『瞬殺猿姫(45) 差し向かいになる二人、猿姫と神戸下総守』

猿姫(さるひめ)は妙な気配を感じて、振り返った。

畦道に、編み笠を被り、脚絆を履いた武士が立ってこちらを見ている。

猿姫は農家の夫婦と共に鍬で畑の土を掘り返し、耕していたところだ。

春の気配が迫った、しかしまだ底冷えの残る朝。

尾張の織田の刺客か、亀山の関家の刺客か。

一瞬緊張したが、相手の武士は猿姫の顔を認めて軽く会釈をした。

刺客らしい殺気は感じない。

何だろうか。

念のため鍬を手にしたまま、畦道の方に降りていった。

「何でございましょう」

用心深く声をかけた。

猿姫は農家から借りた野良着をまとい、ほおかむりをしている。

農家の娘にしか見えない。

相手が面倒な人間なら、自分の身の上をごまかしてやり過ごそうと思った。

「猿姫殿ですな」

聞き覚えのある声だ。

猿姫は相手の顔をよく見た。

「これは」

面識がある。

いまだ歳若い、しかし気品のある顔立ち。

半年前に白子の港近くで別れた、神戸下総守利盛(かんべしもうさのかみとしもり)だ。

下総守は神戸城主だったが、主筋にあたる亀山の関家に神戸城を奪われている。

猿姫にこの農家での仕事を紹介した後、やり取りは途絶えていた。

「下総守殿」

「しばらくであった」

成り行きに気付いた夫婦が、慌てて駆け出してきて畦道の脇に膝を着いた。

神戸城を奪われた後も、この農家を含め北伊勢の大部分の田畑は神戸家に属している。

依然、下総守は領主なのであった。

「ご無事で」

猿姫は旅装の下総守の顔を懐かしく見た。

「お互いにな」

下総守は親しみを込めた目で猿姫を見返している。

それから、彼は畦道の脇に膝を付いている農家の夫婦に目をやった。

「しばし、猿姫殿を借りたい。二人で話がしたいのだ」

農家の主人は、一も二も無くうなずいた。

 

下総守の指示で、夫婦は畑での耕作に戻る。

猿姫は鍬を畑の端に置き、下総守を伴って、母屋に帰ってきた。

二人で薄暗い家屋の中に入った。

梁の上から、おぼろげな日の光がわずかに注ぐ明るさである。

猿姫にうながされ、下総守は編み笠を取って縁台に腰掛け、草鞋を脱ぐ。

板の間の上を進み、囲炉裏の前に落ち着いた。

大小二本の刀を傍らに置いた。

猿姫の方は土間に立って考えている。

お湯でも沸かそう、と思う。

土間の壁際に設けられた水屋棚から鉄瓶を取り、水がめから柄杓で水を移した。

鉄瓶を持ち、前を向いたまま、草鞋を脱いで板の間に上がった。

下総守の囲炉裏を挟んだ向かい側に座った。

囲炉裏の中の五徳の上に鉄瓶を置く。

火箸を取って炭をいくつか、五徳の下に差し入れる。

灰を掘り起こして、火種を探し当てた。

五徳の下の炭の中に、火種を押し込む。

ひと通りのことをし終えて、息をつけた。

楽にしようと、頭に巻いたほおかむりを解いた。

ここ半年で伸びた髪が、両肩と背中に落ちてかかる。

下総守が注意を引かれて、猿姫に視線を向ける。

彼女の長い黒髪、そして顔をじっと見た。

猿姫は思わず視線を逸らして、咳払いする。

半年前に下総守と面した際には、念入りに化粧を施していたはずだ。

今は素顔を見られている。

普段から化粧をしない猿姫も、相手の視線を受けるのが苦しい。

しばらく黙って五徳の下の熾火を見つめた。

下総守も視線を囲炉裏に向けた。

自分の顔から視線が離れたので、気が楽になる。

「お茶、とは行かないが。二人でお白湯を飲もう」

「お白湯で結構。もはやお茶をいただくような身分でもない」

猿姫は何と返していいかわからない。

うつむいたまま、相手の顔を見ないようにする。

火箸で灰を掻いた。 

また下総守からの視線を感じる。

「…今日も共を連れずにお一人で」

そう口にした。

下総守は畑の畦道に、一人で立っていた。

領主としては考えられないことだが、神戸城を失って以降、下総守には随行する家臣もいなくなってしまったのかもしれない。

「いや、小姓と共の者は離れた場所に待たせてある」

予想よりも軽い調子の答えが返ってきた。

「家臣が戻ってきているのか」

「何、皆が皆ではないがな。先の戦で戦死した者も多ければ、関方に走った者も多い」

「そうか」

猿姫は、息をついた。

皆が別れて以降、下総守からの音沙汰は無く、孤立したまま行き倒れているのではないかと思っていたのだ。

戻ってきた家臣がいるだけでも幸いだろうと思う。

「下総守殿、今はどこに住んでいるんだ」

「あちらこちらと。幸いなことに、関方にも与せず我が手元に残った家臣があまたいる」

猿姫の問いをはぐらかすように、下総守は言った。

なるほど、と猿姫は思う。

現在の本拠を曖昧にしておきたいのかもしれない。

「とにかく居場所があってよかった」

素直な気持ちで、それだけ言った。

下総守が笑う気配がする。

猿姫は顔を上げた。

囲炉裏の五徳の下でじわじわと燻る熾火に視線を落としながら、下総守は儚い笑みを浮かべている。

「どこへ行っても落ち着かぬ」

「それはそうかもしれないな」

農家に雇われて住み込みで働いている猿姫は、己の境遇を思った。

自分は慣れないながら畑仕事がこなせ、夏には泥鰌捕りもできる。

城を失った武家の下総守は、家臣たちの居候となって、毎日何をしているのだろう。

彼が茶の湯の道に秀でていると言って、毎日茶の湯を家臣に飲ませて過ごすわけにもいくまい。

首をかしげながら、猿姫は熾火の具合を見つめた。

勢いは、なかなか強くならない。

 

二人で向かい合って座ったまま、お湯が沸くのを待っている。

わざわざ訪ねてきたはずの下総守が、言葉少なだ。

猿姫にかける言葉を探している、という風でもない。

自然に、ただ彼女と差し向かいで座っている。

囲炉裏の中の熾火で、二人の顔が照らされている。

猿姫の中では、神戸城で起こったことの諸々の記憶は、半年の間に薄れている。

下総守の心中を、察しかねた。

「織田三郎殿から音沙汰はあったか」

ふいに声をかけられて、猿姫は顔を上げた。

「いや。でも、最近こちらから文を送ったので、じきに返事があると思う」

一週間前に、充分な路銀が溜まった旨の文を、白子の港にいる織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)宛てに送っている。

半年の間、下総守のことも三郎のことも、気にはしながら何ら連絡を取らなかった。

農家での暮らしが、思ったよりも自分に馴染んでいたせいかもしれない。

「やはり織田三郎殿と、南伊勢に行くか」

視線を落としたまま下総守は言った。

「そのつもりだ」

「そうであろう」

妙な相槌だ、と思う。

「三郎殿と旅するのは、楽しいかな」

これも妙だ。

「考えたこともないな。いつも尾張の追っ手のことを警戒して、人質の髭が逃げないように気をつけてもいる」

「髭。ああ、蜂須賀殿か」

猿姫が木曽川べりで拉致した斎藤家の武将、蜂須賀阿波守(はちすかあわのかみ)も今、三郎と共に白子の港で働いている。

元気にしているはずだった。

「うん。三郎殿と髭を連れて、追っ手を気にしながら旅しているんだ。気の休まることがない」

「そうであろうな」

「考えたこともなかったけれど、でも楽しいか楽しくないかと言えば、楽しい方なのかも」

下総守と熾火を前にして、自分の頭もぼんやりし始めているのかもしれない、と猿姫は思った。

「城住まいよりも、旅がよいか」

「うん?」

猿姫は首をかしげて、下総守を見た。

下総守と、目が合った。

不思議な目の色をしている。

一瞬、猿姫の体が強張った。

「当方と二人で城住まいをするよりも、その旅の方がよいか」

「えっ」

この男は何を言っているのだ、と猿姫は思う。

 

今の彼は、居城であった神戸城を関家に奪われ、家臣の下を転々とする立場だ。

その身の上に、付き合えと言うのだろうか。

「貴殿と二人で城住まい…?」

「うむ」

こくり、と向かいの若者はうなずいた。

妙な気配を持っている。

「それは何というか…見当もつかない」

猿姫は率直に言った。

「私も三郎殿も、旅を続けることしか考えていないんだ」

まだ返事の文も寄越さない三郎の心情を、忖度した。

「そうか」

下総守は、小さなかすれ声で応じる。

視線が再び囲炉裏に落ちた。

猿姫も同じく視線を落とした。

「…こうなった以上は、意地でも貴殿らを送り出そう」

独り言に近いものだった。

かねてからの予定通り、南伊勢への猿姫たちの旅を後押しするという意味だろうか。

「あ、それは。かたじけない」

猿姫は気の利いた返事を思いつかないまま、如才なく答えた。

下総守が何を目的に自分に会いに来たのか、いまだ要を得ない。

お湯もまだ沸かない。

今日は妙な日になりそうだ、と猿姫は思った。

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一人でチーズタッカルビを食べられるのか。鶴橋駅から生野コリアンタウンまで。大阪市の旅

チーズタッカルビが気になっていた折でして。

チーズタッカルビ、今、流行しているらしい?韓国料理です。

元々あったタッカルビという鶏のすき焼き的な料理に、新しくチーズを絡めて食べるようにした新作料理なんですね。

東京のコリアンタウンとして知られる新大久保の発祥だそうで。

私、昨年末の東京旅行の際に新大久保に行ったのです。

現地では夜更けにも関わらず、チーズタッカルビ店の店先が順番を待つ若い人たちで混雑しておりました。

そのときは私は予算的な制約から食べ控えたのです。

ところが、ここ最近メディア等でチーズタッカルビの名を耳にするようになって、気になり始めたのですね。

巷で人気だと聞くと、食べたくなりますよね。

ただこのチーズタッカルビ、韓国の鍋料理焼肉料理の例に漏れず、専門店は基本的に二人前から注文を受け付けるお店ばかりなのです。

私のように基本がお一人様行動の者には、世知辛い韓国料理業界であります。

ただ幸いなことに、例外もあるのですね。

 

www.jarna.jp

 

新大久保の一人前から注文できるチーズタッカルビ店事情について、先行のブログ記事を拝読しました。

やはり、一人前需要に対応する気の利いたお店も存在するようなのです。

こちらの記事に影響を受けまして、私も大阪のコリアンタウン鶴橋界隈にチーズタッカルビを食べに行きたいと思ったわけであります。

一人前から注文できるお店をネットで探しても、はかばかしい検索結果が出ませんでしたので、もう現地に行ってしまいます。

 

JR鶴橋駅から降りて参りました。

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鶴橋駅の高架下を中心に広がる鶴橋国際市場です。

アーケード下の入り組んだ路地に、韓国食材店、衣料店、飲食店等が軒を並べた、広大な迷路のような場所なのですね。

本場韓国の商店街を思わせる、味わいある雰囲気です。

お一人様向けチーズタッカルビ店を探す私は、まずはこの鶴橋国際市場を歩いてみることにしました。

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散策しながら、それとなく南に向かうつもりで歩いています。

鶴橋国際市場の南には、第二のコリアン観光スポットである生野コリアンタウンがあるのです。

そちらへ行けばチーズタッカルビを出すお店に出会える目算が高いのですね。

ただやはり迷路のようなアーケード下を歩いていて、方向感覚は麻痺して参ります。

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鶴橋国際市場は韓国関連のお店が軒を並べるだけでなく、レトロなアーケード商店街の雰囲気を残す場所としても、好事家の人気が高いのです。

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散策の折、私は韓国居酒屋の店先に気になるものを見つけてしまいました。

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「바나나맛우유(バナナマスユ、バナナ味牛乳)」ですな。

韓国旅行好きの人たちの間ではよく名の知れた飲料です。

私はまだ飲んだことがなかったんですね。

250円と牛乳にしてはいいお値段でしたが、勢いで買いました。

バナナ風味とほのかな甘さのある牛乳でした。

後味が爽やかで美味しく、飲みやすかったです。

チーズタッカルビのことをしばし忘れて、今後の韓国旅行のことを考えました。

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お店を見つけられないまま鶴橋国際市場を出た後、大通りに沿ってなんとなく歩いています。

しかしこの時点で私は、東の方角に来ていました。

生野コリアンタウンは、南です。

方角を間違えたことに気付いた私は、そのまま南を目指して路地を通っていくことにしました。

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住宅地の中に、樹木をご神体にしたお社があったのでお参りです。

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お社から程近い場所に、なんと「牧場」があったのですが…。

外観は、工場にしか見えませんでした。

後から調べたところ、どうも洋菓子のお店の工場だったようです。

洋菓子工場と思わせておいて、屋内で乳牛を飼っている可能性は捨て切れません。

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角に有名なお好み焼き店「オモニ」がある筋に入りました。

ここを進めば生野コリアンタウンの通りにぶつかるはずです。

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生野コリアンタウンを前にして、韓国料理店を見つけました。

「K.BQ」というお店です。

ピンクの外観がえらいカジュアルなので、素通りしかけたのです。

ガラス越しに見える店内もカジュアルな若者向けの雰囲気で、また店内は若い女性客で賑わっている様子。

そろそろ若くない男性の私が入店を躊躇する雰囲気です。

ところが、外に貼られたお品書きに「チーズタッカルビ」の名を目にしてしまいました。

「一人前1800円」と書いてあります。

一人でチーズタッカルビを食べられそうなお店を、いきなり発見しました。

気持ち頑張って店内に入り、従業員の方に聞いたところ、チーズタッカルビを一人前から注文できるとのこと。

今回の目的であるチーズタッカルビ、K.BQでいただくことにします。

 

テーブル席でチーズタッカルビを待ちます。

ほとんど中学生か高校生でしょう、とても若い女性客ばかりの店内の隅で、若干居心地の苦しい思いでした。

孤独のグルメ』状態です。

壁掛け液晶テレビではK-POPの男性グループのライブ映像が流されていて、女性客たちは食事の合間に夢中になって見ているのでした。

チーズタッカルビとは別に、もともとはサムギョプサルがメインのお店のようで、それぞれのテーブルでは大きな三枚肉を焼いています。

しばらくして私のところにも待望のチーズタッカルビが来ました。

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マリネした鶏肉とキャベツ、カボチャなどの野菜の間にチーズが仕込まれています。

お鍋の底で、タレと溶けたチーズが音を立てて煮立っています。

このチーズは三種のものを使用しているということでした。

迂闊な私はその内訳を聞き忘れました。

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セットメニューで、四種のキムチとチヂミ、あとご飯もついてきます。

ランチ料金で1800円、夜には2300円になるそうです。

1800円はランチとしてはかなりいいお値段ですけれど、チーズタッカルビは量が結構ありますし、まあ納得できるところかと思いました。

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三種のチーズがほどよくとろけたところで、鍋の中をかき混ぜてからいただきます。

甘辛いタレの染み込んだぷりぷり鶏肉に、チーズが絡んで美味しいです。

お野菜もたっぷり、チーズと一緒にいただきます。

チーズの種類があっさり系なのか、思ったよりもチーズ自体の自己主張は控えめですね。

癖が強くないので、たとえチーズが苦手な人でも美味しく召し上がれるのでは、と思います。

付け合せの四種のキムチとチヂミもしっかり韓国韓国した味わいで美味しく、満足です。

ご飯も日本のものとは少し炊き方が違うのか、あっさりした淡白な食感が新鮮でした。 

 

チーズタッカルビのセット、美味しくいただきました。

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今日の生野コリアンタウンもかなりの混雑でした。

お店に活気があって、売られているものを眺めて歩くのが楽しいです。

ただチーズタッカルビで満腹なので、美味しそうなおやつにも食指が動きませんでした。

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ここに来ればいつもいただく100円でセルフサービスのマッコリ、これだけは今日もいただきます。

酸味が利いた、甘い味付けのお酒です。

アルコール度数は強くないですが、ほろ酔いになれます。

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正直なところ行き当たりばったりでチーズタッカルビを食べられるとは期待していませんでしたので、上手い具合にお店が見つかって、拍子抜けな感の今回の旅でした。

まだ他にも、鶴橋周辺に一人前からチーズタッカルビを注文できるお店があるかもしれません。

小さな需要を拾ってくれるお店が、探せば意外とあるものなのですね。 

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『手間のかかる長旅(103) 皆で郊外へ』

運転手の女性が運転席に戻った。

「お待たせいたしました」

車内に低音のアナウンス声が響いた。

時子(ときこ)たち一同、よく待っている。

時子の背後で、美々子(みみこ)が小さくうなずいている気配がある。

「如意輪寺方面行き、間もなく定刻発車いたします」

皆で勝手に待った気分になっていたものの、定刻通りなのだ。

バスは発車した。

駅前のバスターミナルから、如意輪寺方面へ。

運転手の、落ち着いたハンドル捌きだ。

朝方の街の風景を車窓に写して、バスは郊外に向かって行く。

時子たちが見慣れたビル街から住宅地の街並みへ。

この住宅がまばらになり、道路沿いには田畑が並び始める。

さらに進むと、この田畑の間に工場の建物が混じった。

工場地帯の中をバスは進む。

時子とアリスが来週から勤める工場の、最寄りバス停も通り過ぎた。

「こっち方面、こんな土地だったんだな」

窓の外を見て、美々子は独り言のように言った。

先日の時子と同じく、美々子もこちらの方角に来るのは初めてだったらしい。

「工場で働いてでもないと、こっち来ることってないよね」

珍しく、美々子の言葉に町子(まちこ)が合いの手を入れた。

街の子は、郊外に用が無い。

時子にとってはこれで二度目の、殺風景な車窓であった。

ただ面接に向かう途中だった前回とは違い、今回は皆で食事しに遠出なのだ。

時子の気持ちはおのずと弾んだ。

路線バスに乗って、郊外にドライブだ。

「この運転手さん、運転が上手ね」

ふいに、東優児(ひがしゆうじ)が感想を漏らした。

柔らかい声色だ。

以前、馴染みの喫茶店に彼を呼び出した際のことを時子は思い出した。

話し方も仕草も、優児のそれは洗練されている。

「バスの免許って取るのは大変なんでしょう?」

隣の美々子に声をかけている。

「知らんわ。誰でも取れるだろ、そんなの」

美々子は乱暴に答えた。

「嘘でしょう」

優児は笑う。

「美々子さん大型免許持っていた?」

「持ってなくたって運転ぐらい出来るんだよ」

美々子の大口だった。

ヨンミと優児の間で彼女はふんぞり返っている。

「私の方が運転上手い」

「美々ちゃん、あんまり大きい声出すと運転手のお姉さんに声が届くよ」

前の席から町子が低い声でたしなめた。

「別にいいよ、届いたところで」

美々子は悪びれもしなかった。

「運転代われって言われたら今すぐにでも代わってあげるわ」

平気な顔で続けた。

彼女の姿を目にして、時子は考えている。

もしかしたら美々子は、優児が女性運転手の運転を褒めたので、意地になっているのかもしれない。

彼女のこういうところは可愛い、と時子は思った。

「時子、何がおかしいの」

後ろの席から美々子は目ざとく指摘した。

無意識に、笑みを浮かべていたらしい。

時子は慌てて両手で顔を覆い、くしゃみをする振りをしてごまかした。

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TOEIC受験。その前に、お昼を食べないと英語がわかりません。羽曳野市の旅

TOEIC受験してきたんですね。

また。

またと言っても、前回の受験からだいたい10ヶ月ぶりなんですね。

今回は大阪府羽曳野市にある四天王寺仏教大学が試験会場でした。

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古墳探索でもお馴染み、近畿日本鉄道の古市駅から降りて参りました。

休日ですが、TOEIC試験会場の四天王寺仏教大学まで、この駅前のロータリーから臨時バスが運行されています。

ただ、乗車料金がかかるのですね。

お金のこともありますが、せっかくの休日なので、旅気分を盛り上げつつ会場に参りたいと思います。

歩きましょう。

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行き先表示が奈良県御所駅になっている電車が、停車場にずっと停車していました。

御所に行く気が本当にあるのか怪しいものです。

よく知らなかったのですけれど、近鉄御所線という路線があって、御所駅はその終点なのだそうです。

御所市はひなびた景色のいいところなので、そのうち観光に行ってみたいですね。

 

TOEIC試験は午後からの実施で、現在ちょうどお昼どきです。

駅前でお昼を済ませていくとちょうどいいのです。

古市駅前には「パインコーン」というカレーライスの名店がありまして。

これまでに私も二回だけ、入ったことがあるのです。

スパイシーで美味しいスリランカカレーと、店主ご夫妻の温かい人柄が魅力的なお店なのです。

今度古市駅前に来たらまた行こう、と思っていた折でした。

パインコーンでランチにしましょう。

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パインコーンのお店の前に来ました。

テナント募集中。

張り紙がしてあり、昨年末に閉店していたということでした。

来るのが遅かった…。

またひとつ、南大阪から名店が無くなってしまいました。

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パインコーンのカレーライスを食べ損ねた失望感を背負ったまま、駅前から離れて行きます。

駅前には他に飲食店もあるのですが、強いて入ろうという候補が頭に浮かばないのでした。

試験会場のキャンパスまで歩く途上で食事先を見つけることにします。

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古市駅前から、かつての古道、竹内街道を歩いてきたわけです。

竹内街道と、国道170号線(外環状線)とがこの軽里北の交差点で交わります。

実はパインコーンとは別に、お昼の候補としてあるお店をネットで調べてきてありました。

と言っても、パインコーンが閉店しているとは思ってもみなかったので、あくまで保険的な第二候補だったのですが。

この軽里北の南方、外環状線沿いにそのお店はあります。

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着きました。

「本場九州の味 博多長浜ラーメンごん太」です。

古市駅前にはラーメン専門店は見つけられなかったのですが、駅前から離れたこの場所にあったのです。

本格的な長浜ラーメンが食べられるお店らしいので、期待が高まります。

ネットで調べてきた限りでは、本日は営業日のはずです。

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まあそういうこともありますよね。

ただ、私はおなかが空いたんですがね。

カレーライスから長浜ラーメンに、ちゃんと気持ちの切り替えも済ませて来たわけなんですがね。

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パインコーンにも長浜ラーメンごん太にも入れず、心に虚無が広がりました。

心の闇で心が覆われました。

TOEICを受験しに来たのに、もう英語のえの字もEの字も脳内にありません。

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遠くに峰塚公園の木々が見えています。

峰塚公園は、峰塚古墳と小口山古墳の二つの古墳が見学できる公園であります。

この界隈には日本武尊ヤマトタケルノミコト)の御陵である白鳥陵古墳もあって、古墳が多い土地柄なんですね。

堺市羽曳野市にまたがる「百舌鳥・古市古墳群」の一帯なんです。

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軽里北で歩道橋を渡ります。

高所の苦手な私は、この湾曲した歩道橋の傾斜を登るのが怖いです。

高所が苦手なのに高架好きというのは、我ながらどういう性分なんでしょうね。

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池のほとりには、峰塚公園に隣接して、パティスリーフラワーの大きな店舗があります。

パティスリーフラワー、南大阪ではよく名を知られたお店なんですね。

お洒落系スポットで、私は入ったことはないのですけれど。

ケーキ等の洋菓子を提供するお店ですが、ランチもやっています。

お昼を食べ損ねている折なので入ってみようかと思い店内を覗きましたが、満席でした。

やはり人気です。

後で調べてみると、東京の三軒茶屋の駅前にも支店があるということでした。

現地で全然気付きませんでした。

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峰塚公園の入口から、中へは入らず古墳の盛り上がりだけ見て通り過ぎます。

ここから先、四天王寺仏教大学のキャンパスまでの道筋で、お昼を食べられそうなお店を見た記憶がありません。

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ローソンを見て、もう決心しました。

今日のお昼はコンビニ弁当です。

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実は「店内キッチン」の案内に心惹かれたのでした。

お店の中に厨房があって、調理しているのです。

イートインスペースもあります。

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「まちかど厨房」というシリーズで、店内で調理された唐揚げ弁当です。

税込550円でした。

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なかなか美味しくいただきました。

値段を考えると相場としてはこんなところなのでしょうが、唐揚げもご飯ももう少し量が欲しいです。

食べながら私は「凄い、店内調理だけあって出来立てアツアツだ!」と感動しましたが、よく考えたら支払いの際にレンジで温めてもらっていたのです。

もう頭があまり回っていません。

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イートインスペースのテーブル上に、恵方巻きの広告が設置されてあります。

もうそんな季節ですか。

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清水寺で祈祷した海苔を使用…。

確かに縁起はよさそうですが、なんだかよくわかりません。 

ローソンがどういう人脈を使って清水寺に祈祷依頼することになったのか、経緯が気になります。

自社開発か、もしくはそういう業務用の祈祷済み海苔がどこかで売られているのか。

一個人として、深入りしてはいけないネタかもしれません。

 

祈祷済み恵方巻きのことを考えながら唐揚げ弁当を食べ終えて、店外に出てきました。

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ちょっと気になったんですけれど、このローソンの屋根の上、室外機がやたら乗っていますね。

やはり店内キッチンのために必要なんでしょうか。

屋根が抜けはしないか、と心配性な私は心配になりました。

ここへ来て自分のTOEIC受験のことも少し心配になってきました。

唐揚げ弁当の栄養がいくらかでも脳に供給されることを祈ります。

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四天王寺仏教大学のある羽曳が丘の住宅地から、遠くの山並みを眺めます。

 

この後受けたTOEIC試験は、前回の受験から試験内容が随分変わっていて、大いに焦りました。

現在、試験結果待ちです。

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初詣に隣県へ。西宮市の旅

もう一ヶ月前の話になりますけれど、三が日に初詣に行って来たんですね。

兵庫県の、西宮市に行って来ました。

西宮神社という神社があるんですね。

隣県に初詣。

これも旅です。

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阪神電鉄西宮駅で降りて参りました。

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西宮神社は、商売の神様である恵比須(戎)を祀る「えびす宮」の総本社にあたり、同じく恵比須を祀る大阪の今宮戎神社と並び庶民による信仰が篤いです。

毎年1月9日から11日に開かれる「えべっさん」のお祭りが有名であります。

私はこれまで西宮神社には来たことがなかったので、初詣の機会にやって参りました。

しかしさすがに庶民に人気の神社とあって、西宮駅から降りてくる参拝客らしい人たちの数も結構なことになっています。

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この大勢の人の流れについていけば、神社まで道に迷うことはないでしょう。

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西宮は伝統芸能として人形芝居が根付く土地でもあるようです。

えべっさん信仰と関係あるのかもしれませんね。

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神社までの参道に、多くの出店が軒を並べています。

えべっさんのお祭りは出店がたくさん出ますけれど、それより前の三が日の時期にしてすでにこの規模。

出店の人たちも商売っ気がありますね。

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美味しそうなソースと脂の香りに心を動かされます。

でもこういう屋台の食べ物って高いので、あんまり私は買う習慣が無いんですよね。

台湾に行ったときも夜市の出店がお値段高め設定のお店ばかりで、素通りしてしまったものでした。

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いよいよ境内へ。

お参りしましょう。

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境内にも出店が多いです。

出店で売られるものも様々。

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初詣。

お参りしました。

今年一年、恵比須様の御利益が見込めることと思います。

「商売繁盛笹持って来い」の文句で囃す、えべっさんのお祭りの活気を想像しながら、西宮神社を後にしました。

 

お参りしてすぐ帰ってしまうのも味気ないので、西宮市内を散策していきますよ。

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阪神高速高架下の歩道橋を渡って南へ向かいます。

阪神高速沿いに歩けば、高架下歩道橋の存在は約束されたようなものです。

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西宮神社の南方には酒造会社が集まっているのです。

「灘の酒」と言いまして、兵庫県の西宮市から神戸市にかけての一帯は土地が水に恵まれていることもあってか、昔から酒造りの盛んな土地柄なのですね。

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若干日当たりの悪い酒蔵通りでした。

背の高い倉庫が隣に建っているからですね。

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酒造会社、白鷹の工場がありました。

三が日は稼働していないようですね。

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白鷹のお酒は地元の西宮神社に留まらず、伊勢神宮にも御神酒として奉納されているとのことです。

それにより伊勢の神宮司庁よりこの碑を下賜されたと案内版に書いてありました。

なんだか白鷹を飲みたくなってきます。

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白鷹の工場から道路を挟んだ隣に、白鷹禄水苑という商業施設があります。

白鷹の各種お酒の販売の他に、蔵BARで一杯飲んでいくこともできるみたいですよ。

白鷹禄水苑の敷地内には、酒造りの道具などの展示資料を集めた白鷹集古館も併設されています。 

しかし私は三が日だから閉館しているだろう、と思い込んで、確認もせずに通り過ぎてしまいました。

北の方角に戻ります。

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歩いていたら、澁谷ビルを見つけました。

澁谷ビル、西宮にあったんですね。

去年の東京旅で渋谷に行ってきたところだったので、嬉しくなりました。

なかなか雰囲気のあるアパートのようです。

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上を阪神高速が通る大通り沿いに、酒造会社沢の鶴の「宮水井戸」もあります。

沢の鶴って大阪でもテレビ放送等で広告をよく見ますが、実は西宮の会社でした。

宮水というのはこの西宮市内で湧出する特殊な水のことで、六甲山系の山々から流れてきた水が地中で各種ミネラルを吸収し、この一帯で酒造りに適した美味しさになって湧くのだそうです。

白鷹、沢の鶴等の酒造会社が市内の一地域に集中しているのはこの宮水の採取のためだったのですね。

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宮水井戸の敷地は入口が閉じられていて入れませんが、中が覗けます。

ただ写真は上手く撮れませんでした。

向こうの方に宮水井戸らしいものが見えました。

宮水って飲んでみたいですね。

どんな味なのでしょう。

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阪神高速の高架沿いに、西宮駅まで戻ります。

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「宮水発祥の地 銘酒のまち西宮」。

そうですよねえ。

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せっかく銘酒のまちに来たんだから、昼間からワンカップ大関ミニを呑むぐらいのことはしても罰は当たりませんよねえ。

三が日で酒店が閉まっていて、コンビニで買えた地元のお酒が、このワンカップ大関ぐらいだったのです。

どこのコンビニでも買える、ワンカップ大関ですけれども。

西宮産のお酒だったのですね、実は。

私も西宮のコンビニで瓶のラベルを確認して、初めて知りました。

つまり宮水も使われているわけです。

ワンカップ大関をたぶん今回初めて飲みましたが、辛口の中に、なんとなくコクがあるような気がしました。

宮水の滋味でしょうか。

本場西宮で口にするワンカップ大関の味は格別です。

初詣と西宮市の旅でした。

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東京旅行三日目(7)。どこへも行ける、日本橋。もう帰ります

馬子禄で蘭州拉麺の昼食の後、いったん神保町駅東京メトロ半蔵門線の電車に乗りまして。

大手町駅経由で、東京駅近辺に戻って参りました。

そろそろ帰り支度の時間が近づいています。

その前に、東京駅近辺で見たい場所があったのです。

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日本橋です。

日本橋って有名ですよね。

東京に来たら日本橋観光、みたいなイメージありますよね。

私だけですか?

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日本橋にやってきました。

こういう場所だったんですね。

日本橋の上を首都高の高架が通っていて、その高架に「日本橋」のプレートが掛けてくれてあります。

親切ですね。

でも上の高架の方を日本橋と勘違いする観光客もいるんじゃないですかね。

大丈夫ですかね。

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日本橋の欄干の上に守護獣的な人がいますね。

車輪を足先に抱えた獅子のような。

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見事な造形の獅子です。

勇ましくあります。

足先に抱えているのが車輪か盾か何だかわかりませんでしたが、後で調べたら東京の市章だということでした。

昔、東京が東京市だった頃のものなのでしょう。

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首都高の高架下には遊覧船の乗り場がありますね。

この川、神田川の分流で「日本橋川」というのだそうです。

日本橋の下を流れている日本橋川

わかりやすくてよろしいですね。

東に日本橋川を下って行けば流れは隅田川と合流し、やがて東京湾に出ることができます。

私は船に乗らず、海にも出ないで日本橋周辺をうろうろします。

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橋の中ほどには守護獣の麒麟が構えています。

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獅子に輪をかけて、こちらも凝った見事な造形です。

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私は高架が好きなので、首都高高架下に掛かる日本橋に魅力を感じるのです。

ただ「高架が日本橋の景観を損ねる」という主張もあるそうで。

その気持ちもわかる気はします。

この辺り、日本橋北側の岸辺は江戸時代に魚河岸があった場所でもあります。

当時の人の往来は、今よりももっと賑やかだったのでしょう。

目の前に高架があると、かつての美観というものは想像しにくいですよね。

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日本橋の北側にはこの風景があります。

私は田舎者なので「ニューヨークっぽい町並みだな」という感想を持ちました。

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三越ビルのスケールの大きさ。

現代の高層ビルとは違う建築の美しさがあります。

 

この界隈に「按針通り」という通りがあって、三浦按針(みうらあんじん)の屋敷があった通りらしいので、見ておくことにしました。

三浦按針は本名がWilliam Adams、江戸時代初期のイングランドの航海士で、日本に漂着した後に徳川家康(とくがわいえやす)の外交顧問となった人物です。

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按針通り、いまいち按針っぽさがわからない通りでした。

後で調べたところ、この通りの先に按針の屋敷跡の石碑があったそうなのですが、按針っぽさに鈍い私はそこまで行かずに引き返してしまいます。

隣のむろまち小路ものぞいておきましょう。

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むろまち小路の方は手前の方に鰻屋さんがあって飲食店も多くて、散策によさそうな通りでした。

鰻、食べたいですね。

しかし数が減っているというし、我慢です。

鰻と違い、私の財布の中身はいずれ増やすことができます。

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日本橋国道1号線を始め、多くの国道の始点になっているのです。

国道1号線は、大阪の梅田まで東海道を通して続いているのですよ。

ここを中心に、日本全国に旅立つことができるんですね。

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日本橋から東京駅方面まで歩いて戻りながら、この界隈やっぱりニューヨークの雑踏っぽいな、と思いました。

私の脳内のニューヨークってこんな感じなんですね。

 

東京駅から高速バスに乗って成田国際空港まで一時間と少し。

そこから飛行機で関西新空港まで無事に戻って参りました。

二泊三日、いろんな刺激のあった、楽しい東京の旅でした。

お土産は、日本橋日本橋屋長兵衛で買ったバター風味焼カステラでした。

おいしゅうございました。

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東京旅行三日目(6)。神保町でお昼。馬子禄の牛肉面は黒酢を是非に

靖国神社を後にしまして、目の前に下り勾配の九段坂です。

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靖国神社参拝中はある種の緊張感で気が張っていました。

緊張感がなくなると、おなかが空きますね。

これから九段坂を降りて、東の神保町界隈に歩いていきます。

神保町で昼食にする予定であったのです。

やっぱり、お目当てのお店があってですね。 

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休日の神保町は、古本まつりの最中でした。

老若男女で結構な混雑です。 

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そして、今回のお目当てのお店がここです。

蘭州拉麺の馬子禄(マーズルー)です。

蘭州拉麺って人気だそうで、でもまだ食べたことがなくて、気になっていたんですね。

この馬子禄ってお店は本場中国、甘粛省の州都蘭州市で人気を誇る老舗なんだそうですよ。

この神保町のお店が日本第1号店だということです。

日本第1号店の響きに弱い私です。

お店の前に行列が出来ていまして、30分ばかり並んだ末の入店でした。

お店の内装は中国の高級飲食店がこんな具合なのだろう、と思わせる落ち着いた雰囲気になっています。

自販機で食券を買って、テーブルに座ります。

麺の固さ等も自販機で選べます。 

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お茶のグラスのデザインも洗練されていますな。

お茶自体も中国茶というんでしょうか、日本のお茶とは違った苦味のある味ですね。 

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名物の牛肉面をいただきましょう。

880円といいお値段です。

しかしいい香り。 

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スープ、麺、牛肉、大根、香菜とシンプルな成り立ちながら。

出汁の効いた自然な旨味のスープにラー油の刺激が加わり、しみじみ美味しい一品でした。

日本のラーメンとうどんの中間に位置する存在感と言っていいでしょう。

 

ところで、私の隣のテーブルには中国人らしい男性客が座っていまして。

店員さんに「黒酢はありませんか、蘭州のお店なら黒酢は必須です」と訴えて、黒酢を持って来てもらっていました。

それを見ていて、私も気になってきたのです。

黒酢を入れたらそんなに味が変わるものなのかな、と。

それで私もお店の人に頼んでみました。 

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テーブルの上には常備されていませんが、店員さんに頼むと持って来てもらえます。

黒酢のポットです。

私も牛肉面のスープに適量垂らして、味わってみました。

なるほど、黒酢を入れるのと入れないのとでは香りと味わいが段違いです。

若干の甘味と酸味が加わることで、スープに奥行きが出るのですね。

もとから美味しいスープでしたけれど、黒酢を入れるとより美味しいです。

まずは黒酢無しでいただいて、途中で加えて味の違いを楽しむのもいいですね。

読者の皆様が馬子禄に入る機会には、忘れずに黒酢を頼んでみて欲しいと思います。

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