福島駅から河川敷へ。大阪市の旅

所用があって、そのついでにまた大阪市内を歩いてきました。

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JR大阪環状線の福島駅にやって来ましたよ。

福島駅は大阪駅のお隣で、この福島界隈はオフィスビルと飲食店が多いです。

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駅の近くにある商店街には、占いのお店が集まっていることでも有名です。

売れても占い、福島聖天通商店街。

環状線の高架を挟んだ向こう側にある了徳院というお寺が、歓喜天(聖天さん)を祀っていることにちなんだ名前のようですね。

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売れても占い商店街には、飲食店が目立ちます。

夜間営業の居酒屋店などが主なのか、私が来た日中には閉まっているお店が多かったです。

占いのお店は、商店街の入口辺りでは見かけませんでした。

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福島を南北に通るメインストリート、なにわ筋沿いには、関西将棋会館もあります。

中にはプロ棋士の指導を受けられる将棋教室とか、将棋道場もあって、対戦もできるらしいですよ。

私は将棋が弱くて苦手なのであまり入る気になれませんが、好きな人なら楽しめると思います。

 

界隈を北に向けて歩きます。

北にある、淀川の河川敷を見てみたいな、と思ったのですね。

なにわ筋の西を通っている、あみだ池筋を抜けて行きますよ。

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これお寺さんの建物らしいんですが、最初見たときマンションだと思いました。

本門佛立宗という、日蓮上人の流れを汲む宗派だそうです。

この大きな建物の中に本堂、講堂など各種の施設が入っているんだとか。

都会だと、お寺さんもこう現代的になるんですね。

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八阪神社もありました。

境内に社殿の復興記念碑がありまして。

その碑文によると、この神社の辺りは「王仁(わに)博士」ゆかりの土地なんだそうです。

王仁は古代、朝鮮半島にあった百済国から日本までやって来て、漢字等を伝えた人だという伝承があります。

もともと、その王仁博士を祀っていた祠がここにあったそうで。

ところがその祠が天変地異に遭って、土中に埋もれてしまいました。

数百年後に土地の人が祠の跡を発見して、改めて素戔男尊を合わせてお祀りするようになったのだそうです。

それが八阪神社になった由来なのですね。

江戸時代に社殿が復興されましたが戦災で失われたので、戦後新たに有志の力で再建されたということです。

街中の小さな神社でしたが、いろいろと来歴があるのですね。

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境内には猫ちゃんの姿がちらほら。

 

お参りの後、再び歩きを再開します。

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梅田スカイビルの姿が見えます。

大都会梅田の西にあるこのあみだ池筋沿いは、工場に個人商店などが多くて、若干庶民的な町の雰囲気ですね。

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本格的に工場の多いエリアにやってきました。

ここまで来ると、淀川の河川敷まですぐです。

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工場のレンガ壁に接する公園、なかなかいい雰囲気。

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河川敷に出る鉄橋を発見しました。

渡りましょう。

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静かに渡りましょう。

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風で揺れます。

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土手の向こうが河川敷。

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風景が開けました。

こんな感じなんですね。

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都会と工場街とを抜けた先にこういう広々とした場所があって、何か緊張がほぐれました。

しばらく立ち尽くして、広さを堪能します。

河川敷の公園、いいですね。

 

歩き回っておなかが空いたので、帰る道がてらお昼をとるお店を探すことにします。

と言っても、福島界隈に目星をつけているお店がありましてね。

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心斎橋に本店のあるラーメンチェーン、「ラーメンまこと屋」の福島店です。

お隣には「福島上等カレー」の本店も見えますね。

以前にこの福島店で何度かラーメンを食べていたのですが、いつの間にか道路向かいの場所に移転して新しくなってました。

ここのラーメン、結構好きなのです。

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「とろ~り半熟煮玉子鶏醤ラーメン」を注文しました。

750円でした。

ネギ、白菜等の野菜がたっぷり入った、鶏ガラスープの醤油ラーメンです。

煮玉子とろとろ、チャーシューもとろとろ。

スープには鶏のそぼろ肉も入っています。

麺は細麺で、ゆで加減も選べます。

美味しくいただきました。

今回は鶏ガラの鶏醤ラーメンにしましたが、ラーメンまこと屋では牛骨スープの牛醤ラーメンも美味しいです。

大阪府内のあちこちに支店があるので、大阪にお越しの際に機会があればぜひ入ってみてください。

 

帰り際の一枚。

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JR福島駅ホームからの風景です。

飲食店の多い福島界隈、食べ歩きが楽しそうです。

時々遊びに来たいものですね。

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『蓄財、それは善行から』

折々にテレビ番組を見ると、新しい知見が得られるのである。

私の場合、お金が欲しい。

テレビ番組で、お金儲けについて知りたいのだ。

でも私の頭では、お金を得るための難しい話はわからない。

それなので真面目な経済番組ではなく、もう少し俗なお金儲けの番組を好む。

具体的に番組名を挙げれば、『突撃、隣のお金持ち』。

こういう番組がある。

レポーターの男性タレントが資産家の家に赴き、彼らの蓄財術についてインタビューを通して聞き出すという番組である。

私のお気に入りである。

今夜も自室の畳の上に雑魚寝をしながらテレビを見上げ、録画しておいた同番組を見ている。

今回登場したのは、某有名高級住宅地に住む資産家の男性である。

「立派なお住まいですねえ~」

邸宅の居間に通されたレポーターの男性タレントが、いやらしい愛想笑いをする。

資産家たちに対する彼の露骨な追従ぶりと、それとは裏腹に時折見せる冷淡な態度も、この番組の魅力のひとつだ。

番組の視聴者は、わかっている。

この男性タレントは、資産家連中の隙につけ込んで、うまく彼らから蓄財術を聞きだすためにそうしているのだ。

「ご主人、ここまで稼ぐには悪いことのひとつやふたつ、やってるんでしょ?」

歪んだつくり笑いと共に、指で円を作って「ゼニ」のゼスチャー。

この品のないレポーターがこれで、テレビの前の視聴者たちから絶大な支持を受けている。

皆の味方なのだ。

蓄財術を聞き出してくれるのだ。

今回の資産家男性は、追及に笑顔を向けて返す。

「いやあ、悪いことは一切やってません」

「ほんとですかあ~?資産家の皆さんは嘘がお上手な方ばかりで」

「いや、私に限っては本当に違います。いいことしかやってません」

「うまいことおっしゃる」

「いや、本当に。私は善行だけ積んでお金を貯めたのです」

「善行って、具体的にどういうことですかあ~?」

と変わらぬ調子で言いながら、画面に映るレポーターの目付きが変わっている。

鋭くなった。

「だってその、善行だけで高級住宅地に家を建てるなんて、普通に考えて無理ですよね?」

資産家男性は首を振る。

「逆です。まずこの高級住宅地に家を借りたので、善行が積めるようになったのです」

「はあはあ」

「お金が貯まった後に、土地を買って、家を建て直しました」

「なるほどなるほど」

うなずきながら、レポーターは露骨なまでに胡散臭そうな目を資産家に向ける。

そんな目で見られて、資産家は顔を赤くした。

「本当なんです。説明させてください」

「どういう善行なんですか?」

「私は、パンの耳から始めました」

「えええっ、パンの耳?」

レポーターは大げさに驚いたような、馬鹿にしたような声をあげる。

彼の反応に苛立たない資産家はいない。

「パンの耳が善行?」

「いや、だからですね」

資産家は前のめりになる。

「ここに昔、古い小さな家が建ってましてね。昔自殺者があった家だとか、いわゆる事故物件で」

「ええっ、まさかこのお宅がそうなんですか?」

「ええ、いやですから、その建て直す前の話ですが」

レポーターの大げさな身振りを無視しながら男性は続ける。

「そういう物件だったので、周囲の環境の良さとは裏腹に、安い家賃で借りられたのです」

「はあはあ」

「あばら屋でしたし、亡くなった方の霊も出るって噂でした。ただ私は普段から自分の行いには気をつけていますし、祟られるいわれなどありませんから。むしろここに善良な私が住むことで、亡くなった方の霊を慰めることができればと…」

「パンの耳の話はどうなったんですか?」

「だから、それをこれから話そうとしてたんですよ」

資産家は、声を荒げた。

「いいですか、この近所には、パン屋さんが何件もあるんです。この界隈に住んでる人たちはお金持ちで、洋食かぶれの方が多い土地柄ですから、皆さん決まって朝から食パンを召し上がるわけです」

「はあはあ」

「需要があるものだからパン屋さんたちも食パンをたくさん焼くんですね。そしたらたくさん売れる。でも、食パンをつくる過程で切り落としたパンの耳が大量に余るんですよ」

「はあはあ」

「そういうパンの耳の処理にパン屋さんでは困るので、店頭に置いて無料で配るんです。でもこの界隈にいるのはお金持ちばかりだから、そんなパンの耳なんかには目もくれないわけですよ」

「はあはあ」

レポーターは資産家を見据えがら、素っ気無い相槌を打ち続けた。

「ですからね、パン屋さんたちはもったいないと思いながらも、引き受け手のないパンの耳を処分していた。それで私は、そんなパン屋さんたちからパンの耳を一手に集めることにしたんです」

「なんのために?」

「人助けですよ。善行ですよ」

真っ赤な顔で、資産家男性は言い返した。

レポーターは、馬鹿にした顔で相手を見ている。

しばしの間。

「…人助けでパンの耳を集められたんですか。パン屋さんたちが困ってたから?」

「そうです、そうです」

「パンの耳を食べて、食費を節約ですな」

「いや、そういうことじゃないんですよ。私は人助けと思ってパンの耳を集めて」

「まあそれはそういうことにしておきまして、で、どうやって蓄財されたんですか?」

レポーターは付き合わない。

資産家は、空気を吸った。

「それは、パンの耳を集めていると不思議と食べ物に困りませんし、他の善行からの御利益もありまして」

「他の善行?どういうことですか?」

「実は以前からこの界隈、無認可の廃品回収業者が暗躍してましてね」

「はあはあ、暗躍ね」

レポーターは話を合わせた。

「廃品の収集日にですね。区から委託された正式な業者が収集に来ますよね。でもその直前に、無認可の業者が軽トラックに乗って来て金目の廃品をさらっていくんですよ。この辺り、お金持ちの方が多いですから」

「ああなるほど」

「廃品であっても、お金になりそうなものが多いわけでしてね。で、そういう無認可業者が引取場所を荒らすやり方が酷くて。あと、ああいう連中は廃品を持っていった後にどういう扱いするんだか、わかったもんじゃないですから」

「まあ、そうですわね」

「廃品から個人情報を探られるおそれもあるし、その廃品をどこか郊外の山林にでも不法投棄されたりするなんてこともあるから」

「そうですわね」

「問題になってたわけなんです。この界隈の皆さん、困られてまして。そこで私が、考えたんですよ」

資産家は、心持ち得意げな表情を見せた。

「そんな得体の知れない無認可業者に比べたら、ご近所の私の方が信用があるでしょう、と」

「どういうことですかね?」

レポーターは首をひねった。

そうしながら油断なく、話し手の目を見ている。

「これも善行ですよ。廃品の収集日の朝早くに、引取り場所に行きましてね。ずっと見張ってて、無認可の業者が廃品の横取りをしにくいように。相手が実力行使に出る場合、追っ払ったりもするんです」

「なるほど」

「そうするとお金持ちの方の中には、あなたならご近所で素性が明らかだから、廃品で欲しいものがあれば持ってってください、と。そう言ってくれる人も多いんですよ」

「それはつまり、いわゆる金目のものを無認可業者より先にいただく、ということですね?」

レポーターは率直に言った。

「そういうことじゃないんですよ、あくまでこちらの好意で廃品を引取らせてもらうだけなんです」

「はあはあ、まさに善行ですよねえ」

相槌を打つレポーターの口調には、皮肉めいた響きがある。

「あんたね、ずっと我慢してたけど、いったい何なんですかその態度は」

急に激昂する資産家男性。

彼も我慢していたのだ。

「なるほど、なるほど、お話ありがとうございました」

レポーターの男性タレントは相手に取り合わず、カメラの方に意味ありげな視線を送った。

 

テレビ画面を見上げて、私は首をひねっている。

「高級住宅地で事故物件を探せっての…?」

番組内容に思いを巡らせる。

件の資産家男性がパンの耳によって食費を浮かせることができたのも、金目の廃品を集めることができたのも。

最初に高級住宅地で、事故物件を見つけることができたからだ。

私は、とても真似できそうにない、と思った。

高級住宅地に事故物件なんてそうそうないだろうし、だいたい、私は怖がりなのだ。

亡くなった人の霊が怖いので、たとえ事故物件を見つけたとしても住めない。

なら高級住宅地をあきらめて、今いる土地であの資産家男性と同じことを試してみようか?

しかしパン屋さんは近所には少ないし、廃品回収に出される品目だって、一般の住宅地ではありふれた廃品ばかりだ。

それらでお金を稼ぐのは難しいだろう。

今見たテレビ番組の内容を、どうにかして自分の蓄財に活かすことができないだろうか?

 

後日、私はファミリーレストランで食事をしている。

近くのテーブルに、一組のファミリーがいる。

ミモザちゃん、どうしてピザ食べないの?おなか空いてるでしょう?」

母親が、隣に座った小さい子供の食事具合を見て、声をあげている。

「だってピーマン入ってるじゃない。ピーマン嫌いよ。ピザにピーマンだなんて、聞いたことがない」

子供は甲高い声で訴えた。

「ここのピザにはピーマンが入ってんだよ、それが味のアクセントなんだよ」

父親が子供に諭すように言っている。

だが、子供は聞き分けが悪い。

「ピーマンの味がするピザなんて私は食べたくない、イタリア人だってこんなの食べないよ」

「イタリアにだってピーマンの入ったピザぐらいあるわよ…」

「そんなのは偽者よ、きっと本場のピザを知らないチュニジア人とかクロアチア人がつくってるのよ、この店のピザもチュニジア人かクロアチア人のシェフがつくってるんじゃないの?」

ミモザちゃん、やめなさい。厨房に聞こえたらどうするの」

駄々をこねる子に、母親は狼狽している。

背中にファミリーの会話を聞きながら、なるほど、と私は合点がいった。

あの子は、ピーマンが嫌い。

きっと私が声をかければ、あのピーマン入りのピザを私にくれるだろう。

つまり、善行というのは、今のピーマンのような立場の資源をうまく回収することなのだ。

パンの耳しかり、金目の廃品しかり。

ピーマンしかり。

いらないから持っていって欲しい、という相手から合意のもとに資源を集める。

そういう資源を集めて、お金に換える。

それはお金も貯まるはずだ。

 

私は自分の料理を食べながら、現実味を帯び始めた自分の蓄財について、思いを巡らせる。

ピーマン嫌いの人たちからピーマンを集めて、お金に換えよう。

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『活字中毒のひと』

私が活字中毒、と言うのは言い過ぎだ。

「いや、活字中毒ですよね?」

人の指摘は、厳しい。

「でも私程度で。活字中毒って、言ってしまっていいのかな」

目の前の相手が着ている派手なTシャツには、英文のコピーライティングが印刷されている。

私はその文面を離れたところから、人差し指でなぞるようにして読んでいる。

活字中毒ですよ。普通、人と話してる最中に、相手のTシャツの英文読んだりなんかしませんよ」

相手はすねたような声で言う。

話を聞いて欲しかったらしい。

でも、私は人の話を聞くより、文章を読む方が好き。

「僕の話、聞いてくださいよ」

「聞いてますよ」

と受け流しながら、私は相手のTシャツの英文を読む。

 

I am what I've eaten, I am what I've read, I am what I've sung.

 

そう書いてある。

私は私が食べてきたもの、読んできたもの、歌ってきたもの。

そんな内容だ。

ひねりがない、ありがち。

そう思った。

凡百のTシャツにある文句だ。

少し物足りない。

「満足できませんでした?」

相手は私の顔色をうかがいながら、尋ねた。

「ちょっと後ろ向いてくれませんか」

私は彼の問いに答えず、要求する。

「なんで?」

「いや、ちょっとだけですから、黙って後ろ向いてください」

私は発作的にむずむずしてきたので、性急に言った。

相手は、ため息をついた。

「どうせ背中の方にも何か書いてないか、見るつもりでしょう?」

「それだけわかってるなら早く後ろ向いてください」

私は、声を高める。

相手は仕方なくといった様子で、私に応じてこちらに背を向ける。

男性の背中に、私は視線を注いだ。

思ったとおり、彼の背面にも、英文のコピーライティングが印刷されてある。

 

...and I am who she've loved.

 

そして私は、彼女が愛していた者。

そんな意味。

ああ、オチまでありがちだった。

私は泣きたくなった。

陳腐な文句が胸と背中に書かれたTシャツを着て、この人は恥ずかしくないのだろうか。

私はため息をついた。

「どういう意味だったんですか?」

Tシャツの着用者は、私の反応を見て興味をそそられたらしい。

英文の意味を知らないみたいだ。

デザインに惹かれて、書かれた英文の意味もわからず着ていたんだろう。

これは、正直に教えてあげた方がいいのだろうか。

あのね、こういうTシャツを着てると、過去の恋愛に未練がましい人みたいですよ!

でもそう正直に教えた結果、「そんなネガティブな意味だったんですか、じゃあ脱ぎます!」と上半身を露出でもされたらこちらが困る。

私はもう、脚色してしまうことにする。

「これ、わりと扇情的な内容ですね…」

私は言葉を選びながら言った。

「はあ?せんじょうてき?」

男性は、大きな声をあげる。

店内の客たちが、私たちの方をいっせいに振り返った。

「しっ、大きな声を出さないで」

私は慌てる。

逆効果だった。

事を大げさにしたくなかったのに。

「せんじょうてき、ってどういう意味ですか?」

相手は無邪気な声でなおも言った。

私は、困った。

「扇情的というのは、つまり、sensationalな内容を含んでいるということです」

「ええと、そのsensationalっていうのもよくわからないんですが。意味は?」

相手は、興味をそそられたような顔で追及してくる。

やってしまった。

これだったら、相手にこの場でTシャツを脱がれていた方が、まだましだった。

私は困ってしまい、テーブルの上のグラスを手に取って、中のお酒を飲んだ。

お酒に強くない私でも飲める、アルコール度数の低いお酒だ。

「教えてください、sensationalって?」

テーブルの向かいから身を乗り出すようにして、男性は好奇心に満ちた声をぶつけてくる。

逃げなければ。

私はグラスを置き、代わりにテーブルの上からメニュー表を手に取った。

このお店の創業の経緯、提供する各料理、店の心得。

それらを私は黙読し始めた。

男性が執拗に呼びかけてくる声も、もう耳に入らない。

私は、活字中毒者だから。

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もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ

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『食事作法、美意識の範囲』

食事は、いかに音をたてずに執り行うか。

それが肝要だと私は思っているのだ。

できる限り、静かにものを食べる。

誰しも、食事はそうやってとるべきだ。

そう思っているので、昼時に入った行きつけの食堂で、私は大きな殺意を覚えている。

カウンター席の隣に座った客の食べっぷりが、実に騒々しく、不愉快なのである。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

隣に座った男性が、そんな咀嚼音をたてて騒々しく物を食べている。

かの人物が食事する際の咀嚼音をあえて字で表現すれば、上記のようになる。

見るからに不愉快な字面である。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

私は、舌打ちしたい気分だった。

私が今食べているスープカレーは各種野菜のだしが利いて、とても美味しかった。

だが隣でうるさく咀嚼音をたてられては、せっかくの味もわからなくなる。

心がかき乱されるからだ。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

隣の男性も、スープカレーを食べている。

しかし、なんと気に障る咀嚼音であること。

スープカレーは当然、汁気が多い料理なので、スープを飲む際には気をつけないと音をたててしまう。

食事で音をたてるのが嫌な私は、たしなみよく静かにスプーンでスープをすくい、口に運ぶ。

しかし隣の男性は、スプーンを豪快に振るって、皿からスープを口内にかき込んでいるのだ。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

いい加減にしろよ、と私は言いたい。

隣でそんな音をたてられるだけで、食欲が減退してしまう。

スープを音をたてずに飲めない人間には、美味しいスープカレーを口にする資格などない!

食事にストイックな私は、そこまで考えているのだ。

隣の男性は、スープカレーを食べる資格なんぞない人間なのだ。

不愉快だから、さっさと食べ終わって出て行ってくれないだろうか。

「ぐりゅっ、ぷぴぴ、ぺろぺろ」

私は、ため息をつきたい気持ちを押し殺して、音をたてずにスープを飲み続ける。

 

「マスター、おあいそ」

隣の男性客が立ち上がりながら、不機嫌そうに言うのが聞こえた。

私はそれとなく、彼の顔を見上げる。

しかめ面をしながら、男性はカウンターの向こうにいるマスターに、食べたものの代金を支払った。

お釣りを受け取った後、店内をずかずかと乱暴に歩いて進んで行く。

体当たりするような勢いで扉を開けて、外に出て行った。

どこまでも騒々しい客だ。

まったく何様なのだろう。

しかしこれで私はようやく、心置きなくため息をつくことができた。

「あのお客、他の席に座らせた方がよかったかな」

マスターは苦笑いしながら私に語りかけた。

私のため息を見ての言葉なのだ。

気を遣ってくれているらしい。

私は、苦笑いを返す。

「まあ、勘弁してあげてよ」

私の顔を見て、マスターはそう言った。

「勘弁ですか。まあ…」

私は言葉をにごす。

終始、咀嚼音をたてながらの食事ぶりと、出て行く際にも騒々しかった男性客。

彼のことを思い出すと、どこをとっても不愉快だった。

勘弁するのは難しい。

「あの人は、ああいう人でさ」

マスターは、苦笑しながら続けた。

「総入れ歯なのよ」

「はっ?」

マスターの言葉に、私は思わず目を見張ってしまった。

「総入れ歯?」

「うん」

と、マスター。

さっきの男性客のことだろうか。

総入れ歯にするような、そんな年配には見えなかったが。

「事情は知らないけど、若い頃に歯が全部なくなっちゃってさ。今、総入れ歯にしてるんだって」

「はあ…」

私は、生返事を返すぐらいしかできない。

「総入れ歯だと、スープをうまく吸うのも難しいんだってよ。どうしても、すする感じになっちゃうんだね」

「そうだったんですか…」

私は、頭の中が真っ白になった。

「うん、そうらしいの。彼、うちのスープカレーを気にいってくれてるみたいだから、ちょっと気の毒なんだよねえ」

マスターは残念そうに言った。

私は、かろうじてうなずく。

優しいマスターなのだ。

それとなく、私のことをたしなめているのかもしれない。

 

音をたてずにスープを吸うことができない人の隣で、ことさら静かに食事してみせた私だった。

そうしたくてもできない身の上の人にとっては、私の食事ぶりはあてつけのように感じられたとしても不思議ではない。

私が男性客の食事ぶりに殺意を覚えたのと同様に、彼の方でも私に殺意を覚えていたのかもしれない。

店を退出する男性の不機嫌な様は、その一端なのだろう。

「お客さんみんなに、楽しくごはんを食べてもらいたいんだけどね。簡単なようで、難しいよね」

気のいいマスターは、何気なく私に語る。

件の男性客とマスターの心情を思い、私は己を恥じていた。

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『寝ていたいが、先輩の言葉』

怒鳴り声が辺りに響いている。

「おい、役立たずがごろごろしやがって、邪魔だ」

私は、道の真ん中に寝そべっている。

怒鳴り声は、辛辣なものだった。

それは明らかに、私を指したものだ。

ただいくら辛辣な怒鳴り声でも、それが自分の発したものであれば、いくらでも耐えられる。

「おい、邪魔だっつってんだろ、どけよ」

私はごろごろしながら、口先で怒鳴り声をあげた。

背中を地面につけていると、肺が圧迫されて、大きな声をあげるのにも技術がいる。

「邪魔だな、こいつ。いったい誰の許しを得てごろごろしているんだ」

思いつくままに、私は声をあげ続けた。

体はだらしなく路上に横たえたまま。

道行く人たちは、眉をひそめて私に視線を落としながら、構わずに通り過ぎて行く。

当然だ。

寝そべったまま吠えている奇怪な人間、関わったら損だ。

企みがうまくいっているので、私はほくそ笑む。

こうやって、誰かに怒鳴られる前に自分で自分に怒鳴っていれば、誰も怒鳴ってこない。

私は、他人より先回りして自分を怒鳴りつけているのだ。

これも処世術である。

すでに自己批判している者を、誰も批判することはない。

他人から批判されることを避けようと思うなら、まずは自己批判だ。

「昼間から道端に寝転がってこんな奴、ろくな奴じゃないよ」

昼間から道端に寝転がりながら、私は大きな声をあげる。

ろくな奴ではない。

道行く人たちが、あいつ自己批判しているな、といった顔で私を見ながら通り過ぎる。

あえて私に語りかけることはない。

いいぞ、と私は思う。

昼下がり、道端に寝転がってのんびりするのには最高な、気持ちのいい時間だ。

このまま、怒鳴りながら、他人からの追及を避けて。

夕方までまったりしよう。

そう目論んだときだった。

「おい、君、いい加減に静かにしてくれないか」

静かな、それでいて力強い声が私に降り注ぐ。

私自身の声ではない。

私は、寝転んだまま、体を強張らせた。

他人からの追及を受けた。

あれだけ自己批判を繰り返していたというのに。

それでも、声をかけてくる人がいる。

私は上半身を起こした。

近くに、寝そべっている人がいた。

高齢の男性だ。

グレーのスーツを着て、黒縁の眼鏡をかけた、人品卑しからぬ風体。

そんな人物が、私と同じように道端に寝そべっている。

スーツが土に汚れるのも構わず。

こんな人物が近くに寝ていることには、気付かなかった。

「さっきから騒々しい。君の横暴な声に、私の思索は妨げられているのだ」

男性は控えめな声で訴えた。

私は、萎縮した。

「申し訳ありませんでした」

頭を下げた。

眼鏡の奥から、男性の細い目が私を見ている。

「君、見たところ、まだ若いな」

「はっ…」

男性に鋭く指摘され、返す言葉もない。

「いいかね、君。私がこうやって道端に横たわって思索にふけるのも、これまで長年、実生活で充分な経験を積んできているからこそだ」

男性は寝転がりながら、重々しい声で言った。

私はうやうやしく言葉を拝聴する。

「君のような若い者は、まだ寝そべって思索にふけるには早い」

「は…」

批判めいた調子に、私はただただ頭を下げる。

「立ち上がりなさい。立ち上がって、世界を見てきなさい」

男性は、力強い声で命じた。

言い返す言葉が思いつかない。

しかし本心を言えば、このまま、寝ていたかった。

「駄目だ。横になって死を待つには、君はまだ早過ぎる」

まだためらっている私に、男性はさらに声をかける。

死を待つ、という言葉は重い。

私は、思わずうなずいていた。

「全ての可能性に賭け終えた後、またここに寝に戻って来たまえ」

私の顔色を見て、男性は声色を和らげた。

「はい」

私は立ち上がった。

世界を見る。

可能性に賭ける。

そう言われると、確かに私にはまだ世界を見る余地も可能性に賭ける余地も、残っている気がしてくる。

「ちょっと行ってきます」

「元気でな。時々手紙をくれよ」

寝そべったままの男性に見送られ、私は旅に出た。

本当のことを言えば、あのまま私もごろごろしていたかったのだが。

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『瞬殺猿姫(41) 猿姫、行き先を思案する』

猿姫(さるひめ)は、心の疲れを押して祠に戻った。

「猿姫殿っ」

観音扉の戸を開けるなり、歓声を耳にする。

織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)の声である。

「お帰りが遅かったので、拙者心配しておりました」

祠内部の薄暗い中に、猿姫を迎える三郎の人懐っこい顔がある。

猿姫は、その見慣れた顔を目にして、少し安心した。

先ほどまで、忍びの女である一子(かずこ)と対峙して、極度の緊張状態を強いられていたのだ。

絶対的な仲間の存在は、心強い。

「外は安全だ。行こう」

三郎にうなずき返しながら、一子はそれとなく他の二人にも目を配った。

正装をした、見た目のいい若い武士がいる。

神戸城の城主、神戸下総守利盛(かんべしもうさのかみとしもり)である。

彼は今猿姫たちがいる神戸城の主だが、神戸城は関家の軍勢に攻められて落城寸前である。

この状況にあって、神戸下総守は飄々とした顔つきでいる。

落城にあたり覚悟を決めた故の落ち着きぶりなのだろう、と猿姫は彼の表情を肯定的に受け止めるようにする。

そしてもう一人の男、蜂須賀阿波守(はちすかあわのかみ)。

猿姫、三郎、下総守よりもひと回り年かさの男である。

彼は美濃国戦国大名、斎藤氏の配下の武将だった。

木曽川の渡し場で、猿姫が斬り合いの末に倒して拉致してきた、人質だ。

この阿波守、祠に戻ってきた猿姫の顔を、油断なく観察している。

三郎、下総守とはその視線の鋭さが違う。

猿姫は、その阿波守からの視線を極力避けようと努めた。

「おい」

阿波守が、祠の中から横柄に声をかけてくる。

猿姫はその呼びかけを無視して、それぞれ祠から出る三郎と下総守の手を取って外に導いた。

「おい」

祠の中から、阿波守がまだ声をかけている。

猿姫は無視した。

若い男二人を竹薮の先に導く。

「おい、猿の女」

無視され続け、阿波守はいよいよ声を高めた。

「猿姫」

「何だ髭、さっきからおいおいうるさい」

猿姫はいらだちながら、阿波守の髭面に目をやる。

「私は今忙しいんだ」

「忙しい、じゃないだろう」

三郎と下総守をうながして先に進む猿姫の背後で、阿波守は祠から出てきた。

「お主、どうも様子がおかしいぞ」

猿姫は阿波守の方を振り返った。

「そんなことはない。何もなかった。外が無事かどうかは確認したんだ。行くぞ」

先の一子とのやり取りについては、後々、三郎には報告するつもりでいる。

だが、阿波守にわざわざ教えてやるつもりはなかった。

たとえ彼に対しての心証はましになっているとはいえ、彼は人質に違いないのだ。

つらかった一子とのやり取りを、生意気な人質の男になど語る義理はない。

「怪しいな」

となおも言いながら、阿波守は後から続く。

再び三郎と下総守の先に立って竹薮の中を歩きながら、猿姫は背中に阿波守の視線を感じている。

 

四人は、ようやく神戸城から脱出した。

神戸城の東方で南北に走る伊勢街道に出ている。

この街道を北に向かえば四日市の宿場、そして南に向かえば途中で猿姫たちが上陸した白子の宿場に着く。

さらに南へ向かえば、南伊勢に行き着く。

街道の脇でひと休みしながら、四人は今後のことを話し合った。

「三郎殿、どうする」

猿姫は、三郎の判断を仰ぐ。

神戸城は今頃、関家の軍勢に落とされてしまっただろう。

もともと猿姫たちは、神戸家に口を利いてもらい、そこから陸路を西に向かって堺まで行く手はずだった。

しかし、神戸城の西から、関家の軍勢が攻めてきたのである。

関家の本拠は亀山城で、そこには猿姫たちが神戸城の次に向かうはずの城下町があった。

神戸城の城主である下総守と共に神戸城の東に脱出してきた猿姫たち。

今後改めて西の亀山城に向かうのは、難しい。

何より、神戸城を経由することができない。

そこは城を落とした神戸勢が占拠しているからだ。

猿姫に見つめられて、三郎はたじろいだ。

「そ、そうですな」

思案の顔。

困っている。

もともと猿姫と話して、神戸城の神戸家を訪ね、その後の旅の安全を確保することで決まっていたのだ。

急に予定の変更を迫られることになって、彼の当惑は猿姫にも見てとれた。

神戸城から亀山城にかけての道をふさがれては、西に向かう道は限られてくる。

「どうすれば一番よいのでござろう」

三郎の目が、猿姫に助けを求める。

助け舟とまで行かずとも、何か考えの材料を提供しなければ。

猿姫はそう思った。

「神戸城から西には関勢が待ち構えている。さらに関勢の後ろには、六角家が控えているらしい」

忍びの女、一子からの情報だった。

北の近江国を本拠とする大大名、六角家が関家の後ろ盾になっているのだ。

「となると、堺に向かうには、遠回りをしないといけないようだな」

猿姫は、平静を保って言った。

できるだけ三郎の判断に任せたいので、余計な情報を与えたくなかった。

「遠回りでござるか」

と、三郎は思案する。

阿波守が傍らに立って、片手であご髭をいじりながら三郎を見ている。

「おい、うつけ」

「なんでござる」

応じる三郎。

「面倒だから、お主らいっそ、尾張に帰ってはどうか」

阿波守は提案した。

尾張国は、三郎と猿姫の故郷である。

しかし今は、三郎の弟であり彼と敵対する織田弾正忠信勝(おだだんじょうのじょうのぶかつ)が支配する土地である。

もし帰ったら、三郎も猿姫も弾正忠に捕らえられ、処刑されてしまうだろう。

以前に二人は、弾正忠配下の武士たちを自衛のために殺害している。

「何がいっそ、だ」

猿姫は阿波守をにらみつけた。

「適当なことを言うなよ」

「そう馬鹿にしたものでもない」

と、阿波守。

「織田家に恭順しろと言うのではない。逆だ。秘密裏に尾張に戻り、弾正忠を暗殺せよ」

阿波守は、声をひそめて言った。

猿姫は、呆れた。

目の前の髭面の男は、他人事だと思って適当を言っているのだ。

そんな簡単に暗殺がかなうのなら、とっくに猿姫たちもやっている。

だいたい、三郎は弾正忠の暗殺に失敗したので、猿姫と共に故郷を脱出してきたのだ。

「貴様、人質の境遇から逃れたい一心で、適当なことを言っているのだろう?」

猿姫は、憐れみを込めた目で阿波守を見つめた。

阿波守は、狼狽の気色を見せる。

「馬鹿な。そう見くびられては困る。俺は、真剣にお主らの今後を考えて言っているのだ」

「どうだか」

鼻を鳴らす猿姫。

猿姫の反応を見て、阿波守は自尊心を傷つけられたような顔をしている。

少し言い過ぎたかな、と猿姫は思った。

 

そんな三人の脇で。

慣れない徒歩での脱出行の後、息も荒く休んでいた神戸下総守である。

ようやく元気を取り戻した彼は、猿姫たちの方に向き直った。

「私に提案があるのだが」

三人は、下総守の方に向き直った。

三人共、下総守の去就について、無意識だった。

居城を攻め落とされた彼の身柄を、何とかしないといけなかったのだ。

「下総守殿。いったい何でござる」

三郎が応じた。

「貴殿ら、南に行く気はないか」

「南、でござるか」

「うむ」

下総守は鷹揚にうなずいた。

「私は以前から南伊勢の名家、北畠家によしみを通じておった。これから、北畠家のところに行ってしばらくやっかいになろうかという腹でいる」

なるほど、と猿姫は思った。

城を失った下総守。

こういうときに頼りになるのは、背後にいる大大名の存在なのだ。

関家の背後に六角家がいたのと同様、神戸家の背後には北畠家

頼もしいことだ。

「それは結構なことでござる」

下総守の言葉に、三郎はうなずいた。

「つまり、我々は貴殿を北畠家のもとまで送り届ければよろしいのでござるな」

「そうしていただけると有難い」

下総守、三郎の物分りの良さに安心したようだった。

猿姫は、眉をひそめる。

北畠家がいるのは南のどの辺りかわからないが、すぐ近くということはないだろう。

南伊勢とひと口に言っても、広い。

その目的の場所まで下総守を連れて道中を行くのは、気苦労が多そうだ。

「貴殿らへの助力を約束したはずが、こんなことになって恥じ入っている」

下総守は、そう口にした。

神戸城で、三郎と猿姫は彼に対し、堺までの道中への助力を請うたのだ。

北畠家にまで届けてもらえれば、私から北畠中納言様へ口利きをいたそう」

猿姫の顔色を読んでか読まずか、下総守はそんなことを言った。

「北畠中納言様なら、貴殿らが堺へ行く手助けをしてくれるはず」

北畠中納言具教(きたばたけちゅうなごんとものり)。

南伊勢の大大名、北畠家の当主である。

北畠家南北朝時代、「鎮守府大将軍」として奥州の軍勢を率いて南朝方として活躍した武将、北畠顕家(きたばたけあきいえ)を生んだ公家の家柄である。

北畠顕家の弟にあたる北畠顕能(きたばたけあきよし)が南伊勢に土着し、以降、朝廷から伊勢国司職の任命を受けて勢力を誇っている。

北畠具教は、その北畠顕能の末裔にあたる人物だった。

押しも押されもせぬ名門である。

「わかった、わかったけれどそんな一度に教えられたって名前を覚えられない」

北畠家について解説役を買って出た三郎の解説に、猿姫はいっぱいいっぱいになって言った。

「これから北畠家を訪ねることになりそうなので、覚えてくだされ」

三郎は、目を光らせながら答えた。

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今日の即席麺この一杯。보글보글 부대찌개면(ポグルポグルプデチゲミョン、プデチゲ麺)

しばらく前に、「韓国ではプデチゲ味のラーメンが人気」と韓国の人に聞きまして。

私もそういうラーメンを食べてみたいな、とずっと思っていたのです。

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ようやく手に入りました。

農心から発売されている「보글보글 부대찌개면(ポグルポグルプデチゲミョン、プデチゲ麺)」であります。

「보글보글(ポグルポグル)」というのはネットで調べても意味がわからなくて…。

もうポグルポグルと訳す他ないです。

ともかく、プデチゲのラーメン製品なのであります。

プデチゲは「부대찌개(部隊チゲ)」と書きまして、韓国北部は京畿道の軍隊の街、議政府(ウィジョンプ)の名物料理なのですね。

そのプデチゲとは。

スライスチーズ、スパム(ソーセージ)、キムチ、ラーメン麺等を大鍋で煮込んで食べる、軍隊式料理なのであります。

今回のプデチゲ麺は、そのプデチゲを再現した一品なのですね。

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パッケージ裏はこうなってます。

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熱量545キロカロリー、たんぱく質10グラムでした。

結構カロリー高めですね。

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同じく農心の辛ラーメンのものに近い、太めのちぢれ麺ですね。

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別添えで「부대찌개건더기(プデチゲコンドギ、プデチゲ具)」と「사골부대찌개 스프(サゴルプデチゲスープ)」の小袋がついています。

「사골(サゴル)」というのは牛の足の部分の骨を指すようですな。

 

作り方は、鍋にお湯を500ミリリットル沸かし、麺と부대찌개건더기、사골부대찌개 스프を投入して4分30秒煮込むのです。

ところで、부대찌개건더기を鍋にあけて、びっくり。

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かやくのソーセージが期待していた以上にたっぷりでした。

さらに사골부대찌개 스프を加えて煮込む間にも、ソーセージの香りが立ち上ります。

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できました。

出来上がっても、ソーセージの香りが強いです。

太めのちぢれ麺。

スープは甘く、同時に辛さもしっかり強めで、なおかつこってりしています。

薄切りのソーセージ、これが前述の通りかなり多めに入っているのですね。

キムチ、ネギも入っています。

食後、体がしっかり温まりました。

甘辛こってりスープが、とても食べやすいですね。

ソーセージもたっぷりで、嬉しいです。

 

プデチゲ感がしっかり出てるプデチゲ麺、満足しました。

今後は農心の製品以外の、他社のプデチゲ系ラーメンも食べてみたいものです。

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