

生まれた場所がほんの少しずれていただけで、違う宇宙に生きるようにかけ離れた生活を送ることになるのですね。

 

最後に著者がスピーチを行った、TED及びTEDxでの動画を貼っておきます。

"My escape from North Korea"。 

"Why I escaped from my brainwashed country"。

どちらも英語によるものです。

脱北の当事者として、北朝鮮人として初めてTEDの壇上に立ち、北朝鮮の内情を世界に訴えたHyonseo。

様々な試練を乗り越えてきた末に、現在の彼女があるのですね。

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『The BFG』Roald Dahl

この作品が、とうとう映画になったそうで。

The BFG

The BFG

 

以前に購入して読んでいたのですね。

今回、再読しました。

Roald Dahlの児童文学、"The BFG"。

挿絵はQuentin Blakeの手によるものです。

 

ある月の明るい夜、少女Sophieは寝室の窓から、街を徘徊する巨人の影を目撃します。

その後、彼女は巨人に気付かれ、さらわれてしまいます。

それが彼女とThe BFG(The Big Friendly Giant)との出会いでした。

自称する通り、大きくて親しげな巨人であるThe BFG。

彼との交流の合間に、SophieはThe BFGとは全く異なる性格の人食い巨人たちの存在を知ることになります。

彼らの恐ろしい計画を知り、彼女はThe BFGと力を合わせて人食い巨人たちを倒そうとするのでした。

 

Roald Dahlの代表作の一つである、本作です。

児童向けの作品とは言えブラックユーモアが効いていまして。

悪趣味すれすれ、な面もあります。

平和を愛するThe BFGと対比して描かれる、人食い巨人たちの振る舞い。

彼らが行う蛮行の描写をあまり真剣に読み込んでしまうと、気分が重くなります。

しかしDahlの絶妙なセンスで、恐ろしいシーンもコミカルに描写されております。

あまり心配する必要はありません。

強すぎる人食い鬼たちをSophieたちがどうやってやっつけるのか、それも見所のひとつ。

楽しく読めるのですね。

Quentin Blakeの描く可愛らしいイラストがまた、作品の楽しい雰囲気を保つうえで一役買っています。

 

どこか境遇の似たSophieとThe BFGとが心を通わせていく過程は、なかなか素敵です。

作品全体を通しての雰囲気は楽しく明るいものですので、皆様気軽に読んでみられるとよいかと思います。

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『The Stand』Stephen King

長い時間をかけて、ようやく読み終わりました

The Stand

The Stand

 

Sthephen Kingの長編小説、"The Stand"。

以下にあらすじを記します。

 

軍の研究施設から致死性の伝染病ウィルスが漏れ、アメリカ合衆国中に広まりました。

ウィルスへの耐性を持った少数の人たちだけが生き残ります。

死の匂いに包まれたアメリカの街々。

生き残った人たちは、夢に現れる不思議な老女の導きにより、ボルダーの街に集まります。

そこで模索される、新しいアメリカの再生。

しかし同時に、善なる存在である老女と対をなすような悪の存在も人々の心に現れ、影を落としていました。

老女が人々を引き付けるのと同じように、この悪の存在もある種の人々を自分のもとに集めるのでした。

ボルダーの街のはるか西方に、彼らは悪の都とでも言うべき社会をつくりあげます。

ボルダーと悪の都は、次第に対立を深めていきます。

 

パンデミックによりアメリカ人の大半が死滅する、サイエンス・パニック的な序盤。

そこから物語は、次第にオカルトじみた展開を見せていきます。

King作品の読者なら、"Salem's lot"などの他作品でも馴染んだ、ダークな世界観なのですね。

物語には多くの登場人物がいますので、慣れるまでは少し混乱するかもしれません。

しかし主人公たちも悪役たちも、個々の心理描写が丁寧な筆致で描かれます。

個々のキャラクタに対する理解は物語を読み進めるごとに深まるでしょう。

 

主人公たちの過酷な戦いは、ときに読んでいて辛くなることもあります。

しかしKingによる練られた名文とストーリー展開の妙によって、先を読まずにはいられない面白さなのです。

1400ページを超える大部で、確かに読むのは大変です。

ですが、その大部を読む切るに見合った楽しみを味わえる。

私はそう感じました。

じっくり読んで楽しめる読書に飢えている方に、私は本作を強くお勧めします。

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